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小児科診療所 ~海の底の待合室~

小児科診療所

待合室吹抜

1・2階が診療所、3・4階が住居の併用住宅です。
診療所には吹抜をつくることと熱帯魚水槽を置くということから話しが始まり、設計が進むに連れて、熱帯魚やさん、アート作家さんと海の底をイメージしながらの内装コラボとなりました。
水槽は受付ロビーの前に設け、裏側キッズプレイコーナーからも眺められる配置としました。L型状に長手1.8m短手1.5mの大きさで多くのお魚が泳ぐことができ、待時間の退屈しのぎに一役買っています。水槽の上部にはエアコン、照明器具、下部には酸素ボンベや水道が隠れており、水やお魚の入れ替え、水槽のお掃除等が週に一度行われています。
待合室が吹抜になっており、海中を魚が泳ぐかのようにアクリルを魚形に切り抜いたものを吹抜上部から吊り下げています。魚形は診察室ゾーンの出入口扉にも描かれ、子供たちの目を楽しませています。内装は白砂と青い海を意識しながらのカラーリング、造り付けの椅子の背もたれは波形をモチーフにしました。キッズプレイコーナーには大きなウレタンのカメが頓挫し、子供たちとあそんでいます。
小児科診療所02_久保木

▲待合室脇のキッズプレイコーナー     ▲受付~待合室             ▲2階スタジオから吹抜方向の眺め

 

[家づくりニュース2015年5月号掲載]

本物でなくても?

建材産業の発展のおかげで建物は既製品、半既製品を組み合わせてプラモデルのように作れる時代です。
ユニットバス、キッチン、サッシ、設備器具等の機械的構造的製品は、システム化された品種体系や性能向上によって使わざるを得ない状況でしょう。
また、仕上げ材料には本物に見える疑似的製品があります。
主に塩ビや紙で出来ている仕上げ材、貼りものが多いのですが、最近はタイルでさえも表面が印刷されたものになってきました。
木に見える、石にみえる、アンティーク調加工されてるものもあり、その印刷技術の発達ぶりには驚くばかりです。
ちょっと見にはほとんど見分けがつきません。
大理石やフローリングだと思っていたらタイルだったというくらいです。

 

HowTo_久保木

人工芝と樹脂木材

設計者は本物にこだわりがあると思います。
また、出来る限りのものをデザインしたい。
かくいう私もその一人ですが、最近の既製品の質は素晴らしくなりました。
ただ、それらを取っ替え引っ替え使っただけでは味気ないものになってしまいますので、上手く使い分けたいものです。

 

ところでそんな中でも毛足の長い人工芝は、枯れ芝まで表現されていてこれまた本物そっくり。
水分も通してくれるものもあります。
大理石にしても芝にしても外部に使う場合、それ相応のお手入れをしてあげないと、草が生えたり枯れたり汚れたり手間がかかりますが、お世話好きでない方なら本物の代わりには十分なりそうです。
自然の成り行きの風情には耐えられませんが、ちょっとした雰囲気づくりにはかなり有効と思っております。

 

[家づくりニュース2014年8月号掲載]

感覚的住宅考

感覚的住宅考_01

階段で各室が繋がるスキップフロアの家

私が若い頃、住宅はボケてるくらいがいいんだよと大先生に言われたことがあるのですが、なかなか示唆に富んだ言葉です。はっきりしない、ボヤけている、と考えていましたが、真意は曖昧です。

和洋折衷の住宅のツクリは日本独特のスタイルですが、デザイン的にはボケてるボヤけていると言ってよいのでしょう。
また、微妙にずれてしまった納まり、木目、色等も、同様に感じるかもしれません。重厚な素材を使ったものは重苦しく感じ、テカテカツルツルした塗装は落ち着かず、アルミやガラスは軽く感じ、ボヤけた感じとは対極にあるように思います。

新宿区神楽坂にある熱海湯
富士山のペンキ絵
[ネット画像を転載]

オフィスビルには上記の対極にある素材が多く使われています。
仕事をする場には緊張感がある空間がよいのでしょう。
とはいうものの、オフィスの中にもリラックスできるための部屋をつくり、新しい発想をしましょうという会社もあるようです。
銭湯やら、テーマパークやらのコーナーを作ってリラックスしましょうというのはトボケている?ような気がしますが、そういうことも受け入れられる時代になったのでしょう。

バリアフリーに配慮することとなると床は平らな方が良いのでしょうが、段差のある床や階段という不安定な部分が視覚的に入ることにより、只々広い部屋や狭い空間をも豊かにする気がします。
均質な中にどこかズレた部分があったり、透けたり、抜けたり、重ねたり、という空間構成と共に、手作り感の持つ温かさがあることは住宅建築に必要な条件でしょう。

居間~食堂に段差がある家     玄関兼階段室         小住宅の玄関階段

「なーんかいいんだよねーこのうち」と言われる家をつくりたいと思いますが、なかなか難しいことです。

[家づくりニュース2013年8月号_掲載]

久保木 保弘 (» プロフィール)

《白い板張りの家》
昨春に完成した家は夏、秋を過ぎて庭木共々内部の木もようやく馴染んでくる頃でしょうか。
高さ2m40cmの建具は、暖房で反っているのではないかと按じています。

白い板張りの家

 住宅の内装の中でも板張りの壁天井は最も手間が掛る仕上げのひとつだと思います。天井に1枚1枚実(さね)のついた板を張る作業は大変ですが、出来上がった後の素晴らしさには替えられません。普通は杢目をそのまま惹きたてるクリアーなオイル拭取り等の仕上げにすることが多いのですが、この家では白い塗装をしました。顔料の入ったオイルステインを拭取ったアッシュの板は微妙に白と肌色と灰色が混ざり、独特の風合いとなりました。
 板張りには悩まされます。薄い突板を張った塗装済みの既製品の板は、精度がよくツルツルできれいなのですが張り上がってもあまり感慨がありません。無垢の板を加工し一枚づつ張ったものとは何かが違います。とは言いながらも予算や床暖房や傷を気にすると無垢の板張りはなかなか実現できません。また杉や桧のような和材を張るとどうしても和風に見えてきます。節のある板となると嫌だという方も多いようにも思います。安っぽく見えてしまうのだと思います。この家では当初杉板を張る予定だったのですが、出来るだけ洋風にみせるためアッシュ材に変更しました。
 マンションや住宅メーカーの標準的な家に使われる木製品はみなフェイクなものばかりになってしまいました。印刷技術の進歩で杢目の印刷シート貼りの建具や、額縁、家具等は本物の木と見分けがつかないほどです。予算の関係で仕方がない場合以外には受け入れがたいものです。大量生産でできた偽物に囲まれる生活と活きた木に囲まれる生活では何かが違うだろうと思っています。
 さて、この春から家づくりの会に参加することになりました。大震災を経て建築の設計は耐震、節電、省エネについてより高度な性能を考えざるを得ない状況になってしまいました。会の中で研鑚していきたく、今後ともよろしくお願いいたします。

photo:白い板張りの家
玄関前軒天の白い板張り。

photo:白い板張りの家
LDKの天井板張り。

photo:白い板張りの家
階段の壁にも白い板張り。

1 階 : 33.18 坪        家族構成 : 大人 2人
2 階 : 26.70 坪               (将来子供を想定)
延べ : 59.88 坪