【 川口通正建築研究所 】の家づくり

杜の里(もりのさと)

写真:スパイラル/小林 浩志

杜の里-室内01_川口

床、天井の材はすべて杉材。壁の仕上げは、土佐漆喰塗り。壁内はすべて杉の3層構造パネル


敷地は、なだらかな坂道に面した台形である。
敷地東側には、モミジの木がもともとあり、この木を残した。眺めについては、敷地と隣接地の緑の関係を考えて、窓位置に合わせて借景している。
2階からは、遠くの森の景色が窓越しに連なるように見える。

 

杜の里-室内02_川口

玄関ホールの階段から、台所、居間、食堂方向を見る。

杜の里-外観_川口

外観右手は元気になったモミジ。外壁は色漆喰左官塗り。

この建主夫婦には、3人の小さな男女の子供達がいる。
この住宅は、都心を遠く離れた自然豊かな子育てには、とても理想的な環境に建っている。
家の壁内は、杉の三層構造パネルの無垢を2枚重ねてあり、全くすきまをつくっていない。
断熱材としてもその材を活用している。
さらには、子供達の健康を考えて、プラスチック部材や、接着材を使用している材料は、内部に直接出る部分には使用していない。
杜の里-室内03_川口

居間、食堂、スタディコーナー、和室のワンルーム空間を見る。

室内の仕上げ材は、木とコンクリートと土佐漆喰である。
木はすべて杉材で、塗装はしていない。家族は素足の感覚でずっと暮らしたいと考えている。
小さな子供達が、家のなかを飛びまわれるようなワンルーム田舎家プランである。
敷地内の高低差の都合上、内部にも階段等の段差があるが、それがかえって空間を楽しく豊かなものにしている。
そして、道路に塀を建てずにプライバシーを確保できている住宅となった。

 

建築DATA

1階床面積 : 59.60㎡ (18.02坪)          〈家族構成〉
2階床面積 : 27.44㎡ ( 8.30坪)            夫婦+子供3人
延べ床面積 : 87.04㎡ (26.32坪)     
構   造 : 木造2階建て

[家づくりニュース2016年4月号掲載]

杣(そま)

写真:スパイラル/小林 浩志

外観は、杉板型枠コンクリート打放し仕上げに、一部栗の板材を貼って表情に柔らかさを出しています。

 

杣_2階和室

2階和室。開口部にはガラスのほか、障子とよしずの引き戸が仕込まれています。

この住宅の敷地は、高台の閑静な環境の一角にあり、公園と3面を道路に囲まれている。その3方向からの斜線制限と、北側からの高度斜線制限を受けています。

 

建物の形態は、これらの法規制限と、必要空間ボリュームから検討して、敷地形状をそのまま住宅の形にしました。
敷地のコーナーには、樹形の美しいモミジを植え、各階から公園内の桜の大木や木々と重ね合わせ、眺めることができるように考えました。

 

外観は、建築の表情に柔らかさを出すため、内外壁に杉板型枠コンクリート打放しを用いています。
一部外壁には栗の板材を貼って、コンクリート打放しになじむことを考えました。

 

構造は鉄筋コンクリート壁式造とし、内部空間から柱型をなくしました。
また、風通しが重要な課題でしたので2階の居間食堂では、1階から3階までの2つの階段をあえて見せることで、空間を縦につなぎ、高さ方向の通風を発生させるようにしました。
そして、出来るだけ深い庇のある外部空間を各階に設けて、雨除けと夏の日除けに役立たせるようにしました。
それらは建築の陰翳を醸し出すことにも寄与しています。

 

建物の外周には、塀を巡らせ、防犯とプライバシーを確保しましたが、道路境界線から20センチ程度後退させ、その部分にも下草を植え、塀に屋根を掛け、左官仕上げを用いることで、威圧感をできるだけ感じさせないよう配慮し、道行く人々にも楽しんでもらえるようにと考えました。

杣_2階リビング

2階リビング。ガラスの入った格子スクリーンの奥は、階段室を隔ててキッチンがあります。

 

建築DATA

1階床面積 : 11.72坪 (38.77㎡)           〈家族構成〉
2階床面積 : 19.84坪 (65.59㎡)            夫婦+子供2人
3階床面積 : 19.99坪 (66.09㎡)  
延べ床面積 : 51.56坪(170.45㎡)     
構   造 : 壁式RC造3階建て

 

[家づくりニュース2014年7月号掲載]

ブナの木と山野草の庭がある住まい

写真:スパイラル/小林 浩志

ブナの木と山野草の庭がある住まい_外観

コンクリート打ち放しの北側外観。上部には屋根が掛かり、ソーラーパネルが取り付けてあります。敷地間口の左右と中央には、将来、大きくなる木を植えています。

この住宅は下町の密集地に建っています。
防犯上の考慮とプライバシーの確保の点から、道路側を少し、クローズな感じにしています。
3階建ての二世帯住宅で、親世帯と娘夫婦世帯の一家7人で暮らしています。
昔から下町に生まれ育ち、暮らしてきた家族が、新たな家をどのようにつくるかを、みんなで考え、子供たちも孫たちも未来につなぐことを夢見た家づくりです。

敷地の約4分の1を自然観あふれる庭にして、土間を通り、玄関から直接、庭に出ることが出来る住宅をつくることにしました。
両親が最高齢になっても、3階分の上り下りが楽なように、ホームエレベーターも目立たないように設けました。

