【 3人家族 】

吉川の家 ~ 3本の足を持つ住宅 ~

写真:小川 重雄

吉川の家-外観_庄司

ライトアップされた斜め壁とスカルプチュアルな建築造形。
北西両方向に迫り上がるRC斜め壁からRCスラブ上に木造+ガルバリウム鋼板のフレームで覆われた2Fの構造ヴォリュームが跳ね出しています。


○ 大交差点に建つ
郊外に建つ若い夫婦のための住宅です。
吉川の家-室内_庄司

リビングの西(左)側の大開口部からは桜並木を臨むことができます。
床はウォルナットフローリング仕上げ、天井には露出型の空調機とダクトが見えます。

計画地は将来の歩道セットバック部分を除くと24坪ほどの狭小敷地で、幅員22mの市道と幅員11mの県道が交わる大きな交差点の南東角に位置しています。
西側市道の対岸には吉川市を5㎞近くにわたって南北に貫く桜の並木道が存在し、敷地からはその木々の緑を臨むことができます。
本計画では、圧倒的なスケールを持つ大規模交差点と対峙する、存在感のある造形を持つ建築を提案したいと考えました。

 

○ スカルプチュアルな造形
この住宅では、1F機能はエントランスとホールのみとし、その他のヴォリュームは建て主さんのご希望である3台分の駐車場確保のため外部に開放されたピロティー空間とした上で、この住宅における主な居住空間は全て2Fにプログラムしています。
斜めに迫り上がる象徴的な3本の足“RC傾斜壁”に支えられるフレーミングがこの住宅の建築造形を決定づける大きな要素となっています。
傾斜壁からは西側と北側へスラブを跳ね出させ、そのキャンティヴォリュームを木造の架構で包み込むことによって、必要な居室空間を確保するとともに、この住宅の建築造形を完結させています。
桜並木に向かって視覚的方向性を持つ大開口部によってその眺望を確保し、狭小住空間における開放感と快適性を実現させるとともに、混構造による象徴的なスカルプチュアルな造形を実現させました。

 

建築DATA

1階床面積 : 57.00㎡(17.24坪)          〈家族構成〉
2階床面積 : 54.83㎡(16.59坪)           夫婦+子供1人
延べ床面積 : 111.83㎡(33.83坪)     
構   造 : RC造地上2階建て

 

[家づくりニュース2015年11月号掲載]

DROP ON LEAF ~快適さを追求したコート型住宅~

DROP ON LEAF-外観_杉浦

道路側外観


DROP ON LEAF-雨落とし_杉浦

大雨時の雨落としの様子

土地の区画面積に比較的ゆとりのある、東京都郊外の住宅地に計画した住まいです。
敷地は傾斜する前面道路から1.6m~2.5mの高さにあります。
旧住まいは接道面では最も低い西寄りの位置より敷地にアプローチするように造成され、2m以上の高低差を屋根の無い屋外階段で上っていました。
しかし本設計ではその負担を軽減するために、高低差の少ない東側寄りの位置から建物へアプローチする計画としました。そして天候の優れないときでも雨に曝されずに住まいに入れるように深い庇を設けています。

 

全体計画としては、プライバシーが確保しやすく、小さなお子様が思いっきり遊んでも近隣に音が伝わりにくいコートハウス形状としました。
室内各所から庭全体を見守ることが可能です。

DROP ON LEAF-室内01_杉浦

平屋の離れ内観

この中庭の南側にあたる離れの書斎兼音楽室は平屋建てとして高さを抑え、冬場の採光により有効な屋根形状を検討しました。
母屋からはその平屋棟の屋根を眺めることができます。折角見える屋根ですので、それならば雨の雫まで楽しんでしまおうと発想が繋がり、外部には樋ではなく雨落としを設け、内部天井には葉脈のような小屋組をもつ離れとしました。
離れまでは中庭の地面の高さにまで下がって移動します。
屋外の地面により近づくことで、内部でありながらも半屋外の渡り廊下を歩くような気分を演出しました。このような床のレベル差や天井高の変化に、異なる開口部の位置による陰影が相まって、様々な居場所が与えられる住まいとなりました。

