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HT-ハウス

 私どもは、夫婦で設計をしています。独立前、私は坂倉建築研究所という建築家の集合体のようなところで、商業施設や集合住宅などの大型施設を手がけていました。妻は室伏次郎さんという住宅作家のところで木造を多く担当していました。二人で設計事務所を開くにあたり、自分達の強みは互いを補完し合うことだと思っていましたが、やればやるほど住宅設計の奥深さを感じています。
 上の写真は、開設して間もない頃、無我夢中で取り組んだ住宅で、ダイニングからリビング越しに玄関ポーチを見ているところです。
 この住宅は、既存の木造住宅を全面リニューアルかつ増築するというものでした。
 既存住宅の一番具合の悪かったことは、人通りの多い道路に対して玄関が正面を向いており、扉を開けたら、通行人と目が合ってしまうどころか内部まで見通せてしまうということでした。
 そこで、玄関扉の向きを90度替えて道路と正対しないようにし、長さ1間半の玄関ポーチを道路と平行に設けました。その玄関ポーチには上屋があり、木の天井を張っています。また、人通りの多い前面道路との間に「閉じた表情の壁」を立てて、ここにも木の小巾板を張りました。そして、ポーチに隣接するリビングとの間に3本のサッシを入れ、リビングと連続した空間に仕立て上げました。
道路からは「閉じた壁」によって中が見えにくくなり、リビングとポーチの間はカーテンで閉め切る必要がなくなります。リビングの方からはポーチまで広がって見えるので、室内側の開放感が生まれてくるという仕組みです。
 通常、玄関ポーチは外部に属するもので、内部を見通せるものではありませんから、結果として「逆転の発想」とも言えます。ですが、私たちは「一つ一つを基本に戻って再考」しているだけなのです。

HT-ハウス
正面突き当たりに見えるのが「閉じた表情の壁」。玄関ポーチを閉ざすことで、リビングの開放感が得られます。