公開審査を終えて(総評)

koukaisinsa-20150211前回まで家づくり大賞実行委員を中心として、家づくりの会に所属する理事の投票で各部門を選出していたが、肝心な家づくりの会に所属している建築家が授賞対象にならないという不備な点があった。そこで今回は外部の人に協力をお願いし、我々会員も応募して参加できる形に改めた。
審査員は賞の性格を左右する重要な役割であるので人選は我々実行委員の中で議論を重ね、今回の人たちに集まってもらった訳だが、自画自賛になってしまうが結果的にとても良い人選であったと思っている。
審査を進めて分かったことだが、審査員の発言が得票に大きく左右したこと。改めて人選の大切さを教えられた。また参加した一般参加の人や投票に参加した会の建築家にも発言権はあったのだが、あまり発言が無かったことは残念であった。口の滑りを良くしようとビールなども用意したのだがあまり効果的ではなかったようだ。応募した一般の建築家が何人かに参加していただけ、直接質問ができたことは嬉しいことであった。公開審査に出席していただけた建築家の作品の多くが最終選考作品に残ったのも無関係ではあるまい。
また特徴的であったのは地方からの応募が多かったこと。遠く北海道から四国、九州に至るまで広範囲から応募を頂き全国規模で応募があったのは嬉しいことである。
発表の場が少ない建築家の新しい発表の場としても機能するよう次回からは応募期間を定めず、一度登録すれば常にHP上に作品をアップでき、常に一般の皆様に作品を楽しんでもらえるよう態勢を取れるよう考えている。また同一部門への作品数の制限も無くし、住宅に興味のある建築家の質の高い発表の場にできるようにと現在検討中である。


2014家づくり大賞
「農具倉庫をコンバージョンした家」

リノベーション部門への応募作品であるが、リノベーションという部門を超えた魅力的な空間をもつ作品である。さらにこの空間を作るのに1000万円という値段しか掛かっていない。倉庫という大きな空間を生かし、その中央に白い箱を置いた作品であるが、将来的な新しい要求にも簡単に対応できそうなフレキシブルな空間である。しかし、何と言っても評価したいのは、「ここにでも住める」と着眼し決心した英断と、それを可能にした設計の技量を称賛したい。快適空間、生活提案、作り方、ローコストと多くの部門に共通する問題を解決した優れた作品として、第3回家づくり大賞に選出した。

 

「RICO」

作り方部門への応募作品で構造的な提案として評価されたが、構造的に優れているだけでなく、構造を視覚的に見せ生活と密に結びつけた手法が東日本大震災での経験から来ていることなど、説得力の強い作品である。6つの木箱の内側はそれぞれ違った内装が施され「内」の中に入れ子構造で「内」を作り出しており空間的な魅力も見逃せない。この作品も部門を超えた提案と完成度の高さで第3回家づくり大賞に選出した。

 

快適空間賞 森清敏審査員
迷迭香(まんねんろう)が授賞作品。
光と影のなす絶妙な空間と道路から内部へと導入される半外部空間のしつらえ、道路を通り人への空間的配慮など、日本的な空間を随所に盛り込んだ作品として評価が高かった。一般投票で最高得票数を得た「ドンコロの家」の外から中へと続く床、ちりばめられた中庭も魅力的な空間であるが、既視感のある平面形で延面積の割に一つ一つの部屋が狭いなどの理由から審査員賞とはならなかった。その他「東村山の家」の三つの中庭に挟まれた段差のある落ち着いた空間、また「霧島町の家」は典型的なプランでありながら大きな空間のLDKを別棟として方形の屋根で囲ったことの新鮮さも議論に上がった。「山望のいえ」の景色を主題とした平面の作り方は斬新さが見られ評価があった反面、開口部の大きさと開け方の工夫と寒さの問題も指摘された。「Indoor terraceの家」は単純な外観の中に複雑な中間領域を盛り込んだ意欲的な作品であったが、緻密さで授賞作品に及ばないという評価となった。その他中庭からアプローチする「朝霞の家」「末広の家」も最終選考作品に残り、部門別で一番応募が多かっただけではなく質の高い作品が応募された激戦部門であった。

