家づくりレポート

大磯の家

 駅からの急な坂道を15分ほど歩いて、ほぼ登り切った所にこの家はあります。敷地からは眼下に相模湾が広がり、天気の良い日には遠く大島や伊豆半島まで眺められます。周囲には木々が茂り、まるで別荘地のようです。この恵まれた景観をどう空間に生かすかが、設計の大事なテーマとなりました。
 海に向かって大きな窓を開ければ景色はよく見えますが、それがそのまま屋内環境の快適さに結びつくとは限りません。ここではあえて窓の大きさに限って、絵画の額のように景色を切り取って見せる事にしました。そしてそれぞれの窓から、生活の様々な場面でそれぞれの景色が得られるように、家の中のどこからでも海への眺望や周囲の緑が目に入るように計画しています。
 建物の形は、敷地の形になじませながら海とアプローチの坂道の正対させるために、四角形の一辺をつまんで引っ張ったような、野球のホームベースのような平面になっています。鈍角の角の所は屋内に吹き抜けになっていて、斜めの壁が小さな空間を生み出しています。屋内の壁は珪藻土の左官仕上げです。窓から差し込む海辺の強い光は時間と共にうつろい、壁に反射して拡散し、柔らかく室内を満たします。
 敷地も家も広くはありませんが、外部との関係を注意深く作ることで、広がりのある豊かな空間となっています。

大磯の家
リビングの窓は障子も全て引き込む事ができます。

大磯の家
2階ホール。正面は寝室。どの場所からも周囲の緑や海の眺めが楽しめます。

新丸子の家

題名が示すように、この家は私が今まで設計したなかでも事務所から一番近い家です。なんと歩いて数分、ラッキー!!

 クライアントはスコットランド人のご主人と日本人の奥様。さらに男の子2人。ご主人は全く日本語が話せませんでしたが、奥様の助けとブロークンイングリッシュで何とか乗り切りました。ご主人曰く、自分の英語(なまり強し!)でアメリカ人とコミュミケーションするのはかなり大変だそうです。ちなみに今までに私のクライアントで外国の方は、中国人の奥様、イタリア人の奥様、アメリカ人のご主人、中国人のご夫婦などがいらっしゃいました。

 さてこの家に関しては打ち合わせの初期でとても驚くことがありました。どのような外観の家がお好きか というようなお話だったと思いますが、ご主人がi-podで撮られた写真を私に見せて、「こんな家が好きだ」とおっしゃる訳です。見せていただくと私が設計した家が映っています。当然私のHPを調べて(どうやってか分かりませんが・・・)写して来たのだろうと思いました。でも話をするとそんな事は全く知らず、道路を走っていて気になったので撮ったとの事(その家も駅で3つ位の場所ですが)。僕は思わず得意の英語でいいましたね。You’re kidding!(冗談でしょ?!) だってそんな事あり得ます??? いくら駅3つ位の範囲と言ったって家の数は???? その中から私の設計した家の写真を撮るとは! その瞬間これはもう運命的な出会いだと確信しました、お互いに。おかげでその後は私の提案をほぼそのまま受け入れて下さり、とてもスムーズに設計が進んだことは言うまでもありません。

 近隣商業地域の防火地域だったため木造で作る事が出来ず、コンクリート造か鉄骨造の選択肢しかありませんでしたが、地盤が悪かった為コンクリート造はあきらめ鉄骨造3階建てとなりました。2階のDKがこの家の中心で、シェフになれそうな腕前のご主人が一番好きな空間にもなりました。去年の1月に初めてお目にかかり、今年の7月に引き渡したばかりのまだほやほやの新居です。

新丸子の家
好きだ! とおっしゃった家に似ていると言えば似ていますが・・
やはりこれはRさんの家です。

新丸子の家
2階のDK。いつものようにキッチンは作り付けで、
背後にはキッチンと共材の巨大な収納を作りました。

緑地沿いの家

北に緑地、南に畑と都市部ではめずらしく南北に眺望が開ける土地。それを最大限に生かすため居住スペースを南から北へ筒状に抜けるような構成としました。玄関、階段、水廻りは、寄り添うように半階ずつずらし、コンパクトにまとめています。施主さんのご希望は”毎日が別荘生活”でした。そのご希望に沿える家ができたのではないかと思っています。


北の緑地を眺めることができる窓。


玄関と半階上がった書斎


緑地の桜に手が届く木製デッキ

トオリニワの家

今度はトオリニワの家を紹介します。またしても素人の写真なのでお許しください。
3月に竣工したばかりのもので、13日14日2日間オープンハウスを行ったものです。出来立てほやほやです。オープンハウスは13組18人ばかり集まり盛会でした。皆様本当にありがとうございました。

2 年ばかり前、始めてあった施主の印象がこの家のすべてを決めたと考えます。私の事務所にご夫婦でオートバイで乗りつけたこと、話の内容、話し方それらがプランをまとめる上でキーポイントになりました。敷地を見たときのインスピレーションも最後まで持続することになりました。つまりこの家のタイトルトオリニワのある家はここで決まりました。

