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バラガンの色に秘められていたもの
大学を出、設計事務所に勤務して、初めて迎えた正月、所員全員が招かれた原宿の所長宅で、酒席の後ネクタイの色・柄の選び方を伝授された。いわく「ネクタイの柄の中に一部でもよいからジャケットの色が使われているものを選ぶべし」。妻は「女性なら誰でも知っていることよ」とこともなげに云うけれど、思えば、建築設計での色決めの時に、この言葉はとても役立ってきた。

Los Clubes、1964。
バラガンの建築は全て撮影禁止であった。由一、街角で撮影出来たバラガン特有の噴水のある馬の為に用意されたプール。噴水の茶褐色、背後の壁のピンクの色は文中のサン・クリストバルの色そのものであるが、十分にあの時の感動を伝えきれないのが残念である。
(CASA BARRAGAN/斉藤裕著、TOTO出版発行より)
それは、強い光の下に広がるメキシコの緑豊かな大地・風土の中にちりばめられた色たちと、バラガンの壁に塗られた同色の色たちとが、先のネクタイとジャケットの関係に似て、いや、それよりもはるかに深淵かつ哲学的に呼応しているのに出会った瞬間であった。
[家づくりニュース2015年9月号掲載]
- 2015.09.08
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