家づくりレポート

参道の家14

参道の家14外観_松澤

開放的なバルコニーを2、3階にL字で、屋上にはもっと素敵な場所が!

大きな神社の参道沿いの敷地に建つ住宅です。
風致地区に指定された緑豊かな環境ですが、準防火地域でもあり、法的な規制のクリアが大きな課題となりました。
建ペイ率が40%のため、2世帯の家族の必要な部屋を確保するためには3階建てにしなければならず、今回は準耐火構造(一部燃え代設計)とする事で、木造3階建てで、出来るだけ木を露出させた家を実現する事が出来ました。

 

外部は周辺に合わせたモルタル塗りの上、塗装仕上げです。
バルコニーは出来る限り参道の木々の緑を楽しめるように開放的にして、特にロフトにつながる屋上のバルコニーからの景色は最高です。
参道から出入りが出来るギャラリーは、家族や友人たちと音楽を楽しんだり、庭でバーベキューを楽しんだりできて、先々は近所の方との交流の場となればと考えています。

 

玄関は参道と反対の東の通りにつながっていて、大きな木戸を開くとギャラリーのテラスともつながります。
アプローチから玄関はいつもの安田瓦の敷瓦を敷きこんであり、重厚な500年生の杉板の玄関戸に導きます。
内部は漆喰と木の仕上げになっていて、無垢の床板(桧・胡桃)+床暖房部分と、無垢の杉板部分が大半を占めています。お母さんのためのエレベーターが設けられ、生活空間の中心は2階となります。
夫婦と子供の個室は3階に、個性豊かな空間として設けられています。

 

1階のギャラリーの水廻り、2階のキッチン、3階洗面部分には建て主さんがじっくり選んだモザイクタイルが貼られ、いつもの木の家とはちょっと違っています。
ただし、栗の末口(細いところ)450ミリの1~2階の通し柱がやっぱりと思わせます。

参道の家14室内_松澤

障子を開けると参道の緑が飛び込んで来ます。

 

建築DATA

1階床面積 : 57.01㎡(17.25坪)                 〈家族構成〉
2階床面積 : 58.67㎡(17.75坪)                  お母さん+夫婦+子供3人
3階床面積 : 58.67㎡(17.75坪)
R階床面積 : 9.50㎡(PH、ロフトのため延べ床に含まず)
延べ床面積 : 174.35㎡(52.75坪)    
構   造 : 木造3階建て(準耐火構造)

[家づくりニュース2014年9月号掲載]

makinoki_House

makinoki_House室内_古川

お茶の間スペースから土間スペースを見る。


makinoki_House仕上げ_古川

構造用合板にペンキの仕上げ、木目がペンキの向こうに見える。

文京区千石に1400万円代で完成した、親子で暮らすための19坪弱の小さな木の家です。
玄関をかねた土間スペースはお茶の間スペースと建具で仕切られており、建具を開けることでリビングの延長として広く使えるようになっています。

 

さて、こちらの奥様、インドが大好き。
なんども出かけています。インドの民族衣装であるサリーに魅せられ、インドに行かれるたびにアンティークのサリーを少しづつ買い集めておられました。そして、そのサリー生地で小物を作ったショップをやりたいという夢を持っておられます。

makinoki_House外観_古川

夜景外観

この土間スペースは夢を叶えるショップとして使えるように考えています。

 

建物説明に進みましょう。
建物の骨組みは、品質管理された宮崎県産の杉材を使っています。
外壁はガルバリュウム鋼板の波板で、下地は構造用面材も兼ねてモイスを使っています。
断熱材はロックウールです。
室内の壁の仕上げは構造用合板にペンキを塗っています。これで、どこにでも棚がつれるカスタマイズ可能な壁が出来上がりました。構造用合板の木目もペンキの上から見えてなかなかきれいな仕上がりになっています。

 

今回の敷地は準防火地域ですから、窓のサッシュはすべて防火仕様となります。
サッシュの防火認定の見直しが行われ、ようやく新しい認定サッシュが出揃ったところなんですが、以前のサッシュに比べて2倍以上の値上がりとなりました。家一軒分で100万円近い増額になっています。
今回は防火仕様の新しいサッシュを使いながらの1400万円台の木の家ですから、コストパフォーマンスはかなり高いですね。

 