土足のまま裏庭にいけることは海が好きな湘南の方にとっては便利と今も思います。そしてこの家の特徴はなんと言ってもトオリニワ沿いに地窓を設けていることです。いつも足元が見られているという感覚あるいは心理状態は建てぬしもちろんのこと訪問者にとっても刺激的と考えてます。建物が浮いた玄関の庇から始まり家に入るまでの映像効果はあると考えます。

ここ地窓沿いのガーデニングは施主が自分で行うようですが、ぜひ思い思いにしてほしいと思います。
トオリニワは下足入がありません。すべて踏み込みの上がり框の下をその置き場と考えています。約20足が並列に入ります。しかし設計中やはりこれだけでは足りないと考えられ、最終的には地窓の上全部を収納壁として使っています。
トオリニワに面して廊下があり先は12畳の和室が客を迎えてくれます。この和室は2部屋に分けることができるようになっています。畳廊下を介して奥の間に入れます。当初この部屋はフローリングで考えていましたが、施主の要望を聞くうえで、そして家のしつらえとして、1階は和的空間2階はモダン空間という図式でいくことにしました。ここでちょっと予断ですが私は学生の頃、堀口捨巳の建築が好きでした。彼の設計した家の中で岡田邸にものすごく興味を引かれたことを思い出します。1枚の壁を介して一方が和の空間一方がモダン空間ということを表現しています。どちらも捨てられない状況を素直にアンビバレントな形で表現しています。話を戻して言えばトオリニワという日本の町屋が持っている言語に組みやすい和のテーストで1階をまとめるのが素直な考えと考えました。
一方2階はモダンに徹しました。2階は天井高3.6メートルでロフトがオープンな形で付いています。ロフトからは桜山の山並みが一望できます。桜のシーズンは見事な山桜が咲くと聞いています。

五枚屋根の家

閑静な住宅地の角地に建つ住宅です。道路面は低い軒先による水平線を作ることで周囲への圧迫感を抑え、車庫、廊下、居間、2階建て部とレベルの違う屋根面を徐々に重ねて行くことで奥行き感を与えました。プランは広々とした中庭を中心にしたコの字型ですが、大きく開いた南面のプライバシーを確保するために、中庭より80cmほどレベルを下げた低い屋根の駐車場で通りからの視線を遮りながらも居間からの視界を極力妨げない断面構成としました。各室からの景色は、中庭だけではなく通りからセットバックした部分を小さな庭として見せることで単調にならないよう配慮しました。また、廊下沿いに設置された水盤のゆらぎの反射光や居間とパウダールームに設置された特製のステンドグラスから透過する光が時間の移ろいを演出してくれます。

若葉台の家

photo:青葉台の家_外観
 レンガ色の住居部分と白壁のアトリエ部分、二つの箱を組み合わせた外観が、緑の多い街ととけ込んでいる。建築家・坂東順子さんが、地域の人たちが気軽に相談に来られるようにと設計した自宅兼アトリエだ。
 「外壁のレンガ色は、向かいの校舎の色が道のこちら側にも飛んできたようなイメージなんです」と坂東さん。室内は無垢の木材と、漆喰の荒らしもの仕上げ。高い天井と吹き抜けで2階とつながる、のびやかな空間だ。
 電線類地中化の街に土地を探して10年、ようやく購入できたのは東京郊外の「職住一致」という条件の付いた地区だった。
 道路と遊歩道、緑地に囲まれ、閉鎖的な塀を作らない取り決めの地域に、大きな木製サッシの開口部(ペアガラス)と広いデッキをもつ、街に開かれた住まいを実現した。
 キッチンの隣に洗面所と浴室、洗濯機など水回りを集中させて働きやすくした。
庭木の手入れを自分たちで楽しもうと、土地の形状に合わせて建物を30度ほど南に振っている。これによって道路側から見える建物の奥行き、多面的な表情がこの家を親しいものに感じさせる。
 床、柱、家具の素材一つひとつに住み手の大切にしたいものが詰まった家だ。
                         (主婦の友2007年2月号より抜粋)

photo:青葉台の家_02
リビング入口からみたダイニングと右奥にキッチン。天井高は3.5mで一部吹き抜け、大きな開口部と白塗り壁で明るい。温水床暖房が敷設され、冬場の採光、夏場の通風によりエアコン使用は最小限で済む。

photo:青葉台の家_03
ダイニングからみたリビング。ソファーの後壁のみレンガ色。中2階への階段ステップ高は通常よりゆるやかだ。

photo:青葉台の家_06
アトリエ:打合せスペース。生活部分とは大きな高窓とデッキで空間的につながりつつ、床を15cm低くしてデッキとの段差をなくし、道路側からも出入りしやすくなっている。

photo:青葉台の家_05
右奥の中2階が子ども室、1m上がって書斎。手すりでお互いの領域を分けながら、1階とは1.2m幅の吹き抜けでつながり、風も音も感じられる一体感がある。書斎の窓からの眺望は、緑地と低層の街並みのため大きく開けている。

敷地面積:213.294㎡
1階:72.874㎡   2階:54.574㎡
延床面積:127.44㎡