 

生活提案部門 柏木博審査員
「下北方の家」が授賞作品。延べ面積が約70㎡というコンパクトな住宅。柏木氏の考えで、良い住宅の基準の一つとしてむやみに大きな家はいらない、という基準がある。その点で「下北方の家」「田舎育ちの家」「100K先のプロヴァンス」なども好感の持てる住宅とした上で、「下北方の家」は夫婦2人の家として建て、南側のエコロジーも踏まえた石の庭と北側に南とは性格の違う緑の大きなスペースを設け、将来的な増築も視野に入れたサスティナブルな生活提案が評価された。一般最高得票であった「アオバの家」は四周を住宅に囲まれた狭小敷地でなんとか日照や通風を得ようと45度にプランを振った巧みさ、「木蓮寺の家」の省エネにもつながる断面計画なども評価され最終選考に残った。

 

素材ディテール部門 山下保博審査員
「JI-TEI」が授賞品、一般最高得票も得てのW受賞。むくりの大きな屋根が特徴的な作品。純日本風でありながら屋根の構造体に鉄骨を使い、華奢な感じのするディテールにしながらその鉄骨は一切見せていないという巧みさが評価された。平面図や断面図が無く、特に断面計画がどのようになっているかが分からず残念なプレゼンテーションであったが、それを超える美しい外観である。コールテン鋼を使用した「桜の家」も評価されたが、コールテン鋼から出る錆に対する汚れ防止のディテールに難のある点が指摘された。「Ash-House」は街並に対する配慮とディテールが評価され、以上の3点が最終選考に選ばれた。

 

作り方部門 山田憲明審査員
「RICO」が受賞作品。審査員から、審査基準として、①作り方によって建築的に何が実現されているか、②独自性があるか、③全体から細部に渡って一貫した考えで作られているか、という説明があった。「RICO」は、敷地内に各機能を持った木箱を分散配置し、ロフトを内包した大屋根を架け渡すことで、全体と分節を巧みに構成した住宅である。箱間の隙間が広間や外部に通じる開口となることで、緩やかなつながりをもった住空間を実現している。合板耐力壁は片面張りとして内側に向けて各箱に見合った仕上げを施し、外側は棚に使うなどのきめ細かいデザインがなされている。屋根構造についての説明はないが、住宅にしてはやや大きなスパンをすっきりと成立させている。一般最高得票の「礫明 第一期」は、時間的な厳しい制約がある中で未完で住み始め徐々に完成させていく手法をとっている。現状の床や壁の仕上げはラーチ合板や石膏ボードの素地のままであるにもかかわらず、良質な住空間を作り出していることに設計者の空間構成やディテールの作り方の力量を感じさせ、受賞作品と争った。「石井の住宅は」独自の杉厚板縦落とし込み連続柱壁工法を開発して様々性能や環境配慮を実現しており、最終選考に推薦された。

 

リノベーション部門 瀬野和広審査員
「紫竹の住居」が授賞作品。既存の表しで表現された構造体と新規に作られた白い空間の対比が空間の対比が美しい町家型の住宅のリノベーション。美しい小屋組を効果的に表現したことが評価された。同様に「服を飾れるドレスルームのあるコンクリートアパートメント」でも素材は違うもののコンクリートとモルタルで作られた空間が評価された。「昭和モダン・リノベ」では建築家が関与したとは思われない不思議な雰囲気が魅力的で、また一般最高得票を得た「農具倉庫をコンバージョンした家」は古いものとの対比ではない全く新しい良質な空間を作り出していることが評価された。その他「玉砂利の家」の二階でありながら外部のような空間をもつ住宅で、これら合わせ5点が最終選考に残った。

 

