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ちょっと福岡まで

福岡/椎木講堂ガレリア_宮野

九州大学伊都キャンパス内の椎木講堂ガレリア。内藤廣設計で2014年に完成。


博多/櫛田神社_宮野

博多の氏神・総鎮守として信仰を集めている櫛田神社。

3月末に福岡まで足をのばしました。
博多では天候にも恵まれ、満開の桜と共に、この時期の日本は本当に美しいと感じられ、気持ちも晴れやかになりました。

 

市の中心にある櫛田神社は、古くから博多の氏神・総鎮守として信仰を集めている神社で、この日も満開の桜のもと多くの人で賑わっていました。

 

その後、九州大学の大規模なキャンパス移転の様子や椎木講堂を見学。
椎木講堂は直径100mの円形の中に、円形劇場タイプのホールと管理棟が配されたもので、オープンスペースとしての巨大なガレリアが印象的な建築でした。

福岡/九州大学伊都キャンパス_宮野

九州大学伊都キャンパスは大規模な移転計画の中心地。近未来的な風景が広がっています。

福岡/椎木講堂外観_宮野

椎木講堂外観。直径100mの円形プランに最大3,000人収容のホールと管理棟が配されている。

あくまでも補助的な空間としてのガレリアが、様々な場面で学生や市民の憩いの場所として利用されているとのことです。
さすがのスケールに圧倒されました。

 

福岡/ネクサスワールド_宮野

ネクサスワールドのスティーブン・ホール棟エントランス。

ネクサスワールドでは世界の著名な建築家による集合住宅群を見学。
特に、スティーヴン・ホールの集合住宅では共用空間を案内して頂き、改めてその動線計画と空間構成、あちこちに散りばめられた仕掛けの素晴らしさに感動しました。
また、手すりや庇、エントランスホールの建具など、ディテールへのこだわりもそれぞれに特徴のあるものでした。

 

今回は思いもかけず、博多で気持ちの良い春を満喫することができました。
そして、日常から離れた旅は、いつも心を高揚させてくれるものですね。

 

[家づくりニュース2015年7月号掲載]

5月16日|家づくりカフェ @ 市ヶ谷ギャラリー

「私らしい暮らし方」_0516cafe_宮野

家づくりカフェテーマ

「私らしい暮らし方」
~希望・条件・選択~

自分や家族が望む、自分たちらしい暮らし方。
そのベースとなり、様々な出来事や時間を過ごす場所が「家」です。

 

暮らし方は、時間を経て様々に変わっていきます。
しかし、自分たちが好む暮らし方の基本というものは、大きくは変わらないと思います。
生活のリズムやスタイル、趣味趣向、精神的にも身体的にも落ち着くと感じる場所や、楽しいと思う場所。
そのようなオリジナルの暮らし方を皆さんはお持ちです。

 

生活を快適に楽しく過ごせるような家づくりとは?
そして、その過程には様々な希望と条件が発生します。
そういうものを、どのように考えて選択していくのか?

 

ゆっくりと気楽な気分で、実例を交えて皆さんとお話が出来るような場にしたいと思っています。
お気軽にご参加ください。

 

   《話題のエッセンス》
     ■ 住む場所とその環境を生かす
     ■ 暮らしのあれこれ
     ■ 家づくり相談

 

家づくりカフェ@家づくりギャラリー OPEN!
土曜日の午後のひととき美味しいスィーツでお茶をしながら、建築家と家づくりについて深く楽しく学んでみませんか?
いざ家を建てようと思い立っても、巷にはいろんな情報が溢れ何が良いのか迷ってしまいませんか。
カフェでは、建築家が毎回テーマを設け、家づくりについて建て主さんと雑談形式で考えていきます。
建築家と気軽に話せる場であり、おなじ目的を持った建て主さんどうしの情報交換の場でもあります。
“家づくりカフェ”はこれから家を建てようとする人のための少人数制連続プログラムです。
1回だけでも、いつからでも参加OKです。是非ご参加ください。

■店 主 : 宮野 人至 /宮野人至建築設計事務所
■日 時 : 22015年5月16日(土) 14:00~16:00
■会 場 : 家づくりの会ギャラリー
      東京都千代田区三番町20-2 三番町パークライフ104号
      >>null   
■参加費 : 500円/お一人様(お茶とお菓子付き)
■定 員 : 10名様(要予約・先着順)
■申込先 : NPO法人家づくりの会

