[ 快適-008 ]
重ねの家

快適空間部門

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音楽家夫婦のためのSOHO的な住宅として音楽活動のための十分な練習と安眠の出来る環境が重視されました。具体的には、街道や小学校に近いごく一般的な住宅地の一般的な生活リズムに対して、演奏練習や睡眠時刻などがズレがちなため、近隣の住宅にスタジオからの音を漏らさない、寝室に外部からの音を入れないという2点。また本番や締切を個別のスケジュールで迎える二人の音楽家にとって、互いのペースを尊重しつつ共に過ごすことの居心地良さも備えた空間が求められました。遮音性能は、開口部を減らし、気密性を上げ、振動を伝えない工夫で確保できますが、性能が上がるということは外の世界の気配をシャットアウトしてしまうことの裏返しです。遮音エリアを回遊動線や風のルートの一部に組み込み、遮音を必要としない時は開けっ放しがもたらす快適さを満喫できるようにしながら、近隣との距離感、家族との距離感の緩衝・調整役としての建築を追求しました。

最大7人でのリハーサル練習を前提としたスタジオはこの住宅の中で一番大きな空間です。現在は練習仲間や楽器の搬出入の業者の出入りする職場・鍛錬の場ですが、いつの日か現役をリタイアされたらオーディオルームあるいは応接間への転用も想定しています。写真右手の北東に向いたFIXの二重高窓のほか、道路(南)側の熱抜き用高窓や西向きの地窓から、移ろう空の色や庭を行き来する猫など外の気配が感じとられます。

寝室の静けさを守るように収納が周りを囲み、その外を玄関から水回りへ日常生活のための場が囲んでいます。帯状に連なる外周部は限られた面積空間の中で少しずつ折れ曲がり見え隠れする廊下状の空間で、天井高の変化、素材や色の組合せをずらし重ねることで、小さな完結しない空間が連なって、互いの心理的な距離感に対し時にバッファーとなり、時に隔てるだけでなく互いの存在を柔らかく近づける補助線となることを目指しました。

キッチン・水回りと広間の間にまたがる収納壁を斜めに削ぎ落としたことで、立つ位置や目線の高さによって、見通せる範囲が刻々と変化します。時に互いの視界に入らない個々の時間を大切に、でも相手の気配は感じられる、そんな場を生み出せたと思います。収納は大工さんと家具屋さんの力作で耐震ラッチなどの単純な仕掛けで構成され、食器や食材、飲み物やお米などをたっぷり収容できます。

寝室の左右の扉を開け放つと、水回りからスタジオまで家の中を一周できる回遊動線が生まれます。建物の一番中心に位置する寝室ですが、ロールスクリーンや建具を開けると、高窓越しの明るさやスタジオ越しの庭の緑が見通せ、建物の東西を貫通する風の通り道ともなります。閉じきった状態の寝室、開け放った時の寝室、2つの雰囲気ががらっと変わることが、遮音のONOFFを楽しむ一つのきっかけともなればと考えました。

建設地
千葉県 
敷地環境
住宅地
構造
木造
階数
地上2階建て
敷地面積
247.47㎡
建築面積
90.02㎡
延べ床面積
104.74㎡
工事費
非公開
家族構成
夫婦二人
居住者の年齢
40代
設計者名(事務所名)
木島 千嘉+上原 絢子(木島千嘉建築設計事務所)

図面

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