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古家をリノベーションした「CafeHouse」

「カフェリビング」:かつてあった床柱と棚を残しながら、窓辺に腰掛けられるベンチやキッチンと対面するカウンターなどをつくり、人が集い、くつろげる空間をつくりました。


「二階の部屋」:壁と天井を緩やかな円弧状につなげることで、柔らかく包まれるような居心地を求めました。

自宅の一角を使って小さな事業を始める、そんな生き方を実践する人が増えてきているように私は感じています。
この家も「街に開かれたスペース」のある京町家のリノベーションです。

 

「カフェハウス」と名前がついていますが、使い方はなんでもいいのです。自宅でお店を開きたい、アトリエで製作活動をしたい、仕事の打ち合わせもできるオフィスを自宅に持ちたいといった、家で仕事をするライフスタイルにふさわしい家です。
不意の来客でもプライベート空間を気にせず接客ができたり、友達と時間を気にせずゆったりお酒を飲んだり、そんな使い方のできる空間を「カフェリビング」と名づけました。

 

近代の産業化社会になって、職業の専門分化がすすみ、生業が家の外にどんどん出て行ってしまいました。と同時にかつては当たり前のように住まいのなかにものごとが失われ、失ってみて初めてその大切さに気づく、といったことを私たちは繰り返しているようにも感じます。
その大切なことの一つが人と人とが出会い、対話し、そこで人の心に変化が生じることだと思います。

 

建築DATA

敷地面積  : 54.79㎡(16.57坪)
建築面積  : 46.30㎡(14.00坪)
延べ床面積 : 63.27㎡(19.13坪)
構   造 : 木造2階建て
用   途 : 店舗併用住宅

[家づくりニュース2015年10月号掲載]

5月24日│「溝の口の家」完成見学会のご案内

「溝の口の家」室内01_安井

 

神奈川県川崎市にて歩んできました「古いものを活かした家づくり」がこのたび竣工を迎えます。
お施主様のご厚意によりオープンハウスを行うこととなりましたのでご案内申し上げます。

 

古材や古建具やビンテージ照明などを探し歩き、
個々ばらばらに存在していた「古いもの」たちが
一人の建主の目と身体感覚によって集結する。
そのプロセスをともに歩みながら建築家は一体何をしてきたのか?

 

新築住宅でありながら、古いものを随所に織り込んだ真壁造の木の空間は
私たち日本人のルーツへの訴求力を刺激してくれることでしょう。

 

実際に脚を運んでいただき、ご覧になっていただけたら幸いです。

 

「溝の口の家」階段_安井 「溝の口の家」2階廊下_安井

■ 開 催 日 : 2014年5月24日(土)  11:00 ~ 18:00
■ 場   所 : 神奈川県川崎市
■ 交   通 : 東急田園都市線・大井町線「溝の口」駅より徒歩10分
         JR南武線「武蔵溝ノ口」駅より徒歩10分
■ 設計・監理 : 安井 正/クラフトサイエンス
■ 施   工 : (株)滝新

京都・大原の家

京都・大原の家-外観_安井

外観は古い木造校舎のイメージ。


京都・大原の家-室内①_安井

リビングダイニングには一本の丸太の梁が。大工さんの手仕事が生きています。

京都大原といえば三千院が有名ですが、この家は三千院のお膝元、同じ町内に建つ家です。
大原は、小高い山に囲まれ、田畑が広がり、落ち着きのある里山の風景が広がっています。
周囲にある建物は、戦前から建っていた古い建物も多く、今回新築する家がそんな心地よい風景のなかに違和感なく溶け込むようにしたいと思いました。

 

屋根には瓦をのせ、外壁は杉板の下見板貼りで、自然塗料で濃茶に着色しました。
「古い木造校舎の小学校のようなイメージ」という建て主さんの言葉もヒントになりました。

 

玄関に入ると、正面には階段が、右には洗面カウンターと向かいの山の見える大きな窓、左には天井の高いLDKへの入り口。
ここは「多目的玄関ホール」とでもいいましょうか、普通なら90センチくらいの廊下になるところを倍の180センチにしてゆとりをもたせ、歯みがきしたり、本を読んだり、子供が走り回って遊んだり、いろいろな暮らしのシーンが想起されます。

 

いろいろな方向に窓があり、昼の木漏れ日、夕日のオレンジ色、風で揺れる木々のざわめきなど、私たちが自然とともにあることを日々感じさせてくれることでしょう。

 

京都・大原の家-室内③_安井

多目的、無目的?な玄関ホール、読書、歯みがき、何をする?

リビングダイニングには、もとの曲がりを生かした太い丸太の梁が一本。
2階の壁や屋根をがっしりと支えてくれています。この部分は大工さんが現場で手加工して組み込んでいます。

 

自動化された生産ラインで刻まれるのがあたりまえになった現代の木造住宅ですが、人の手によって一つひとつのものが生み出されていく感覚を暮らしの場のなかに残して行きたいと私は思っています。

 

京都・大原の家-室内②_安井

大原の自然と、里山の風景を暮らしに取り込む窓。

建築DATA

1階床面積 : 18坪           〈家族構成〉
2階床面積 : 16坪            夫婦+子供一人
延べ床面積 : 34坪     
構   造 : 木造2階建て

[家づくりニュース2014年3月号掲載]