 

この建物の環境設備的な特徴としては、トップランナー基準レベルの断熱性能に、全館空調による冷暖房システムを導入し、更には太陽光パネルによるエネルギーを利用しています。

DROP ON LEAF-室内02_杉浦

リビングから平屋の離れへの動線や中庭を臨む

DROP ON LEAF-室内03_杉浦

構造梁の間やダクトスペースには照明が組み込まれている

全館空調はどの場所にいても温度差の少ない快適な温熱環境を保つシステムですが、全ての部屋や洗面所やトイレにまでも巡る大きなダクトは、空間をデザインするうえで意匠的には問題となるものです。マンションの梁型のように単に配管を覆うことは容易ですが、あまり美しいものではありません。ここでは配管経路を意識しない意匠を目指しました。

 

建築DATA

敷地面積:253.92㎡(76.81坪)              〈家族構成〉
建築面積: 98.11㎡(29.67坪)               40才代夫婦+女の子
延べ面積:212.76㎡(64.35坪)
構  造:木造2階建て(木造軸組工法/制震構造付加)

[家づくりニュース2015年9月号掲載]

井口の家 ~Uさん家の小さな図書館~

井口の家_村田

西の庭へはブリッジから。ベンチの上にはパーゴラを設えてあり、ブドウを絡ませます。


井口の家_村田

図書室から東の主庭を見ています。主木はモミジを選びました。

家族全員の本を一箇所にまとめ、みんなで読めるようにしたい。」
この家には、そんな要望から生まれた大きな本棚のある図書室があります。
本を読むという行為は極めて個人的な行為ですが、一箇所に本をまとめることで、家族間で共通の話題を生むきっかけとなります。分け隔てなく本を選べる環境をつくることで、本を仲立ちとして家族をつなぐ素晴らしい要望だと感じました。

 

この地域は建ぺい率が厳しく(40%)地上部の面積が限られるため、地下を作る必要がありました。2階はお向かいの緑を借景として楽しむリビングで、1階は個室と水まわり、地下は寝室。そして、読書にふさわしい環境と外とのつながりを求めて半地下を図書室にしています。
床面は地面から1.2mほど低いところにあり、天井の高さは3.8mほど。その大きな壁の一面が本棚です。半階下がることで、地面にもぐるような格好となり、適度に囲まれて落ち着いた雰囲気になっています。東西両側はウッドデッキのある庭で、読書の途中でふと上方に視線をむけると、風にそよぐ緑と空が見えるという具合です。庭へはブリッジから自由に行き来できます。


 

デッキの木漏れ日の中で風を感じながら、あるいはソファにゆったりと身をあずけて、時には階段に腰掛けながらなど、その時々の心地よい場所を選んで読書を楽しめるように考えました。

 

建築DATA

地階床面積 : 39.17㎡(11.85坪)           〈家族構成〉
1階床面積 : 50.18㎡(15.18坪)            夫婦+子供
2階床面積 : 52.76㎡(15.96坪)
延べ床面積 :142.18㎡(43.01坪)
構   造 : 木造・地上2階、地下1階建て

[家づくりニュース2015年9月号掲載]

うなぎの寝床

うなぎの寝床-外観_根來

プライバシーを保ちつつ、光や風を取り入れる工夫をした外観


品川区大井町で設計・監理した木造3階建ての住宅。
敷地の形状は間口4m、奥行き14.5m、所謂「うなぎの寝床」。
この敷地特性を上手く活かすため、内部は階段を挟んだスキップフロアで構成し、各フロアが緩やかに繋がり、奥行きのある空間となっております。
狭小住宅の場合、よく道路に面して玄関ドアが付いておりますが、子供の飛び出しや、玄関ドアを空けると中が丸見えになるのは、好ましい玄関構えとは言えません。
うなぎの寝床-室内_根來