キッチン収納

キッチン収納_宮野限られたスペースを多くの材料や調味料、食器などが目まぐるしく行きかい、新旧入り混じった家電類が幅を利かせるキッチンは、空間のデザインとともに、出来るだけ機能的であることが求められます。
また、住み手によって、お持ちになっている食器や家電類は量や種類も様々です。
食品庫やゴミ置き場などと共に、キッチン廻りではより機能的で多様な収納構成が必要となります。 
このような場合、暮らしに合わせて収納を設計すると良いでしょう。
そして大事なのは、新しい暮らしで本当に必要なものと、そうでないものを住み手にしっかりと考えてもらうことです。
食器や家電類は、新たに購入するものがあれば、その機器の大きさや必要な設備を確認することが重要です。
食器も普段使いのものから、特別な時に使うものとでは、収納の場所や仕方が変わります。
その中でも家電の収納は特に難しく、炊飯器などで普段は収納し、ご飯を炊くときには外に出して使いたい場合は、コンセントの位置や蒸気の湿気処理などについて詳細な検討が必要です。
このように、キッチン収納を検討するときには、多くのファクターについて考えていかなければなりません。
住み手と設計者は綿密に意思疎通を行い、持ち込む食器や使用する家電類のサイズや種類のリストをまとめ、個別の生活スタイルをもとに設計を行うことが重要なのです。
設計者は住み手のことをよく知り、自身も生活に密着していなければいけないのです。

 

[家づくりニュース2014年12月号掲載]

慈光院

慈光院/一之門への参道_宮野

うっそうと茂った木立と切り立った土手に囲まれた石畳みの参道


慈光院/書院を望む_宮野

入母屋造茅葺屋根に桟瓦の庇がめぐる農家風の書院。

今回は、私の好きな場所を一つ紹介します。
奈良県大和郡山市にある慈光院です。
慈光院は1663年に石州流茶道の祖・片桐石見守貞昌(石州)が父・貞隆の菩提寺として建立しました。
また、「わびの寺」とも言われ、石州の禅と茶が総合された禅寺で、茶室・庭園は「わび」の精神を表し、書院と茶室は国の重要文化財に指定されています。
庭園は国の名勝・史跡に指定され、花の寺としても有名です。
奈良盆地の眺望が素晴らしいことでも知られていて、境内全体を一つの茶席としてとらえてつくられているのも特徴です。

 

慈光院/茨木城楼門_宮野

茨木門をくぐったときに広がる明るい雰囲気への変化が劇的。

下を通る道路から脇にそれて、一之門まで上っていく坂道が慈光院の表参道で、この坂道を上るだけで外の世界とは気分ががらっと変わります。
一之門から茨木門に続くこの石畳は、うっそうと茂った木立と切り立った土手、さらに道を折れ曲がらせていることによって、足を踏み入れた途端に山の中に入り込んだような気分にさせてくれます。
この狭く暗い参道から、次の茨木門をくぐったときに広がる明るい雰囲気への変化が劇的で、ここに石州のおもてなしの心を感じることができます。

 

慈光院/書院_宮野

天井や鴨居の高さが低く、落ち着きのある意匠の書院。

農家風の外観の書院には、入母屋造茅葺屋根に桟瓦の庇がめぐっています。
構成している部材は全体的に細く、簡素で軽やかな意匠が目に留まります。
また、天井や鴨居の高さを低くしており、座ったときに安らぎや落ち着きが出るよう考えられているそうです。
慈光院/庭園からの風景_宮野

庭園の大刈込とその向こうに広がる奈良盆地の風景。

庭園には白砂の中にツツジなどの大刈込があり、その向こうには奈良盆地が広がります。
さつき一種類の丸い刈り込みと数十種類の木々の寄せ植えによる刈り込みを用い、敷地内だけではなく、周囲の風景・景観と調和するように構成されています。
禅寺の庭園にしては石をあまり使わず、様々な種類の木々で作庭しているのも、茶席の庭として季節ごとの風情を楽しめるようにしたものということです。

 

切り取られた庭園と奈良の町並みはとても美しい絵画のようで、夏の暑い午後、書院にたたずみ、のんびりと眺めているだけで、心はとても安らぎます。
印象深く、心に深く刻まれた場所と時間でした。

 