時を重ねる家3@杉並区

時を重ねる家3@杉並区_安井 正東京の住宅地とは思えない花鳥風月を身近に感じるLDK。

 建て主のNさんは、住み慣れた杉並区で土地を探し、「隣が幼稚園の園庭」という土地と出会いました。歴史のある幼稚園ゆえ、園庭には桜やモミジが豊かに枝を伸ばしています。
 普段から私は、周辺環境の緑、四季の変化、花鳥風月といった自然の営みを身近に感じながら暮らせる家をつくりたいと思っていますが、この土地では素直にその思いを生かすことができました。キッチンの窓からは桜の気が手に取るように見え、リビングはもちろん、その延長で一体的に使える広々したデッキテラスも、正面に園庭の緑を望みます。
 共働きで子育て中のご夫婦ゆえ、洗濯、物干しといった家事動線をスムーズにするために、じっくりと話し合いを重ねプランを検討しました。洗面所に面した物干しテラス、畳室に隣接した納戸には家族の衣類が集結して収納されるなど、回遊動線でストレスなく体が動かせる工夫が織り込まれています。
 素材にもこだわりました。漆喰の壁、実家の裏山で育っていた杉の木を伐採して柱や壁に使いました。また、古いものがお好きな建て主さんゆえ、古建具や古材をデザインに取り入れて、新しい家なんだけれども、どこか懐かしさのあるほっこりした居心地の家ができました。

時を重ねる家3@杉並区_安井 正古建具を組み込んだ玄関。漆喰や焼杉の壁と相俟って、古さと新しさの混在した景色が生まれました。

1 階 :25.04 坪     〈家族構成〉
2 階 :21.69 坪      大人 2人
延べ :46.73 坪      子供 2人

安井 正 (» プロフィール)

「手づくりの質感」を大切にした、
どこか懐かしさを感じる、
住む人が自分らしく居られる場所を。

《2×4のリノベーション》
2×4(ツーバイフォー)の中古住宅をリノベーション。
以前は一階にLDKがあったものを二階リビングに変更。
緑を身近に感じる大きなデッキテラスとともに日当たりのいい開放感のある生活空間ができました。

「クラフトサイエンスの日記」
建築家・安井正の仕事と暮らしをブログで綴っています。

時を重ねる家

 埼玉県の桶川市に建つこの家に、私は「時を重ねる家」という名前をつけました。
 なぜ「時を重ねる」なのか、あらためて考えてみました。「新しいことはいいことだ」という価値観が、20世紀は支配的でした。戦後復興や高度成長期の日本だったら、新しい家電や科学技術の進歩が、私たちの暮らしや生活を変える力がありました。その恩恵にあずかって、私たちは戦前や明治の時代には考えられなかったような便利さ、快適さを手に入れてきました。
 しかし、いまだにその延長線上でつくられている物たち(住宅も含めて)は、これからの時代を生き抜こうとしている私たちを本当に支えてくれるのでしょうか。
「新しいけれども、すぐ古くなって使い物にならない。」
「確かにまだまだ使えるけれども、特に愛着もないし、どことなく古びてみすぼらしいので捨ててしまおう。」
「安かったんだから仕方がない……。」
大量生産大量消費の社会では、こういった物との付き合い方も、経済を活性化させる原動力になったのかもしれません。でも、少子高齢化が進み、廃棄物処理の問題が顕在化し、自然と調和した文明のあり方が望まれる時代にあっては、もうそんなやり方は通用しないのは明らかです。
 2050年に日本の人口と年齢構成がどうなっているかを予測したデータが、国の研究機関によって発表されています。いまから約40年後、生きていれば私も80 歳を超えています。いったいどんな世の中になっているのでしょうか。
 全人口は2050年には9500万人。2005年の1億3000万人にたいして、実に25%減になると推計されています。65歳以上の人口は、2005年は20%だったのが2050年には40%にもなるそうです。さらに80歳以上の人口も2005年はわずか5%なのが2050年には17%にまで上昇。今までの65歳定年制では、国民の三人に一人が引退組。それでは若い世代だけではとうてい喰わせられない。だったら定年年齢をもっと上げて75歳くらいまでは元気で働いてもらわないと日本経済はまわっていきません。歳をとったらお役目御免ではなくって、70を超えても元気で仕事を楽しんで続けられるような社会、古いものが活かされるような文化や環境をつくっていく必要があります。
 「生命は動的平衡にある流れである」といったのは生物学者の福岡伸一ですが、住まいや都市といった、人が暮らす環境も、居心地のよい生きいきとしたものにしていくには、新しいものと古いものとが重なり合って、常に人の手が加わり、動的平衡として流れている状態こそがイメージされるべきなのではないでしょうか。
 20世紀の近代建築の理論は「新しさ」のみに目を向け「古いもの」を根こそぎに切り捨ててきてしまったことに限界の一端があると私は思います。「時を重ねる」というコンセプトを、さらに掘り下げながらこれからも家づくりを続けていきたいと思います。

時を重ねる家
リビングダイニングの上は吹抜けになっていて、高いところに細長い窓がある。
この窓から入る光が、季節や時間帯によってさまざまな表情を、壁や床に映しだし、時の流れを感じさせてくれます。

時を重ねる家玄関扉の両脇は古材で、厚さ5センチの桧の無垢板です。経年変化の風合が活かされています。古いものと新しいものとが調和したデザインを目指しています。