ブレースを活用し、解放的な内部空間を実現しております

本住宅では、玄関ドアを奥の方の脇に設けております。
狭い敷地ながらも人の歩く距離を長くすることにより、路地の奥に惹き込まれるような、少しでも豊かなアプローチを造り出そうと考えました。
スキップフロアの空間は、視覚的にも楽しく、この階段を視覚的にも機能的にも如何に生活空間に馴染ませるかがポイントとなる訳ですが、デザイン的なことだけでなく、重力(温度差)換気のスペースとしても活用することが可能です。
夏場は暖気が上昇し、最上階に設けたハイサイドライトから抜けて、家全体が涼しい空間になります。
冬場は階段下に設けた蓄熱暖房機(深夜電力)の暖気が緩やかなに上昇し、家全体を暖めます。
最上階には天井扇が設けられ、天井に溜まった暖気が2階のリビングダイニングに落ちてくるようなサーキュレーションを計画しております。
スキップフロアの空間を開放的に繋ぐには、階段の設計は重要です。
階段を単なる移動空間として捉えるのではなく、吹抜けの一部として組み込み、横方向への広がりを生み、かつ彫刻的に、そんな階段を目指しました。
人の動きとともに、光の取り入れ方や風の流れをも設計したつもりです。

 

建築DATA

1階床面積 : 29.27㎡( 8.84坪)           〈家族構成〉
2階床面積 : 36.22㎡(10.93坪)            家族構成:夫婦+子供1人
3階床面積 : 27.39㎡( 8.27坪)
延べ床面積 : 92.88㎡(28.04坪)
構   造 : 木造3階建て

[家づくりニュース2015年7月号掲載]

吹上の家 ~県産木材の住宅~

吹上の家-室内_松澤

子供室。杉と漆喰の空間です。将来は二部屋に分割かな?


県産木材で家をつくりたい・・・から始まった家づくりです。

 

吹上の家-階段_松澤

いつもの中板が無垢板の階段。段板はケヤキ。
手摺は何でしょう?

先ずは土地探しからスタート。2物件目で気に入った土地が見つかり、さっそく計画が始まりました。
予算の関係もあり、長期優良住宅の地域型住宅ブランド化事業に応募し、採択されました。
多少のルールはありますが、ほぼいつもの木の家で要件はクリア出来ますが、構造計算が必要となり、手続きでの木材の伝票処理がネックです。いろいろクリアして、断熱性能と構造強度の高い家が完成しました。予算の関係で、当初予定していた「そよ風」と床暖房は断念せざるを得ませんでしたが、ほぼ建て主さんの希望は満たせたと思います。

 

吹上の家-外観_松澤

北西外観。まだ予算の都合で外構は手付かず。

お子さんは生まれたばかりで、これからが家族にとって大事な時期です。安全で快適な住まいで、楽しく親子で成長して行く事でしょう。
大きなテーマとしては、外部はメンテナンスフリーを目指し、内部は木と漆喰で開放的な空間を目指しています。都心部に比べると敷地は50坪と広いのですが、日照条件をかなり気にされたので、地盤も1階床高も上げています。その為、玄関へのアプローチの段差と階段の段数が増えています。
暮らし方にも当然、様々なこだわりがあり、計画には時間が掛かりました。あそこを変えると、こっちが駄目になり・・・と。どこかで妥協は必要ですが、先ずは我儘いっぱいで家づくりには臨んで下さい。
私たちが出来るだけ嫌な顔を見せずに解決して行きます。

 

建築DATA

1階床面積 : 58.66㎡ (17.75坪)           〈家族構成〉
2階床面積 : 50.40㎡ (15.25坪)            夫婦+子供1人
延べ床面積 : 109.06㎡ (33.00坪)     
構   造 : 木造2階建て

[家づくりニュース2015年5月号掲載]

稲毛の家

撮影 : 西川 公朗

稲毛の家_写真1_高野

玄関土間越しにタタミルームを見る。右手引戸が床下収納入口。


サッカー大好き少年と若いご夫婦の住まいです。

 