建築DATA

1階床面積 : 9.5坪                〈家族構成〉
2階床面積 : 9.0坪                 夫婦+子供2人
延べ床面積 : 18.5坪(他にロフト5坪あり)     
構   造 : 木造3階建て

 

[家づくりニュース2014年9月号掲載]

戸部の家/5M×5M House

戸部の家-①_石黒

LDKです。ロフトは開放的にしてLDKと繋がります。
道路に面した2方向は開口部を大きくし視線が抜けるよう検討しました。


横浜駅から1駅という都心に建つ小さな住宅です。
戸部の家-②_石黒

外観です。1階部分はサイディング、2階以上はガルバリウム鋼板です。建物の平面は5M×5Mで、高さは10M弱です。

敷地面積が35平米、コインパーキング2台分の大きさでした。

 

商業地域で準防火地域ですので、規制は緩く木造3階建てには有利な条件と判断しました。
建て主さんは木を現したデザインを好み、構造材を見せる設計を希望されましたが、コストと木造3階建ての条件では難しく、規制の範囲内でどれだけ木の柔らかいの雰囲気を出せるかをテーマのひとつとしました。
また小さな敷地でローコストですから、なるべく無駄なく合理的に設計することも重要なポイントでした。
完成してみれば床は杉の無垢材、壁は左官材料と木や自然素材が持つ暖かみは表現できたと感じています。

 

LDKを3階に設け、オープンなロフトとリンクさせることで、縦方向にも視線が繋がり、また道路に向けて大きな開口を設けたことで、開放的で視線の通る住宅になったように感じています。
ベランダがなくて洗濯物を干す事に工夫が必要だったり、3階のLDKまで、階段を上らないといけなかったり、通常の住宅よりは変則的な事が多いですが、大事なところを残し、省けることは省くという決断でかえってスッキリした暮らし方が出来るのではないかと感じました。
工務店さんの努力もあり、コストもほぼ希望通りに納めることができました。

 

建築DATA

1階床面積 : 13.29㎡ (4.02坪)           〈家族構成〉
2階床面積 : 25.00㎡ (7.56坪)            夫婦
3階床面積 : 25.00㎡ (7.56坪)
延べ床面積 : 73.76㎡ (22.31坪)     
構   造 : 木造3階建て

 

[家づくりニュース2014年8月号掲載]

wedge

wedge-①_水口

上り坂と下り坂が交差する敷地。鋭角に立ち上がった建物エッジが印象的な表情となりました。


敷地は横浜らしい観光スポットのすぐ近くで、観光客などの人通りの多い上り坂と住宅地へと下る急勾配の下り坂が鋭角に交差する三角州のような変形敷地。
公園などの緑も多い風致地区であるため色々な制限も多く、敷地面積を最大限に活かすために建物は敷地形状をそのままセットバックしたような形の地下1階、地上2階の鉄筋コンクリート造の住宅としました。

 

建物の使い方は定住するための住宅というわけではなく、当面は友人を大勢集めてのパーティや週末だけの宿泊などのゲストハウス的な利用として、将来的には建物の住居部分の賃貸住宅への転用や、建物の一部を店舗としても利用できるようになど、かなり複雑な御要望のもとに計画した住宅です。

 

街に対してそのエッジがそびえ立つような杉本実型枠コンクリートの荒々しい外観の建物ですが、少なめに設けられた開口部からは周囲の公園の緑や前面道路の桜並木、横浜の夜景などの眺望がうまく取り入れられてもいます。

 

wedge-②_水口

(左写真)桜並木の上り坂側から見る外観。     (右写真)外階段は住宅部への専用アプローチ。3層にわたる窓は木製建具。

 

建築DATA

B1階床面積 : 50.58㎡ (15.30坪)           〈家族構成〉
 1階床面積 : 50.58㎡ (15.30坪)            夫婦+子供2人
 2階床面積 : 50.58㎡ (15.30坪)           
PH階床面積 : 5.14㎡ (1.55坪)
 延べ床面積 :156.88㎡ (47.45坪)     
構    造 : 鉄筋コンクリート造、地下1階地上2階建て

 

[家づくりニュース2014年8月号掲載]

杣(そま)

写真:スパイラル/小林 浩志

外観は、杉板型枠コンクリート打放し仕上げに、一部栗の板材を貼って表情に柔らかさを出しています。

 

