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慈光院

慈光院/一之門への参道_宮野

うっそうと茂った木立と切り立った土手に囲まれた石畳みの参道


慈光院/書院を望む_宮野

入母屋造茅葺屋根に桟瓦の庇がめぐる農家風の書院。

今回は、私の好きな場所を一つ紹介します。
奈良県大和郡山市にある慈光院です。
慈光院は1663年に石州流茶道の祖・片桐石見守貞昌(石州)が父・貞隆の菩提寺として建立しました。
また、「わびの寺」とも言われ、石州の禅と茶が総合された禅寺で、茶室・庭園は「わび」の精神を表し、書院と茶室は国の重要文化財に指定されています。
庭園は国の名勝・史跡に指定され、花の寺としても有名です。
奈良盆地の眺望が素晴らしいことでも知られていて、境内全体を一つの茶席としてとらえてつくられているのも特徴です。

 

慈光院/茨木城楼門_宮野

茨木門をくぐったときに広がる明るい雰囲気への変化が劇的。

下を通る道路から脇にそれて、一之門まで上っていく坂道が慈光院の表参道で、この坂道を上るだけで外の世界とは気分ががらっと変わります。
一之門から茨木門に続くこの石畳は、うっそうと茂った木立と切り立った土手、さらに道を折れ曲がらせていることによって、足を踏み入れた途端に山の中に入り込んだような気分にさせてくれます。
この狭く暗い参道から、次の茨木門をくぐったときに広がる明るい雰囲気への変化が劇的で、ここに石州のおもてなしの心を感じることができます。

 

慈光院/書院_宮野

天井や鴨居の高さが低く、落ち着きのある意匠の書院。

農家風の外観の書院には、入母屋造茅葺屋根に桟瓦の庇がめぐっています。
構成している部材は全体的に細く、簡素で軽やかな意匠が目に留まります。
また、天井や鴨居の高さを低くしており、座ったときに安らぎや落ち着きが出るよう考えられているそうです。
慈光院/庭園からの風景_宮野

庭園の大刈込とその向こうに広がる奈良盆地の風景。

庭園には白砂の中にツツジなどの大刈込があり、その向こうには奈良盆地が広がります。
さつき一種類の丸い刈り込みと数十種類の木々の寄せ植えによる刈り込みを用い、敷地内だけではなく、周囲の風景・景観と調和するように構成されています。
禅寺の庭園にしては石をあまり使わず、様々な種類の木々で作庭しているのも、茶席の庭として季節ごとの風情を楽しめるようにしたものということです。

 

切り取られた庭園と奈良の町並みはとても美しい絵画のようで、夏の暑い午後、書院にたたずみ、のんびりと眺めているだけで、心はとても安らぎます。
印象深く、心に深く刻まれた場所と時間でした。

 

[家づくりニュース2014年10月号掲載]