最初の設計をスタートしたのが今から8年前でした、いくつかのハードルを越えやっと実施設計が完了、これからという時に突然ご主人の転勤が決まり、しかも遠方のため家族皆で行く事に。
残念ながら計画は頓挫しました。

 

そしてその記憶も薄れかけた5年後に、ご家族が稲毛に戻ることが決定。
ある日突然なんの前触れも無く、設計の再依頼のメールをいただきプロジェクトが復活!!
ご家族の家づくりの夢は、転勤先での5年間の生活経験と子供の成長とともに、いろいろと変化していました。
僕としても自分の5年前の仕事からはじめるより、新たな気持ちでもう一度プランを出してみたいと考え、一度白紙に戻して0からの設計を試みました。

稲毛の家_写真2_高野

絞られた開口から、外の気配を取り込む。砂漆喰仕上げの壁・天井が優しい光と影をつくる。

 

 

5年間のブランクを経て実施案となった住まいは、一階に土間と和の庭とつながるタタミルームをつくり水回りやバスコートをまとめました。
半階上がってウッドデッキやバスコートとも視線がつながるLDKをつくり、更に半階上がったところに寝室とウォークインクロゼットと書斎を配して、さらに数段スキップしてキッチンの真上に子供部屋があります。
LDKの床下は、何でも入る全面大収納空間になっています。
室内のどこにいても家族が集まるLDKと気配がつながり、敷地内のささやかな緑を楽しむコンパクトながらも、柔らかな光に満たされた住まいになりました。

 

建築DATA

1階床面積 : 54.48㎡(16.48坪)           〈家族構成〉
2階床面積 : 40.21㎡(12.16坪)            夫婦+子供1人
延べ床面積 : 94.69㎡(28.65坪)     
構   造 : 木造2階建て

[家づくりニュース2014年12月号掲載]

鵠沼橘の家/段差のある住まい

撮影:新澤 一平

鵠沼橘の家/段差のある住まい-LDK_小野

LDK。右手はキッチン、左縦格子の奥はスタディースペースです。正面がバルコニーに続くコーナー窓です。


鵠沼橘の家/段差のある住まい-外観_小野

外観。T字路の前面道路は唯一、周囲が建て込んでも視線の抜けが確保できるため、格子バルコニーとコーナー窓を設けました。

はじめまして。6月から家づくりの会に加入しました小野です。
初回の寄稿ですので、ご挨拶と今春竣工した住宅の紹介をします。

 

設計事務所を開設して、今年で8年目になります。
以前は、福祉施設や集合住宅など、比較的大きな建築をつくる設計事務所に勤務していました。
建築中は現場に通いつめ、監督さんをはじめ職人さんなど複数の方と現場で打合せをしながら仕事をしていました。
そこで、建築は様々な人の協力の上につくられていることを実感しました。
独立した現在は、戸建て住宅を中心に、新築やリフォームにたずさわっています。
そこでも定期的に、現場で打合せするようにしています。
建て主さんや現場監督とともに現場で打合せすることは、建築過程の時間を共有でき、完成後もその臨場感は、はっきりと記憶に残ると思います。

 

写真の住宅は、間口が狭く、奥行きが深い敷地に建っています。

鵠沼橘の家/段差のある住まい-玄関_小野

玄関。正面はテラスに続く地窓、奥に寝室があります。

この敷地の奥行きの長さが生活動線に影響しないよう、玄関と階段を建物中央に配置しました。
その結果、廊下/階段から居室への室内動線が短くなりました。
玄関を入ると正面にテラスに続く地窓があります。階段室には、小物を飾るニッチがあり、壁面には絵が飾られ、家族のギャラリーになっています。
また1階正面のガレージ部分は、階高が低くできましたので、直上の2階LDKと他の部屋の間に、階段2段分の段差をつくりました。
この段差は、腰掛けになったり、視線をずらしたり・・・ワンルーム空間のアクセントになっています。
外観は、切り妻屋根で、木格子のバルコニーを正面の隅角部に設けました。
このバルコニーはたとえ将来、敷地周辺に建物が密集しても、外部の光や風を取り込める部分です。
屋根は深緑色の鋼板を葺き、周辺風景に溶け込むように配慮しています。
配色は、建て主さんと現場で打合せしながら決めました。
家づくりは、こうした打合せの積み重ねがとても重要と考えています。