杣_2階和室

2階和室。開口部にはガラスのほか、障子とよしずの引き戸が仕込まれています。

この住宅の敷地は、高台の閑静な環境の一角にあり、公園と3面を道路に囲まれている。その3方向からの斜線制限と、北側からの高度斜線制限を受けています。

 

建物の形態は、これらの法規制限と、必要空間ボリュームから検討して、敷地形状をそのまま住宅の形にしました。
敷地のコーナーには、樹形の美しいモミジを植え、各階から公園内の桜の大木や木々と重ね合わせ、眺めることができるように考えました。

 

外観は、建築の表情に柔らかさを出すため、内外壁に杉板型枠コンクリート打放しを用いています。
一部外壁には栗の板材を貼って、コンクリート打放しになじむことを考えました。

 

構造は鉄筋コンクリート壁式造とし、内部空間から柱型をなくしました。
また、風通しが重要な課題でしたので2階の居間食堂では、1階から3階までの2つの階段をあえて見せることで、空間を縦につなぎ、高さ方向の通風を発生させるようにしました。
そして、出来るだけ深い庇のある外部空間を各階に設けて、雨除けと夏の日除けに役立たせるようにしました。
それらは建築の陰翳を醸し出すことにも寄与しています。

 

建物の外周には、塀を巡らせ、防犯とプライバシーを確保しましたが、道路境界線から20センチ程度後退させ、その部分にも下草を植え、塀に屋根を掛け、左官仕上げを用いることで、威圧感をできるだけ感じさせないよう配慮し、道行く人々にも楽しんでもらえるようにと考えました。

杣_2階リビング

2階リビング。ガラスの入った格子スクリーンの奥は、階段室を隔ててキッチンがあります。

 

建築DATA

1階床面積 : 11.72坪 (38.77㎡)           〈家族構成〉
2階床面積 : 19.84坪 (65.59㎡)            夫婦+子供2人
3階床面積 : 19.99坪 (66.09㎡)  
延べ床面積 : 51.56坪(170.45㎡)     
構   造 : 壁式RC造3階建て

 

[家づくりニュース2014年7月号掲載]

北上尾

写真:石井 雅義

北上尾_居間

「居間が中心」…居間が中心となって2階の子供室等の気配もわかります。


ご夫婦とまだ小さい男の子と女の子の四人家族の住宅です。

 

奥さんからの要望は「子供達が基本自分のことは自分で出来るようになること」

 

そのためにこちらが考えたことの一つは、幼稚園から帰った子供達が玄関ホール脇の手洗いで手を洗い、うがいをして、バッグを裏手の廊下のハンガーにかけて、その脇で部屋着に着替えて、居間に戻っておやつを食べる、という動線計画。

 

台所経由で冷蔵庫から牛乳を出して、おやつと一緒に居間に行くというサブ経路もあります。

 

おりこうさんな子供達はちゃんとこの通りに使ってくれているとのことです。

 

「お帰り」………家がぼんぼりのように街を照らします。
「コンパクト」…コンパクトな玄関ホール。正面の引き戸を開けると居間、右側の引き戸を開けるとシューズインクロークがあります。
「一休み」………2階廊下の途中に本が読めるベンチを設置しています。


建築DATA

1階床面積 : 62.33㎡(18.85坪)           〈家族構成〉
2階床面積 : 44.39㎡(13.43坪)            夫婦+子供二人
延べ床面積 : 106.72㎡(32.28坪)     
構   造 : 木造2階建て

[家づくりニュース2014年7月号掲載]

日野の家

撮影:篠澤 裕

日野の家-2階_荒木

2階吹抜けと奥様の活動コーナー。
智頭杉現しの柱に水平の棚板が取り付き、上り梁がリズミカルに架かる簡潔な内部空間となっている。


ご夫婦と母親の三人と二匹の猫のための住宅です。
敷地購入後、私どもに設計依頼をして下さいました。
細長い敷地で奥に低い崖があるので、長い間売れ残っていた土地だったようです。
敷地を初めて拝見した際にはとても恵まれている印象を受けました。
敷地内に李の木が生え、さらにその奥の敷地外の崖地には、様々の大きな樹木が生い茂っていたからです。

 

