[ ロングライフ-004 ]
富の家

ロングライフ部門

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 中国山脈の豪雪地帯の過疎地に建つ、夫婦と子供2人のために計画した住宅である。山深い小さな集落の清流と雪に惹かれてこの地(旧富村)に居住を決めた施主にとって、日常生活の中で自然を楽しみ、それと対峙できることが大切であると思われた。居間の延長としてのテラスは、屋根を支える列柱に囲われることで、わずかに外との境界を感じられる。テラスの高さは、平均降雪量に合せてある。冬は外が雪に埋まり、居間・テラス・外部空間は同レベルを共有し、内部空間の存在を顕在化してくれる。夏には谷風の通り道となり、大きな屋根が直射日光を遮る。テラスは、富村の自然を楽しむためのバッファーゾーンである。

 竣工して13年が過ぎ、村民からは「富の行灯」と呼ばれている。

竣工時の遠景 
テラスの外壁と蔵(既存)を含めた建物全体の腰板は、木造の天井下地や壁下地に用いる地元産の杉の間伐材である。一本ずつ壁の胴縁に打ち付けられた杉の棒(36角)は昔ながらの薄い腰板より耐候性を増し、年輪を刻んでいく。漆喰壁との対比で、その存在感と呼吸する建築を印象づけてくれる。

エントランス夕景
エントランスと木戸で仕切られた奥のテラスが、この住まいの外観を特徴付けている。テラスの吹抜けの天井も外壁と同じ杉野縁の視覚天井にした。住宅の南側に位置して、日本建築の特徴である軒下空間をモティーフとした中間領域のデザインを試みている。

竣工後10年目の遠景 
竣工時にUFOのように降立つったこの住宅は、しっかりとこの土地に根付いている。当時、植えられたユリとクスの木も見事に大きくなってきた。住宅と樹木が上手にバランスして、さらに魅力ある住まいになっていくことを願っている。そのための継続可能なディテールを考えたはずである。

竣工後10年目のテラス
明らかに竣工当時より魅力のあるテラスになった。当時、「住宅は造りすぎない」を肝に銘じて設計していたことを覚えている。また、増室が必要になったら、テラスの梁に床を掛けて、2階にも部屋ができることを担保に、12坪ものテラスを提案したことを思い出した。

建設地
岡山県苫田郡鏡野町 
敷地環境
山村
構造
木造
階数
2階
敷地面積
924.05㎡
建築面積
139.15㎡
延べ床面積
162.29㎡
工事費
3000万円
家族構成
夫婦、子供2人
居住者の年齢
現在40代、10代
設計者名(事務所名)
岸本 泰三(岸本泰三建築設計室)

図面

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