[家づくりニュース2014年10月号掲載]

玄関・玄関ポーチ

玄関・玄関ポーチ家を考えるとき、内部と外部の境界である玄関廻りにはちょっとした「場所」がほしいと思っています。
私の家では旗竿状の敷地ゆえに、自然とアプローチによる引き込みが生まれ、ここが落ち着きと気持ちの転換に一役買っています。

 

都市部では敷地に余裕がなく、道路からすぐに玄関という場合も多いです。
しかし、それでは気持ちの切り替えや準備がうまくいかなかったり、落ち着かないこともあります。
いわゆるポーチには、雨の日には傘を差したり、ちょっと荷物を置いたり、近所の人との世間話にと、日常生活を豊かにしてくれる要素がたくさんあります。
こうして、ポーチはただ便利で機能的なだけでなく、気持ちの切り替えに大きな影響を与えるものだと思うのです。
ポーチには、庇を出したり、玄関ドアごと奥まったもの、玄関廻りをピロティ空間とするものなど多くのパターンがあります。
そして、このような工夫が外観に豊かな表情をつくり出すことにもつながります。
ポーチに限らず、大きな仕掛けではなくても、ほんの少しの領域を設定したりすることで、私たちの暮らしは大きく変わるのです。

 

このように、私たちの家には、内(家族)と外(社会)とで気持ちを切り替える何かが必要だと思うのです。

 

また、私たちは外出する時、玄関で靴を履きながら無意識に気持ちの切り替えをしています。
靴を脱ぐと少し安らいだ気持ちになる方も多いと思います。
ここでも、ポーチと同様に玄関で行う行為が、気持ちの切り替えに大きな影響を与えるのです。

 

私たちは普段の暮らしの中で無意識に行っている行為や目に見えない領域によって、気を引き締めたり安らぎを感じたりしています。
そこで大きな役割を果たす玄関やポーチをいかにつくるかは、私たちが生活する上でとても重要な要素となるのです。

 

[家づくりニュース2014年2月号掲載]

49年前と7年後

国立近現代建築資料館_展示室

真新しい資料室は、中央の展示台を取り囲むようにガラスケースが設けられている。

少し前ですが、湯島にある「国立近現代建築資料館」へ行ってきました。
こちらは今年開館した文化庁の施設で、旧岩崎邸庭園の隣にあるといえばお分かりの方も多いのではないでしょうか。
この施設は、世界の文化芸術の重要な一翼を担う存在となっている日本の近現代建築について、その学術的、歴史的、芸術的価値を次世代に継承するためにつくられたそうです。
貴重な図面や模型について、劣化、散逸、海外への流出等を防ぐことを目的として、各機関との連携のもと、国が責任を持って収集、保管を行うということです。

さて、その開館記念特別展示として、「建築資料にみる東京オリンピック」が行われ、早速見学に行ってきました。

国立代々木競技場_模型

初期につくられた国立代々木競技場の模型。
周辺施設や吊り屋根構造について、計画が明確にわかる貴重な資料である。

1964年に開催された東京オリンピックは、1970年の大阪万博と共に戦後日本の復興を象徴する大イベントでした。
高度経済成長という未来への確かな希望のもとに、国全体が大きなうねりの中にいた時代です。
この時つくられた丹下健三設計の国立代々木競技場は、当時の技術の粋を尽くして建設され、吊り屋根構造を用いた伝統と近代が融合した新たな建築を示しました。
新国立競技場_計画案模型

女性建築家のザハ・ハディドによる新国立競技場の計画案模型。
ボリュームも大きく、独特なフォルムは、周辺環境との関係や膨大な建設費などと共に話題をよんでいる。

また現在、二度目のオリンピック招致の目玉として、新国立競技場建設の国際コンペが行われ、女性建築家のザハ・ハディドによる近未来的な流線型フォルムの案が採用されました。
これら新旧二つの国家的プロジェクトが当時の詳細な図面や模型と共に紹介されていて、建築の持つ大きな力と希望が感じられる、とても見ごたえある展示となっていました。
折しも先日、2020年の東京オリンピック開催が決定しました。
開催については当然のように賛否両論があります。
しかし、超高齢化社会への備え、経済状況の動向、原発の問題や被災地復興などたくさんの問題を抱えながらも、社会全体が7年後を一つのメルクマールとして進んでいくのは確かのように思います。
当時とは違う、量より質という成熟した社会の中で、私たちはこれまでにない新たな変革を経験していくことになるのでしょうか。

[家づくりニュース2013年12月号_掲載]

光と翳

光と翳私たちは日々の暮らしの中で、当たり前のように、意識的にもそうでなくても多くのものに身をゆだねています。
そのような生活の中、明るさという点においても技術の発達やモノの大量生産、流通の高度化などにより与えられたものをただ単に受け入れるような生活が展開されているように感じます。
今の家は明るすぎる・・・なんでもかんでも明るくするようにされているように感じませんか?
それはその場所に適した明るさ・暗さなのでしょうか?