ローコスト部門 吉田研介審査員
「Fly out house」が授賞作品。究極のローコストは建築家が何もしないこと、これは逆説で、真意は(自分も含めて)建築家の独りよがりを戒めたいということ、と吉田氏から最初に説明があった。長年ローコストにも積極的に関わってきた氏ならではの重い言葉である。一方やるならばとことんコストを追求する姿勢も大事との意味から「木箱・逗子」も同様に高い評価で、悩んだ末での「Fly out house」授賞であった。何もしないといいながらも壁で囲われた縁側空間は魅力的で高い空間の質を保っている。一方、台所周りのインテリアのあり方の問題も指摘された。以上の理由から一般最高得票であった「T-2」の連続するフレームの構造的な曖昧さ、魅力的ではありながら既視感のある断面計画などから授賞には至らなかった。その他「ひとつ空間の家」の良質で癖の無い空間は柏木博氏より高い評価を得た。

 

エコロジー部門 山田浩幸審査員
「佐賀の家」が授賞作品。通風、吹抜けによる熱さ対策、大きな開口からのダイレクトゲイン、天井最上部に取付けられた空気抜きの天窓、西日対策も含めた建築化された木のルーバーなど細かい配慮でエコロジーを実践する取り組みが評価された。「Tamashima K House」はコンパクトで普通の平面計画でありながら引込みの木製ガラス戸・障子・ルーバー状網戸などで細かに室内環境を制御できている点で評価された。一般最高得票である「木箱・阿佐ヶ谷」はローコスト部門でも評価された木箱シリーズのひとつであるが、省エネ的な観点からも高い評価を得、昨年の作り方部門での授賞を含め、部門を超えた高い質の住宅であることが分かる。

 

まちなみ部門 大平一枝審査員
「阿久比の家」が授賞作品。南と東が道路に接する角地で、大胆に両側に向かって大きな開口部を設けた開放的な住居であるが、町に対して開き、またその開かれた中でどのように暮らしていくのかという実験的な要素を含め評価を得た。その他「向島の家」は道路に面した大きな格子戸を開けると大きな土間空間があり町に対して開かれた空間が設えていることが評価され、「小さな森に佇む家」は住宅と工房そして道に面したアルコーブ状の広場を設けていることで街並への提案がなされていることが評価され、最終選考に残った。一般最高得票は「勝瀬の家」で黒い切り妻の外観をもつ数棟が作り出すシルエットと街角に開かれた広場が印象的な作品である。

 

ロングライフ部門 杉浦伝宗審査員
「カフェ・スイート.三期にわたるリノベーションで築35年の家を住み継ぐ」が授賞作品。住宅は5年周期で住まい方が変わるので何らかの手を加え続けることが必要、と住宅に長く関わり続け自宅で実践し続けてきた杉浦氏の説明があった。
建築家が設計した住宅が10年以上経つとどうなるのかという視点ではないが、35年に渡り使い続けられた住宅がライフスタイル変遷と共にカフェにコンバージョンされたり、内部の改装を受けたりし、一人の建築家がすべてに関わってきたという意味で使い方に対する提案として評価された。一般最高得票であった「母の家」は母親と同居するために改装したマンションの10年以上経った姿。マンションとは思えない落ち着きのある良質な空間が印象的である一方、12年前の改装直後の写真が無かったことで、現在に至る変遷が見られなかったことが残念であった。

 

以上各部門で推薦のあった36点を第3回家づくり大賞の第一次審査対象として候補に挙げ、審査員9名と当日出席していただいた20名の家づくりの会理事が投票した結果、6票以上の得票があった「快適-018|霧島町の家」「素材-008| JI-TEI」「作り方-005|礫明.第一期」「作り方-007|RICO」「リノベーション-011| 農具倉庫をコンバージョンした家」の5作品を二次審査の対象とした。
続く第二次審査では「作り方-007|RICO」14票と「リノベーション-011|農具倉庫をコンバージョンした家」15票を得た二作品の得票数が一票差であったため、 最終投票を二作品にしぼって行ったが、結果は同票となり、この二作品を第3回家づくり大賞授賞とした。

 

第3回家づくり大賞実行委員長 諸角 敬