 

建て主さんと設計者、施工者との共同作業を経て、長く住み継いで行ける住まいを一つでも多く手がけたいと考えています。

 

建築DATA

1階床面積 : 73.64㎡(22.23坪)※インナーガレージ含む      〈家族構成〉
2階床面積 : 69.91㎡(21.11坪)                  夫婦+子供1人
延べ床面積 : 143.55㎡(43.34坪)     
構   造 : 木造2階建て

[家づくりニュース2014年10月号掲載]

日野の家

撮影:篠澤 裕

日野の家-2階_荒木

2階吹抜けと奥様の活動コーナー。
智頭杉現しの柱に水平の棚板が取り付き、上り梁がリズミカルに架かる簡潔な内部空間となっている。


ご夫婦と母親の三人と二匹の猫のための住宅です。
敷地購入後、私どもに設計依頼をして下さいました。
細長い敷地で奥に低い崖があるので、長い間売れ残っていた土地だったようです。
敷地を初めて拝見した際にはとても恵まれている印象を受けました。
敷地内に李の木が生え、さらにその奥の敷地外の崖地には、様々の大きな樹木が生い茂っていたからです。

 

建物は木造2階建てにて計画しました。
コンクリートの縁石と板塀のアプローチを辿り、道路から少し奥まったところにある玄関引戸を開けると、土間とひとつながりの「椅子座」の板間の空間が広がり、その奥の「床座」の智頭杉の小上がりの板間の先に、庭の豊かな緑が目に飛び込んで来ます。

日野の家-階段_荒木

椅子座の板間と床座の智頭杉貼りの小上がりの先に庭の緑が見える1階。軽快な螺旋階段が上下階をつないでいる。

椅子座の板間には、ダイニングとキッチンがあり、道路側の平屋の居室(お母様の部屋)とも引戸で繋がっています。
中央付近にあるシンプルな構造の螺旋階段を上ると、上下の空間をつなぎ下階に自然光を届ける大きな吹抜けの周囲に、ご夫婦の寝室や

 

それぞれの活動空間が、あいまいに仕切られて配置されています。
2階のどの部屋からも南の庭とその先の樹木の緑が目に入ります。
それぞれに沢山の本をお持ちのご家族のために、1階全体と吹抜けでつながる2階の西側の壁面にとどまつのパネルにて固定の本棚を作りました。

 

この建物は、内部に智頭杉の柱・梁を「現し」にした力強い空間を持っていますが、この厚い板で作られた本棚も、柱や梁と一体となって、簡潔な内部空間を形成しています。

 

建築DATA

1階床面積 : 52.58㎡(15.91坪)            〈家族構成〉
2階床面積 : 37.75㎡(11.42坪)            夫婦+母親+猫2匹
延べ床面積 : 90.33㎡(27.32坪)     
構   造 : 木造2階建て

[家づくりニュース2014年6月号掲載]

京都・大原の家

京都・大原の家-外観_安井

外観は古い木造校舎のイメージ。


京都・大原の家-室内①_安井

リビングダイニングには一本の丸太の梁が。大工さんの手仕事が生きています。

京都大原といえば三千院が有名ですが、この家は三千院のお膝元、同じ町内に建つ家です。
大原は、小高い山に囲まれ、田畑が広がり、落ち着きのある里山の風景が広がっています。
周囲にある建物は、戦前から建っていた古い建物も多く、今回新築する家がそんな心地よい風景のなかに違和感なく溶け込むようにしたいと思いました。

 