建物は木造2階建てにて計画しました。
コンクリートの縁石と板塀のアプローチを辿り、道路から少し奥まったところにある玄関引戸を開けると、土間とひとつながりの「椅子座」の板間の空間が広がり、その奥の「床座」の智頭杉の小上がりの板間の先に、庭の豊かな緑が目に飛び込んで来ます。

日野の家-階段_荒木

椅子座の板間と床座の智頭杉貼りの小上がりの先に庭の緑が見える1階。軽快な螺旋階段が上下階をつないでいる。

椅子座の板間には、ダイニングとキッチンがあり、道路側の平屋の居室(お母様の部屋)とも引戸で繋がっています。
中央付近にあるシンプルな構造の螺旋階段を上ると、上下の空間をつなぎ下階に自然光を届ける大きな吹抜けの周囲に、ご夫婦の寝室や

 

それぞれの活動空間が、あいまいに仕切られて配置されています。
2階のどの部屋からも南の庭とその先の樹木の緑が目に入ります。
それぞれに沢山の本をお持ちのご家族のために、1階全体と吹抜けでつながる2階の西側の壁面にとどまつのパネルにて固定の本棚を作りました。

 

この建物は、内部に智頭杉の柱・梁を「現し」にした力強い空間を持っていますが、この厚い板で作られた本棚も、柱や梁と一体となって、簡潔な内部空間を形成しています。

 

建築DATA

1階床面積 : 52.58㎡(15.91坪)            〈家族構成〉
2階床面積 : 37.75㎡(11.42坪)            夫婦+母親+猫2匹
延べ床面積 : 90.33㎡(27.32坪)     
構   造 : 木造2階建て

[家づくりニュース2014年6月号掲載]

方円汎居(ほうえんはんきょ)

撮影:齋部 功

方円汎居-室内_藤原

居間からダイニングと中庭をみる


方円汎居-外観_藤原

カーポートから玄関への階段

この家の完成は実は三年ほど前です。
昨年ようやく、一階が当初思い描いていた通りになり、順調のようなので、あえて今月の家に出すことにしました。

 

私たち住宅設計者の役割は、依頼者の個別の条件に合わせて、その方固有の住宅を考えていくことです。
しかしこの家は逆のアプローチを経ています。
中高層住宅がスプロール的に開発されて行く環境の敷地に対して、生活を守って行くために、どんな居住者にも当てはまる戸建ての住宅はどうあり得るのか、という点から考えてみました。
道路より低い敷地故に、湿気と集中豪雨の際の被害を避けるべく、居住スペースは一層持ち上げ、その分の費用増はそこで収益をあげられるように、最初は貸ロッカー、ゆくゆくはカフェに、と計画しました。
また周囲の中高層住宅からのプライバシイー確保のため、中庭を設け、自分の家の屋根越しの陽射しが、終日入る寸法の大きさで、形状も丸くしました。
他の、間取りや仕様、ディティール等も、個別性より、住まいとして必要なものを、原則誰にも無理なく受け入れられる在り様を意識し、細部をあまり決め込まず計画しました。

 

本来普通の形態のはずが、結果として、周囲に対し、極めて固有な存在になってしまいました。
居住スペースの下の一階は、最初貸しロッカールームとしていましたが、今はその一部を、当初の予定通り、自らが運営する、手作りパンも販売するカフェにされています。
夜は家族の生活を優先し、閉めているのに、一、二週間以上も前に予約が必要な程、盛況のようです。

 

建築DATA

1階床面積 : 50.26坪            〈家族構成〉
2階床面積 : 47.37坪            夫婦+子供2人
延べ床面積 : 97.63坪     
構   造 : 二階建て(1階鉄筋コンクリート造/2階木造)

[家づくりニュース2014年6月号掲載]

OPERA

書斎からの眺望


書斎をリビングに突出させることで展望感を高め、住まいの象徴となっている。

斜面の中腹に位置する旗竿形状型敷地に計画した2世帯住宅です。
ウィークポイントの多い傾斜地ですが、つくり方によっては良好な眺望を享受することができます。
趣味でオペラを歌唱される夫婦にとってウェイトの高かった要望は、
「防音性能の高い地下室を設けたい」、
「北東側の眺望を生かしたい」
というものでした。

 

