【 村田淳建築研究室 】の家づくり

井口の家 ~Uさん家の小さな図書館~

井口の家_村田

西の庭へはブリッジから。ベンチの上にはパーゴラを設えてあり、ブドウを絡ませます。


井口の家_村田

図書室から東の主庭を見ています。主木はモミジを選びました。

家族全員の本を一箇所にまとめ、みんなで読めるようにしたい。」
この家には、そんな要望から生まれた大きな本棚のある図書室があります。
本を読むという行為は極めて個人的な行為ですが、一箇所に本をまとめることで、家族間で共通の話題を生むきっかけとなります。分け隔てなく本を選べる環境をつくることで、本を仲立ちとして家族をつなぐ素晴らしい要望だと感じました。

 

この地域は建ぺい率が厳しく(40%)地上部の面積が限られるため、地下を作る必要がありました。2階はお向かいの緑を借景として楽しむリビングで、1階は個室と水まわり、地下は寝室。そして、読書にふさわしい環境と外とのつながりを求めて半地下を図書室にしています。
床面は地面から1.2mほど低いところにあり、天井の高さは3.8mほど。その大きな壁の一面が本棚です。半階下がることで、地面にもぐるような格好となり、適度に囲まれて落ち着いた雰囲気になっています。東西両側はウッドデッキのある庭で、読書の途中でふと上方に視線をむけると、風にそよぐ緑と空が見えるという具合です。庭へはブリッジから自由に行き来できます。


 

デッキの木漏れ日の中で風を感じながら、あるいはソファにゆったりと身をあずけて、時には階段に腰掛けながらなど、その時々の心地よい場所を選んで読書を楽しめるように考えました。

 

建築DATA

地階床面積 : 39.17㎡(11.85坪)           〈家族構成〉
1階床面積 : 50.18㎡(15.18坪)            夫婦+子供
2階床面積 : 52.76㎡(15.96坪)
延べ床面積 :142.18㎡(43.01坪)
構   造 : 木造・地上2階、地下1階建て

[家づくりニュース2015年9月号掲載]

若林の家

若林の家_室内01

ロフトからリビングを見下ろす。窓の向こうには、ルーバー手すりで囲われたバルコニーと花壇。


密集地に建つ3世代6人家族の住まい。
一般的に、家族の人数に応じて部屋数も増え、各部屋の広さも限られてきます。
特に密集地で斜線制限が厳しい場合は顕著です。
そこで、なにか特別な建築表現や構成を追い求めるのではなく、これまで大切にしてきた通りに、設えや納まりと言った、生活の背景を丁寧に設計することを心がけました。
リビングは採光と通風に優れた2階にあります。
2階リビングの利点は、高い天井をつくれること。
ここでは、切妻屋根のかたちに合わせた船底天井としました。高いところで3.6mあり、ロフトともつながっています。
このように天井を高くすると、実際の面積以上の広がりを感じられるようになります。
リビングの窓先には、背の高いルーバー手すりで囲まれた少し広めのバルコニー。
テーブルと椅子を置ける程度の広さです。
また、屋上緑化システムを使ってつくられた花壇もあります。
好みの草花を植え、ルーバー手すりにはつる性植物を絡ませて緑のスクリーンとなる予定です。

 

家の各所にほどこした設えの一部もご紹介します。
玄関まわりでは、玄関扉やポスト口などを木で一体につくりました。
まとまりのあるデザインとすることで、木や漆喰などの素材をより純粋に楽しむことができます。
内部には同じく木でつくり付けたベンチがあって、差し入れられた郵便はその上に出てくる仕組みになっています。
寝室として使う和室には、障子とは別にガラリ戸を設けました。
夏の夜に窓を開けて寝るための工夫です。
やわらかい光が室内を満たし、揉紙を貼った収納、漆喰壁との相性も良さそうです。

若林の家_玄関

玄関内のベンチ。波板ガラスの下がポスト口になっています。

若林の家_和室

モダンな雰囲気の和室。ガラリ戸は壁の中に引き込むことができます。

 

建築DATA

1階床面積 : 13.78坪           〈家族構成〉
2階床面積 : 18.22坪            夫婦+子供3人+母
ロフト面積 : 6.29坪
延べ床面積 : 38.29坪     
構   造 : 木造2階建て

[家づくりニュース2014年4月号掲載]

成田東のコートハウス

家と庭の思い出
 この原稿を書いている頃にちょうど桜が満開になり、街は急に華やかになりました。この家の敷地にも以前から桜があり、建て替えにあたり切らずに残しました。もう老木ですがきっと今年もきれいな花をつけたことでしょう。
 初めて敷地を訪れた時のことは今でもよく覚えています。夏の暑い日で、年月を経て大きく育った木々が色濃くあたりを埋め尽くしていました。築50年ほどの平屋と和の趣きをまとった庭。現代の水準からすればコンパクトで時間の流れをまとい風化した佇まいがそこにありました。
 建て替えることで家はまったく新しくなるわけですが、その佇まいのもつ雰囲気や空気感いわば「記憶」のようなものを少しでも残したいという思いは、建て主と共有していたと思います。相談の上、屋根瓦、表札、懐かしいデザインの水栓などに加え、庭の木を選んで残すことになりました。桜以外には松、梅、紅葉などがあり特に松は立派でした。しかし、新しい家の計画にはあいにくの場所に植わっています。いくつかプランを検討した結果、桜だけを残すことに。そうして、ヤマボウシの中庭と桜の庭とがつながるコートハウスになりました。
 この家の近くには緑豊かな公園があります。設計が進むにつれだんだんと緑への関心が強くなってきたご主人は、散歩しながらよく1本1本の木を観察したそうです。竣工後もご自分であれこれと草花を植えて楽しまれています。新しい家に住むようになってご自身の興味の幅も広がったようです。この庭の緑も、きっと長く愛着をもって大切にされることでしょう。

成田東のコートハウスリビングから庭を見る。正面に株立ちのヤマボウシ、左に残した桜の木が見える。
ヤマボウシは上向きに花がつくので、2階からも花が楽しめます。

成田東のコートハウスコンクリートと木の素材感で構成した玄関ホール。
正面には紅葉、右に進むと中庭が目に入ります。