屋根には瓦をのせ、外壁は杉板の下見板貼りで、自然塗料で濃茶に着色しました。
「古い木造校舎の小学校のようなイメージ」という建て主さんの言葉もヒントになりました。

 

玄関に入ると、正面には階段が、右には洗面カウンターと向かいの山の見える大きな窓、左には天井の高いLDKへの入り口。
ここは「多目的玄関ホール」とでもいいましょうか、普通なら90センチくらいの廊下になるところを倍の180センチにしてゆとりをもたせ、歯みがきしたり、本を読んだり、子供が走り回って遊んだり、いろいろな暮らしのシーンが想起されます。

 

いろいろな方向に窓があり、昼の木漏れ日、夕日のオレンジ色、風で揺れる木々のざわめきなど、私たちが自然とともにあることを日々感じさせてくれることでしょう。

 

京都・大原の家-室内③_安井

多目的、無目的?な玄関ホール、読書、歯みがき、何をする?

リビングダイニングには、もとの曲がりを生かした太い丸太の梁が一本。
2階の壁や屋根をがっしりと支えてくれています。この部分は大工さんが現場で手加工して組み込んでいます。

 

自動化された生産ラインで刻まれるのがあたりまえになった現代の木造住宅ですが、人の手によって一つひとつのものが生み出されていく感覚を暮らしの場のなかに残して行きたいと私は思っています。

 

京都・大原の家-室内②_安井

大原の自然と、里山の風景を暮らしに取り込む窓。

建築DATA

1階床面積 : 18坪           〈家族構成〉
2階床面積 : 16坪            夫婦+子供一人
延べ床面積 : 34坪     
構   造 : 木造2階建て

[家づくりニュース2014年3月号掲載]

蔵町のいえ

蔵町のいえ_居間

居間東側に街を見下ろす出窓がある。
出窓の外観と部屋内の建具は、街並みにあわせて伝統的な意匠を取り入れている。


この住まいは、いにしえの蔵の街並みが今も残る城下町に建っています。
地の利を活かして、伝統が魅せる街のイメージを現代にも継承できるよう蔵の街並みに馴染むデザインを心がけました。

 

外壁を漆喰仕上とし、道路に面した正面外観の出窓には木組みの伝統的な意匠を取り入れて、街並みに自然と溶け込むような外観にしました。
建物を前面道路から少し後退した配置とすることで正面ポーチをつくり、街並みに開かれた共有スペースとしても使えるようにしています。

 

玄関へのアプローチは車庫脇のくぐり戸から入り、植栽のあるポーチを通って玄関へアクセスする雁行した動線をつくり、限られたスペースの中にも奥ゆかしさを感じられるようにしています。

 

1階には来客を兼ねた多目的なスペースと水廻りを配置し、2階に家族団らんのスペースを設けています。
1階からゆったりとした階段通路スペースを上がると、住まいで一番広い2階の居間・食堂スペースがあらわれます。

 

この空間は、傾斜天井に構造梁をあらわし、登り梁の両脇に照明ボックスを設けて、天井板の優しい木目と一体にしたシンプルで力強い空間になるように工夫しています。
居間の東側に位置する出窓は、その外観と同様部屋内の建具にも伝統的な意匠を取り入れています。

 

蔵町のいえ_玄関

建物正面左手に玄関への前庭通路がある。
建物は道路から後退して、突当りの1階に車庫を設けている。
正面ポーチは街並みに面した共有スペースとしている。

蔵町のいえ_室内

構造梁をあらわした登り梁の両脇に照明ボックスを設けている。

 

建築DATA

1階床面積 : 29.82坪           〈家族構成〉
2階床面積 : 26.95坪            夫婦+子供
延べ床面積 : 56.77坪     
構   造 : 木造2階建て

[家づくりニュース2014年2月号掲載]

