第4回家づくり大賞_公開審査を終えて(総評)

公開審査会風景今回はいままでの3回と違った形、「こだわりの」を入れて「第4回こだわりの家づくり大賞」として作品を募集、審査しました。
去年の夏、会が「こだわりの家づくりアイデア図鑑」をエクスナレッジから出版したのをヒントにしたのですが、数あるコンテストの中でより特徴を持たせ、より家づくりの会の賞にふさわしいコンテストにするための試みです。
結果的には各部門で意欲的なこだわりを見せていただき、また例年のように東京、大阪からだけでなく地方の方にも多数応募していただきベテランから若手まで幅広く応募していただいたことを嬉しく思っています。
審査は家づくりの会の会員による投票と一般の方からのネットを通じての投票の二本立てとし、各々部門賞と大賞を選んだのは例年通りです。
家づくりの会の設計者も同じ土俵の上で一般の人からの評価をもらうかたちにしましたが、会員による審査対象からは外しています。
では各賞で高い評価を受けた作品の解説を簡単に行いたいと思います。


建物のかたちと構造部門
27作品の応募があり、そのうち家づくりの会の会員を除く22作品を審査の対象としました。
うねる天井をデザインした「森を望む家」、力強い構造を表現した黒崎敏氏の2作品「WRAP」「LE49」、少々強引ながら魅力的な平面形を作り出した「回遊するひとつながりの家」を中心に議論が進み最終的には形の面白さから「回遊するひとつながりの家」が受賞作品となりました。
黒崎氏が二作品を応募していたため票が割れてしまったのは残念でした。
一般投票では「中間領域をもつ家」が最多得票でしたが、会員の中では前面ガラスのリビングは暑そうとの意見が目立ち一般投票との意見が割れた評価です。

 

間取りや動線部門
同じく22応募作品のうち会員の作品を除く14作品を審査の対象としました。
家を縦断する土間を持つ「通り土間の家」、非常に美しい作品「動線がひとつながりになった美術館のような家」、3本に分かれた平面形の中央部分が畳の部屋でいかようにも使えるユニバーサルな提案をした「Inari house」を中心に議論が進みましたが、「通り土間の家」では土間が通り抜けになっていない点、美術館のような家は他部門での応募の方が良かったのではないかとの意見も出て今までにない斬新でユニバーサルプランを提案した「Inari house」が受賞です。
一般投票では「いきどまりのない家」が最多得票でした。

 

片付く収納部門
7作品の応募と数は少なかったが魅力的な提案がありました。
「柱型/梁型」はマンションの改装という限られた条件の中で優れた提案を行い、普段脇役になりがちな収納を主役にした逆転の発想が高く評価され受賞となりました。その他、洗濯動線を中心に考えられた「ママに優しい家」、見せる収納の「楽しく収納する」など議論に上りました。
一般投票では会員投票でも議論にも上がった「楽しく収納する」です。

 

素材部門
12作品中9作品が審査の対象です。
会員の議論は「無垢材にこだわる」「左官の可能性」の二作品に集中し、「無垢材にこだわる」では無垢材のみならず隅々まで行き届いた作者のこだわりの納まりが共感を呼びました。一方、左官の可能性としてデザイン的な方面からだけではなく、蓄熱と調湿を活かせるような断面計画を地域性を生かしながら実現させた案が高く評価され、また一般投票でも最多得票を得てW受賞です。

 

設備部門
10作品中審査の対象作品は4作品です。
BBQセットを半屋内化した場所にした例の「BBQセット」やエアコンによる床暖房の「エアコンによる床暖房にこだわる」、光と風をデザインした「光と風が抜けるかたち」、ローコストな照明の提案した「美しくローコストな照明にこだわる」などで議論しましたが、今までに見たことのある提案であったり、提案のようにうまく機能するのかなど厳しい意見が出て、残念ながら該当作品無しとなってしまいました。
一般投票では「光と風が抜けるかたち」が最多得票で受賞です。

 

もっと細部部門
22応募作品のうち12作品が家づくりの会会員からのもので部門別では一番多かったのが印象的です。
「皮と真鍮のシンプルな洋服掛け」は簡単ながら贅沢さを感じさせる細やかなデザイン、「家族の距離感にフィットする回るテーブル」は既存の建売住宅への小さな提案ながら面白さと便利さ、「既成型で組み立てたスッキリサッシ」では既製品を使いながらそこに込められた作者のこだわり、「風景の雨樋」のユニークな発想などを中心に議論されましたが「影をつくらない本棚」の簡単ながらあまり気がつかれなかったことに対してのこだわりが評価され受賞となりました。
一般投票では「既成型で組み立てたスッキリサッシ」が最多得票で受賞です。

 

環境部門
15作品応募のうち10作品を審査対象としました。
一般投票では「風の通り道」が55票とダントツに多く受賞となりました。この作品の他「閉じながら開く家」の竪格子による庭空間の閉じ方、「森のLOFT2544」では読み取りにくいですが写真から伝わってくる穏やかで優しい空間、「内と外のあいだ」は大胆なマンションの改装などが主に議論の対象となりました。そのなかで一般的なマンションでは法的に不可能ながらも「内と外のあいだ」の大きく室内に入り込むベランダ空間をとって、集合住宅の空間の新たな可能性を示したことが評価され受賞となりました。「Arakabe」への評価も高かったのですが素材部門ですでに受賞している作品であるためこの部門での受賞とはなりませんでした。

 

外回り部門
16作品中8作品を審査対象としました。
そのなかで魅力的な外部空間を作り出している「SHEER DROP」、逆転の発想で北側に庭をとった「明るい北側の庭」、京都の町屋でありながら大胆に外部空間をとった「外部空間の居住性「庭ニ居リマス」」の三作品が議論の中心となり、「明るい北側の庭」の優れた断面計画と借景の発想が評価され受賞です。
一般投票部門の最高得票作品は「カーポートをまたぐアプローチ」です。

 

 

2015家づくり大賞

以上の各部門での議論を踏まえ対象にふさわしい作品を議論しましたが、素材部門、環境部門で左官の新たな可能性を高く評価されていた「左官の可能性」では左官を単なる伝統素材というだけでなく環境装置として断面計画も含め計画された優れた作品と意見が一致し、大賞に決まりました。


今年は少し視点を変え設計者がこだわりを持って考えた細かなところでも評価できるように応募要項を変えたのですが、おかげさまで多くの設計者が色々な箇所でこだわりを持って設計した作品が集まりありがとうございました。
すでにお伝えしている通り、受賞を逃してしまった作品を含め、作者のこだわりが共感できる作品を集め「こだわりの家づくりアイデア図鑑」続編をまとめていこうと準備を進めていますのでご協力お願いします。
また、今年から応募要項を少し変更したため同じ作品が複数部門に応募ができ、また同じ部門に複数の作品を応募することができるようにしました。そのため審査にあたり設計者が明らかに損をしていると思える問題点が出てしまいその点は反省し改良していきたいと考えています。

 

第4回家づくり大賞実行委員長 諸角 敬