[ ロングライフ-006 ]
小坂山の懐

ロングライフ部門

FavoriteLoadingお気に入り保存

 

都心から100kmの里山への転宅に掲げたテーマは「山の懐、家族の巣」。設計は環境を受け入れるところから、暮らしは地域に受け入れてもらうところから始まるに違いない。ならば姿形は朴訥な表情を持たせつつも、内部空間には伸びやかな野太さが欲しい。そこで「懐+巣」を居間の荒い曲面壁(写真右壁)に託し、家族の時間を包むことを試みた。

独立10年目の35歳、やりたい事への渇望と知らない事への欲求が同居する。拙宅は絶好の実験体となったが、同時に多くの落とし穴と学びも潜んでいた。この家ではロングライフをkeyに取り「暖房と外構」を取り上げたい。

吹抜けを多用する自作で毎回悩んできた暖房方式。そして殆ど完成形までたどり着けない造園や外構。どちらの判断にも経験値に基づく長い時間が必要だ。ディティールの工夫などとはジャンルの異なる”築18年、2面の竣工後”をご紹介する。

敷地は、間口4m、奥行き75m、高低差9m。車社会の群馬では駐車場から玄関までの50mが否が応でもこの家の顔を判断される。建設時には家の前までレッカー車が入った進入路を、何とかそれらしい構えにしなくてはならない。
そこで1600ポットのオカメ笹を家族で植え要所に小さいながらも多様な樹木を配して、写真は漸くアプローチらしくなった竣工2年後。
この手の環境に仕掛ける住宅には、如何に外構設計の段取りと、そのコスト配分が重要かを痛切に思い知らされた。

築15年を経て、背丈10cmの疎らなオカメ笹は大人の身長程に伸び、思惑通り立体的に刈り込めるようになった。しかしこの庭を管理するのは我々夫婦二人。年一度毎年初夏に催す「一日家づくり学校」の際は、丸3日俄植木職人となる。当初8本の孟宗竹も年々倍々に増え続け、この年は一度に50本を伐採し、今年から焚き付けに使っている。
「建築は動かないが、自然は止まらない。」

竣工直後の階段室。
居間から続く左曲面荒壁に沿って下りて行った先が地階となる玄関。正面奥の台所から食堂を経て、手前右の居間に繋がのが生活階となる一階。上の子供室との仕切りは格子だけで音は筒抜け。つまり家中が一つの空気で繋がっている。この吹抜けは、暖気と気配を伝える「体温の縦ダクト」といえる。

竣工から15年間は補助暖房無しの「温水式床暖房」であったが、設計依頼の中に薪ストーブが増えたのを機に階段室上部に設置。その比較は鮮やかで、全く異なる燃料は、全く異なる暖かさをもたらしたが、最も大きな収穫はその運転方法のノウハウを学ぶ事だった。
最近は冒頭の写真のごとく「炬燵」もその選択肢に加え、建主の性格を見定めてから熱源を選択している。

建設地
群馬県高崎市 
敷地環境
里山と住宅地の接点
構造
地階RC造の上、在来木造2階建て
階数
地上2階(一部地階あり)
敷地面積
623.92㎡
建築面積
110.00㎡
延べ床面積
165.77㎡
工事費
3,000万円台(一部直営工事)
家族構成
竣工時:5人 (現在:3人)
居住者の年齢
竣工時:35歳 (現在:54歳)
設計者名(事務所名)
徳井 正樹(徳井正樹建築研究室)
FavoriteLoadingお気に入り保存