Union_Houseについて

Union_House-室内_古川「Union_House」は声楽家のご主人とピアニストの奥様が、お嬢さんと過ごす生活の場であり、お二人の音楽活動の場です。

生活機能は必要十分にコンパクトに設計してリビングルーム兼用の音楽スタジオを作りました。
音楽スタジオに必要な「防音性能」を上げるには、鉄筋コンクリートで作るとか、地下室として計画するのが一番です。
しかし、鉄筋コンクリート造は建物が重くなり、敷地の地盤があまり強くなかったので心配です。
また、地下室は敷地内に湧き水がありましたので地下水対策が大変です。
そこで、木造で音楽スタジオを計画することになりました。

「防音」と言っても低音と高音では対策が異なります。
簡単に言うと、低い音は重い素材が、高い音は軽い素材が効果がありますから、特性の異なる素材をバランスよく組み合わせて防音壁を作ります。
今回は、外壁の下地に「モイス」という重い素材を使い加えて石膏ボードと構造用合板を組み合わせて壁を重くしています。
そこに断熱材である、ふわふわの軽い素材としてロックウールのマットを20cmいれました。
さらには、建物を支える骨組みに音の振動が伝わらないような工夫もしています。
これで、性能の高い防音壁は設計できました。
しかし、これだけではダメです。
録音専用のスタジオでしたら、マイクで録音した音をあとからエコーを掛けるなどの加工をするために音が反響しない吸音性能が必要です。
しかし、演奏者が練習するスタジオでは、適切な響きがあることが必要です。
音楽は楽器が発する音そのものではなくその響きだからです。
響きは防音性能のように数値では計り知れない美しさであり感覚的な世界です。
特にアコースティックな響きを大切にする声楽とピアノではなおのこと響きが大切です。

今回は幅の狭い杉の板を隙間を開けて細い針のような釘で軽くとめることで杉板を響かせて程よい音の響きが出るようにしています。
建物が完成し、ピアノが搬入され奥様に弾いていただきご主人に発声をしてもらうまで、心配で心臓もドキドキでしたが、その日が来て最初の音を聴いた時にほっと胸を撫で下ろすことになりました。
我ながら素晴らしい響きを持った音楽スタジオが完成したと思います。
建て主さんの満足した笑顔が忘れられません。

Union_House-フォールディングテーブル_古川

リビングとしても使う音楽スタジオには普段はしまっておける食器棚を兼ねたフォールディングテーブルを作りました。

[家づくりニュース2013年11月号_掲載]

みのりズム

写真:石井 雅義

みのりズム

天井の垂木のピッチが徐々に変わっています。
見上げたときのリズムが楽しいのです。

敷地の形状に素直に計画したら、屋根に入れる構造材(垂木)のピッチが徐々に変化するというデザインになりました。
ここんちの中心は只今幼稚園生の少年。
少年が笑うと皆が幸せ。
そんな生活の様子を想像して、少年の名前と垂木のリズムを組み合わせた造語をこの住宅の名前にしました。

家をつくろうと思ったときは、会社の社宅に住んでいて「湿気+何だか似合っていない住宅+狭い」という不都合がありました。
その中でも優先順位一番として湿気やカビ結露を払拭し、風がよく通って明るく空気がさらっとすることを実現化させました。
そして楽しい雑貨が好きなのだけれど、社宅では全く生かせていなかったので、自己表現できるきっかけをあっちこっちに創りました。

こういう人たちはとっても多いのですね。
自分たちらしく暮らす背景が無くて、でも順応力があるからどこでも住めちゃう。
住めるけれど決してその住宅を愛していない。
愛着を持てる背景がある事によって生活もガラッと変わります。
住宅はまめに手入れをすることになり、整理整頓され、食卓の風景もどんどん変わってきます。
誇りと自信を持てる住宅をつくるということに関与できて、一緒に生活を考える事ができるのが何より楽しい。
生活するってホント楽しいのだから。ね。

建築DATA

1階床面積 : 51.17㎡           〈家族構成〉
2階床面積 : 48.29㎡           夫婦 + 子供一人 + 亀
延べ床面積 : 99.46㎡     
構   造 : 木造2階建て

[家づくりニュース2013年9月号掲載]