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大きな自然 ── 北千束の住まい

 母屋の庭を借景に緩い斜面に沿うようにスキップフロアの空間が広がる、コンパクトでシンプルな住まいの、上棟式での忘れられない出来事である。
 百歳になる第一世代のご主人が、孫家族の新居の棟上に感激、一作歌を作ったという。ところが詠んだ歌を書いたメモを母屋に置いてきたと言って、スッと席を立ち現場の段差や障害物をものともせず、だれの足でもない自分の足でスタスタと取りに行かれた。忘れ物をすると「あれ持ってきて……これ取ってきて……」とすぐスタッフを頼る自分が恥ずかしくなった。
 ご主人は、何事もなかったかのように息子や孫、ひ孫が待つ席に戻り、張りのある力強い声で詩を詠まれたあと、「百年も生きているとこんなにも良い日がある。いやぁ~愉快だね、みなさんありがとう!!」と感慨深げに語った。その姿はまるで皆を包み込む大きな自然、太陽のようだった。そんなご主人と、若さ溢れる息子さんご夫婦、お孫さん夫婦、2人のひ孫の大家族に囲まれた僕たちは、どの顔も穏やかで優しい笑顔になっていた。
 ご主人は隣にピタリと座ると僕の左肩に手を回した。ビールを飲み交わしながらいろいろお話をお聞きした、どの話もジンワリと体の芯まで染み渡るもので、僕の背中は次第に丸く小さく小さくなるばかりだった。

大きな自然/北千束の住まい
リビングから窓越しにデッキ、母屋の庭を望む。

大きな自然/北千束の住まい
玄関ホールからリビングを見る。