ブナの木と山野草の庭がある住まい_室内

庭と一体になった室内。木製のガラス戸・網戸・障子は全て、左側の壁に引き込んでいます。

家族全員が自然が大好きなので、何も無かった場所に豊かな自然を、建築と一緒に新たにつくることにしました。
1階にブナの木と山野草がたくさん植えられた広めの庭。
3階にはジューンベリーが植えられた花壇のあるテラス、そしてスカイツリーが良く見え、ナスやキュウリ、トマトを栽培している野菜畑がある屋上デッキをつくりました。
1階の庭には、屋根が掛かっている、お茶が飲めるテラスを設けています。
外部に通風がある日陰を設けることや雨天の作業スペースとして、とても役立っています。
北側の道路側にも、設計の初期に、あらかじめ植栽スペースを確保して、モミジ(紅葉)や常緑樹のソヨゴ(冬青)、ドウダンツツジを植えて、道行く人に楽しんでいただくことを考えました。

この住宅の構造には鉄筋コンクリート壁式造を採用しています。
鉄筋コンクリート造でも、マンションのように部屋の角に、大きな柱型が出ないため、家具などを各部屋のコーナーに、すっきり置くことが出来ます。
耐火性や耐震性も大きく、3階建ての住宅には、とてもお勧めのつくり方です。
僕は3・11の地震の時、この現場の中にいました。
前の道路と電柱はうねりながら大きく揺れましたが、この住宅は、この構造方式と杭を打っているために、思いのほか揺れませんでした。
町屋の震度は6弱でした。建主家族もそのとき一緒でした。

これからも、この家族7人と、これまで僕が設計した住宅の家族と同じように、ずーと、お付き合いしていくことになると思います。

建築DATA

1階床面積 : 26.40坪(84.29㎡)      〈家族構成〉
2階床面積 : 26.57坪(87.86㎡)       夫婦 + 娘 + 娘夫婦 + 子供2人
3階床面積 : 26.39坪(87.26㎡)
延べ床面積 : 77.86坪(257.41㎡)     
構   造 : 壁式RC造3階建て

[家づくりニュース2013年9月号掲載]

紫野(ゆかりの)

 この住宅の敷地は、いわゆる路地状の敷地です。道路の反対側には大木があり、自然が豊かに借景できる公園があります。車1台分の間口スペースの奥に階段があって、その先に長い路地状の部分が続いています。その奥の部分が北側へと広がり、建築できる部分はその広がった敷地になることが予測できます。
 周辺環境は、ゆっくりではありますが、家が建ち並び、いずれは住宅が近接し取り囲まれると考えられます。その時点で、プライバシーを失うと考えられますので、そのためには、完全な中庭形式のコートハウスは無理であっても、露地的な空間の延長に植栽された半中庭空間を設けたいと思いました。露地の入口に格子戸を設け、それから先はセュキリティーを確保しました。半中庭には屋根の掛かった塀をめぐらせて、一部に眺めと風通しを考慮した格子をはめ、日本的な湿り気がある、親密な空間を外部につくりたいと考えました。
 紫野では、自然を強く感じる外部空間の力を活用して、内部の生活空間に広がりと潤いを出し、敷地全体を感じる豊かな内外一体の住宅にしたいと思いました。また、和室からも玄関を通して半中庭を見せるようにして、心地よい視線をつくりたいと考えました。
 2階の食堂、台所では、日常の気持ち良さを確保するために、遠くの眺めを随所に切り取り、季節の変化を楽しむことを考えました。そして、1階とは別の雰囲気にしました。2階からは、当然、公園の木々を借景しました。収納は、各室に将来のことを見込んで、たっぷり確保しました。また、美しくなくなる書棚やパソコン関係機器は、ライブラリーをつくり、そこに小さな風の通る部屋を設けて、目立たないようにしました。
 もともと建て主夫妻は、和風の空間を望んでいましたし、新しい感覚の空間も期待していました。それに加えて白いソファーやガラスローテーブル、古い車箪笥などを、以前の暮らしから使っていましたので、新しい住宅にそれらをなじませる必要がありました。必然的に空間と外部の自然とモノとの関係を考えることにしました。また、住まい手の感性が、紫野の感性に調和し、素敵なしつらえがなされていることには、感激します。
 僕は、現代的で日本的な、翳りと湿り気がある住宅をめざしました。植栽については、造園家の栗田信三さんに、設計と工事をやっていただきました。高木、低木、下草と栗田さんの世界で、この紫野の建築をつつんでいただきました。時間が経つにつれて、植物たちは生き生きとし、その力でこの住宅は優しい生命力をもらっています。

紫野(ゆかりの)
1階居間から中庭を見る。中央にはハウチワカエデの株立ちが植えられている。足元にはホウチャクソウが季節を彩るように植えてある。
塀には屋根を掛け、色しっくい掻き落し仕上の壁になっている。
正面の格子は、人と植物相方の風通しのためのもの。

紫野(ゆかりの)
2階食堂。
床は土佐栂(とさつが)厚さ15㎜巾150㎜
天井は厚さ9㎜ピーラー材。巾100㎜。
正面の障子を開けると、向い側の公園の大木が眺められる。

紫野(ゆかりの)
露地的雰囲気の玄関と中庭スペース。
いちばん奥は浴室前の中庭スペース。
左手格子は風抜きのためのもの。右手前は玄関板戸。深く屋根を出している。
左手塀の向こうには、隣家が接して建っている。

紫野(ゆかりの)
左手は屋根のない車庫。その右に門をつくり、そこをくぐり抜けて階段を上がりさらに歩いて右の露地に足を踏み込んで玄関にたどり着くようになっている。その経過の中で、さまざな季節の植物を眺めて、歩くようになっている。