【 充総合計画一級建築士事務所 】の家づくり

DROP ON LEAF ~快適さを追求したコート型住宅~

DROP ON LEAF-外観_杉浦

道路側外観


DROP ON LEAF-雨落とし_杉浦

大雨時の雨落としの様子

土地の区画面積に比較的ゆとりのある、東京都郊外の住宅地に計画した住まいです。
敷地は傾斜する前面道路から1.6m~2.5mの高さにあります。
旧住まいは接道面では最も低い西寄りの位置より敷地にアプローチするように造成され、2m以上の高低差を屋根の無い屋外階段で上っていました。
しかし本設計ではその負担を軽減するために、高低差の少ない東側寄りの位置から建物へアプローチする計画としました。そして天候の優れないときでも雨に曝されずに住まいに入れるように深い庇を設けています。

 

全体計画としては、プライバシーが確保しやすく、小さなお子様が思いっきり遊んでも近隣に音が伝わりにくいコートハウス形状としました。
室内各所から庭全体を見守ることが可能です。

DROP ON LEAF-室内01_杉浦

平屋の離れ内観

この中庭の南側にあたる離れの書斎兼音楽室は平屋建てとして高さを抑え、冬場の採光により有効な屋根形状を検討しました。
母屋からはその平屋棟の屋根を眺めることができます。折角見える屋根ですので、それならば雨の雫まで楽しんでしまおうと発想が繋がり、外部には樋ではなく雨落としを設け、内部天井には葉脈のような小屋組をもつ離れとしました。
離れまでは中庭の地面の高さにまで下がって移動します。
屋外の地面により近づくことで、内部でありながらも半屋外の渡り廊下を歩くような気分を演出しました。このような床のレベル差や天井高の変化に、異なる開口部の位置による陰影が相まって、様々な居場所が与えられる住まいとなりました。

 

この建物の環境設備的な特徴としては、トップランナー基準レベルの断熱性能に、全館空調による冷暖房システムを導入し、更には太陽光パネルによるエネルギーを利用しています。

DROP ON LEAF-室内02_杉浦

リビングから平屋の離れへの動線や中庭を臨む

DROP ON LEAF-室内03_杉浦

構造梁の間やダクトスペースには照明が組み込まれている

全館空調はどの場所にいても温度差の少ない快適な温熱環境を保つシステムですが、全ての部屋や洗面所やトイレにまでも巡る大きなダクトは、空間をデザインするうえで意匠的には問題となるものです。マンションの梁型のように単に配管を覆うことは容易ですが、あまり美しいものではありません。ここでは配管経路を意識しない意匠を目指しました。

 

建築DATA

敷地面積:253.92㎡(76.81坪)              〈家族構成〉
建築面積: 98.11㎡(29.67坪)               40才代夫婦+女の子
延べ面積:212.76㎡(64.35坪)
構  造:木造2階建て(木造軸組工法/制震構造付加)

[家づくりニュース2015年9月号掲載]

扇翁

扇翁_室内

狭さを感じない開放的な2階 キッチンはこの家の舞台

この建物は扇型の平面形状をもつ家族4人のための住まいです。なにもわざわざ造形のイコンとして扇型をモチーフにした訳ではありません。ご主人は30代半ばのお勤め方で、もうすぐ家族が増えることを機会に、建築条件付き(売り建て)の土地を購入し、晴れて新生活のための住まいづくりが始まる予定でした。
ところがこちらの土地は三角形状をもつ変形狭小傾斜地というだけでなく、条例によって様々な制約がかけられていました。そのなかでも大きいのは壁面後退です。壁面後退を余儀なくされた残りの土地面積はなんと12坪余りでした。この条件下によって提出される計画案は設計者に何度返しても、とても実生活をイメージできるような案はでてこなかったそうです。困り果てたあげく、売り主に建築条件を外す交渉を済ませたうえでご相談に来られました。

駐車スペースにも配慮しながら、この敷地とどのように折り合いをつかるか…敷地調査で撮ってきた写真を眺めながら、高低差や傾斜の度合いを見極めつつスケッチをしていくと、扇に近い形状がムダなく容積が最も見込めそうです。形状的には曲面も造りやすい鉄筋コンクリート構造を採用したいところでしたが、与えられた建築費用の範囲で収めるとなると構造は木造以外の選択肢はありません。この建物は北東の角を頂点に3つの同台形フレームを回転させて繋いだ構造フレームをモジュールとして、できるだけ単純化するように心がけ、全て直線で施工できるように配慮しています。また、残土処分費用が抑えられるように、内部は各階ともに敷地の傾斜なりの適度な段差をあえて設けました。2階に生じた段差は、人数の多い来客時には自然環境にある腰掛けかのように重宝し、暗くなりがちな1階北寄りの廊下を明るくする採光スリットともなります。この段差は子供達の大のお気に入りの場所だそう。ウィークポイントが逆に建物の特徴となり、狭小を忘れさせる豊かな空間が実現できたと思います。

扇翁_平面図

扇形状をもつ平面図

        

敷地面積 : 88.19㎡               〈家族構成〉
建築面積 : 37.69㎡                 大人 2人
延べ床面積 : 74.32㎡(ロフト面積を除く)     子供 2人(未就学児)
構  造 : 木造軸組工法 / 2階建て+ロフト

[家づくりニュース2013年2月号_今月の家_掲載]

FOLD

 みなさんはじめまして。8月から「家づくりの会」に参画させていただくことになりました。初原稿となりますので、ご挨拶を含めながら竣工して間もないこの住まいを紹介したいと思います。

 設計事務所を開設して10年経ちました。それ以前はゼネコンで設計業務に携わり、そこでは現場監督として工事に直接関わる経験もしました。総合建設業の名の通り施工を請け負うのみならず、意匠設計から構造・設備設計までの全てを自社内で行える組織をもつために、疑問が生じれば他部所の方に相談できる便利な環境でした。しかしこの生産合理的一環方式の強みよりも、設計が施工する立場のなかにあることの問題を直接肌で感じ、独立して現在に至ります。

photo:FOLD
小さくても中庭を設けることでそれ以上の広がりが与えられた。

 写真の建物は耐震等級3の性能に制震構造も付加した二世帯住宅です。前面道路を挟んで周囲環境とは無関係に開口部が開けられた建売郡が対峙し、南側に迫る隣戸は特徴的な配色がなされていました。良好な景観を望めない状況でしたが、コートハウス形式によりプライバシーを確保しながらも採光や通風を充分に得られるようにしました。回遊性のある動線や、天井高や床レベルの変化が空間に多様な展開や陰影を与え、それらや自然素材がバランスをもつことでメリハリのある気持ちのよい生活空間と住みやすい生活動線を提供しています。

 私が設計で常に考えていることはバランスです。実際には無意識に捉えているという方が正しい表現かもしれません。これは素材や色・町並みなどの目に見えるものから、住環境や感性・コスト・家族間距離などの、目に見えない物事も含みます。「バランスがよい」と感じるものは「美しい」と言い換えられるのではないでしょうか。これは人の行為や仕草まで全ての物事に言えそうです。

photo:FOLD
誇示することなく、また埋もれてしまうことのない造形。

  1 階 : 24.75 坪       〈家族構成〉
 中2階 : 3.69 坪        1階親世帯 : 大人 2人
  2 階 : 28.18 坪        2階子世帯 : 大人 2人
  延べ : 56.62 坪               (将来子供2人を想定)
 (小屋裏: 6.81 坪)