既存の細長いアプローチには大きな高低差があり、隣地も高かったり低かったりといくつもの高低差がありました。
どこの相談先でも、
「建て替えには擁壁のやり替えが必至で多額な費用がかかってしまい、コストを要する地下室はもってのほか」
という回答だったそうです。
それ以前に地階の工事に必要な重機車両が入れません。
単なる土留め壁のやり直しに多額が投じられてしまうことは非常にもったいないと感じました。
そこでそれらを少しでも行わずに済む半地下の防音室に擁壁の役も担わす提案をし、周囲の高低差測量を行うことから計画がはじまりました。

アプローチ夜景




 

地下室の設定レベルからはスキップフロア形式が効率良さそうです。
しかし最上階の一角にある3帖の書斎スペースは眺望が臨める東側に位置しません。
仕事を自宅の書斎にもち込まれることが多いと伺っており、ここも景観を臨める環境にしたいところです。
そして書斎の東側にあるリビング越しの外壁もガラス開口にすることで、こぢんまりと落ち着きを感じつつも開放的で気持ちよいという、相反する要素が同在する不思議な展望書斎が誕生しました。
                            

 

新しい建物は擁壁を兼ねたオペラルームの半地下レベルで入ることが可能です。
長い階段アプローチは緩やかなスロープに変わり駐車台数も増えました。
更には、旧家屋の解体工事や、基礎及び地下室躯体工事に必要な重機についても、想定よりも大きい(=作業性の高い)ものが入れることとなり、工事費用の節約に貢献しています。

 

旧家屋のアプローチ

 

建築DATA

敷地面積 : 187.15㎡ (56.61坪)           〈家族構成〉
建築面積 : 71.21㎡ (21.54坪)            両親+夫婦+子供1人
構  造 : 木造軸組工法一部鉄筋コンクリート造

[家づくりニュース2014年5月号掲載]

八王子・和の中心の家

撮影:石井 雅義

大きな広間は縁側や出入り口とつながって、あけっぴろげ。


出入り口はL型に開放できて大勢の靴や荷物が並ぶ。

一緒に住むのではなくて、敷地の一部に「建てたらどうだい?」と親から、愛のある声をかけられる子世帯の住宅が増えました。
スープの冷めない距離というやつでしょうか。
八王子に建つこの住宅はそんな要素も含みながら、さらに経営する数店舗のコンビニエンスストアの従業員も集まって来ます。
従業員たちで草野球チームをつくっていて、それが絶妙なチームワークを成り立たせていて、スタッフみんなが積極的に頑張るすばらしい店舗経営の源になっています。
ですから、この住宅はいろんな方面の「和の中心」という役割を担っているのでした。
大きな声じゃ言えないけれど、鍵もかけない(笑)。
大きく開放していて、近所の人も寄っていくし、野菜も置いていく。
野球から泥だらけで帰ってきたチームのメンバーがシャワーを浴びて、その後子供も含めた大勢で宴会がはじまる。
台所は誰でも入って、料理が得意な人がつくる。
手が空いた人が片付ける。
従業員たちは家族のようなものとして、爽やかに「体育会系」の関係性の中で日常生活が営まれています。
大勢を許容しながら家族4人の暮らしもあって、風呂敷みたいに大きくても小さくても用が足りることが望まれました。
家具はなるべく置かずに、大勢にも対応できるように大きな座卓だけ創りました。
床はゴロンとなっても気持ちのいい柔らかく厚い杉板にして、庭とつづく半屋外の縁側とつながっています。
縁側は野球チームの泥んこの荷物を置く役割もあり、汚れたままシャワーに直行できます。
広くてL型の出入り口は、いっぺんに多人数の出入りが可能です。
夏は全開放、冬は障子よりも丈夫なダンボール状の鏡板が入った建具を閉めます。
といった訳で楽しい住宅ができたのですが、問題がありまして…
それは、なかなか人が帰らないこと! 
時間が来たら「蛍の光」が流れるような設計しないといけないかなあ。

 

建築DATA

1階床面積 : 76.76㎡(23.21坪)           〈家族構成〉
2階床面積 : 44.07㎡(13.33坪)           夫婦+少年×2+高齢ウサギ×1
延べ床面積 : 184.00㎡(55.00坪)     
構   造 : 木造2階建て

[家づくりニュース2014年5月号掲載]