ここで、有名な「陰翳礼讃」(谷崎潤一郎)が胸をよぎります。
この中で、近代的照明設備が無かった時代の文化が、照明の変化によってその感じ方を変えてしまった例をいくつか取り上げています。
ほのかな蝋燭の明かり、その繊細な明かりを取り込む障子、有明行燈の変幻自在の灯り、食器や食べ物、紙や化粧、芸能など、暮らしの中には実に多くの日本的美意識があったことを謳っています。
日本人は元来、「翳」や「ほの暗さ」というように、光と同時に闇との調和も重視していました。
あいまいさや間、奥ゆかしさ、静けさ、というような感覚が、私たちの日々の暮らしに溶け込んでいたのです。

しかし、私たちはこれらの感覚を失ったわけではありません。
家でくつろぐとき、灯りを少し落としてみるだけでも、私たちは何とも言えない落ち着きを感じます。
レストランでの食事でほのかな明るさの中、お互いに顔を見合わせるとき。
お風呂の照明を消して月明りでの入浴。
田舎のおばあちゃんの家での夜など。
それはきっと多くの人が持っている感覚では。
こうした暮らしをもう一度見つめなおし、本当に安らげる家をつくることが大事だと思います。

[家づくりニュース2013年7月号_掲載]

宮野 人至 (» プロフィール)

 

「お帰り」 と 「ただいま」

やさしい気持ちで、美しく暮らせる家を。

《鶴瀬T邸改修工事》
10年前に設計した住宅ですが、時を経て、家族の暮らし方も変わりました。
そこで今回は、子供部屋の設置と家事室の改修を行いました。
竣工時に植えたエントランス脇の小さかったオリーブの木が2階のベランダまで届き、今では家族を見守る木へと成長していました。

ときわ台の家

 築35年の古い家の改修をおこないました。敷地は旗竿状で玄関までの長いアプローチには様々な木や花が植えられています。通路であり小さな庭でもあるその場所は、この家を大きく特徴づけるものといえます。その土地で育ってきた貴重な木や花を活かしながら、新しく住む人がそこに少しずつ手を入れていく……それが新しい家族の形としてそこに景色をつくっていくのです。
 改修においては現状を調査することから始まります。その中で建て主さんの望まれる空間について検討しながら、改修が必要なところを把握していくという作業が重要となります。改修においては、すべてを新しくすることが最良とはいえません。住まい手の家族構成やこれからそこにどのくらい暮らすのかなどの将来像、そして当然予算も総合的に考えなくてはいけません。そうして現状で活かせるものは最大限に利用し、そこに少しずつ新しいものを取り入れていくという作業が始まるのです。
 今回の大きなポイントは、居間として使われていた和室とそれに続く台所の改修でした。床は下地も含めて傷んでいたため、下地を直した上でフローリングを貼りました。家族の中心となるリビング・ダイニング・キッチンを一室の空間とし、新しい住まい手の生活スタイルにあった空間へと生まれ変わりました。設備機器も老朽化が進んでいましたので、キッチンや洗面、トイレなどは新しくしました。その他構造的な検討から一部壁の補強、コンセントなどの増設や電気容量の見直し、給湯器の交換などのインフラの整備をおこないました。
 このように現場の状況を見つめながら、工程が進む中で見つかる問題に対処し、これから住まわれる家族のための新しい「場所」をつくっていくということは、とても刺激的で幸せなことでした。

ときわ台の家
新しくなったリビング。以前から使われていた障子はそのまま残している。
壁は珪藻土(壁塗りは、建て主さん自らも参加。)

ときわ台の家
旗竿状の敷地の通路部分には様々な植栽が育っている。今あるこれらのものを活かし、少しずつ手を入れていくことになりそう。