桜川の家

2階のLDK。東側の通りに向かって大きな開口を設けているのが特徴。


公園の近くに2世帯の住宅をつくりました。
依頼を受けたのは息子さんからで、大学で建築を専攻していたといいます。

 

その彼から最初に言われたことが
「完全別居の2世帯です。
 玄関を行き来するぐらいはいいのですが、互いのプライバシーを大事にした作り方にしてくださいね。」
建築家という人たちは、建て主さんが望んでいないことでも「こうしたらどうですか?」とサプライズ提案を出すことがあるのを知っているからなのでしょう。

 

設計工期の短い中で時間を無駄にしたくないという思いから、初対面の私に対して、念押しされたのだと思います。

工事の進行中、現場をしょっちゅう見に来ていたお父様。
「1階のうちのほう暗いんじゃないかなぁ。
 息子たちのほうって2階で明るいよね。
 孫の世話は上でやることにするよ。
 息子のところは24時間空調だし、息子たちの留守番でちょうどいいからさ。」

 

法規上の採光計算はやっているので、そう滅多な事はないのですが、周りの状況によっては思った以上に暗く感じることもあります。
仮囲いシートがはずれる前とはいえ、私も内心、どきどきでした。

 

1階のLDK。手前の掘炬燵のあるところが仏間兼居間。
奥にキッチンとダイニング。

工事の終盤に入って仮設シートがはずれたとき、1階にはしっかり光が入り込み、お父さんの心配は払しょくされました。
もちろん、2階はもっと明るい状態。

 

つい先日伺ったら、一家団欒の食事は、お母さんとお嫁さんが交互に作り、1階で食べたり2階で食べたりしているのだそうです。
互いが本当によく行き来しています。

 

それだけ仲が良いのだったら、お互いの領域をもう少し絡ませても良かったかも知れませんね。

 

建築DATA

1階床面積 : 97.25㎡(29.42坪)           〈家族構成〉
2階床面積 : 101.65㎡(30.75坪)           両親+夫婦+子供2人
延べ床面積 : 198.90㎡(60.17坪)     
構   造 : 木造2階建て

[家づくりニュース2014年5月号掲載]

若林の家

若林の家_室内01

ロフトからリビングを見下ろす。窓の向こうには、ルーバー手すりで囲われたバルコニーと花壇。


密集地に建つ3世代6人家族の住まい。
一般的に、家族の人数に応じて部屋数も増え、各部屋の広さも限られてきます。
特に密集地で斜線制限が厳しい場合は顕著です。
そこで、なにか特別な建築表現や構成を追い求めるのではなく、これまで大切にしてきた通りに、設えや納まりと言った、生活の背景を丁寧に設計することを心がけました。
リビングは採光と通風に優れた2階にあります。
2階リビングの利点は、高い天井をつくれること。
ここでは、切妻屋根のかたちに合わせた船底天井としました。高いところで3.6mあり、ロフトともつながっています。
このように天井を高くすると、実際の面積以上の広がりを感じられるようになります。
リビングの窓先には、背の高いルーバー手すりで囲まれた少し広めのバルコニー。
テーブルと椅子を置ける程度の広さです。
また、屋上緑化システムを使ってつくられた花壇もあります。
好みの草花を植え、ルーバー手すりにはつる性植物を絡ませて緑のスクリーンとなる予定です。

 

家の各所にほどこした設えの一部もご紹介します。
玄関まわりでは、玄関扉やポスト口などを木で一体につくりました。
まとまりのあるデザインとすることで、木や漆喰などの素材をより純粋に楽しむことができます。
内部には同じく木でつくり付けたベンチがあって、差し入れられた郵便はその上に出てくる仕組みになっています。
寝室として使う和室には、障子とは別にガラリ戸を設けました。
夏の夜に窓を開けて寝るための工夫です。
やわらかい光が室内を満たし、揉紙を貼った収納、漆喰壁との相性も良さそうです。

若林の家_玄関

玄関内のベンチ。波板ガラスの下がポスト口になっています。

若林の家_和室

モダンな雰囲気の和室。ガラリ戸は壁の中に引き込むことができます。

 

建築DATA

1階床面積 : 13.78坪           〈家族構成〉
2階床面積 : 18.22坪            夫婦+子供3人+母
ロフト面積 : 6.29坪
延べ床面積 : 38.29坪     
構   造 : 木造2階建て

[家づくりニュース2014年4月号掲載]