【 100坪以上 】

(学)わらべのこころ・小平あおば幼稚園「森しんしゃ舎」

写真:多田 ユウコ

南正面外観_倉島

朝のお遊びの時間。約20m角の建物です。 左右対称で少し堅いイメージですが、実際は背も低く抑え、かわいいボリュームで、周囲にも気を使っています。 2階の腰壁まで杉板を張り、昔の小学校のようでもあります。


1990年から1994年にかけてデザインさせていただいた埼玉県入間市の「あんず幼稚園」をみてご依頼いただきました。
20数年前のものを見て気に入っていただくって、嬉しいお話です。
遮ることの無い連続した空間、外から中を通り抜け再び外に出る内外の繋がった空間。
数年にわたる増築から生み出された迷宮空間。ここで繰り広げられる子供たちの生活ぶりが、幼児教育の共感へと繋がったようです。上手に使いこなしていただいた結果ではあるのですが、、、。

 

内部中央遊戯室_倉島

北保育室から中央遊戯室〜エントランスを見る。2階ハイサイドライトから陽射しが木漏れ日のように床を照らします。床は30mmの杉フローリング。低温乾燥材なので優しい風合いが残っています。この材料にすることで床暖房は採用しませんでした。でもとっても暖かい。子供たちはみんな裸足になってしまいます。

1951年、前理事長によって小さな幼稚園の種が蒔かれました。
小さな小屋から始まった幼稚園。
途中、小学校の廃材を再利用して作られた園舎に変わり、60年以上がんばってきました。東日本大震災にも耐えましたが、耐震改修をしなければならず、建て替えに至ったのです。
東京都の助成金事業になっています。

 

新園舎は武蔵野の森を再現するように、大きな材木で、包まれるようにデザインされています。
森のような空間
こども達は森の動物たち、虫たち、鳥たちのように自由に元気良く飛び回ります。木のぬくもりと明るい陽射しの中で新しい歴史が作られていきます。近所には卒園生もたくさん住んでいます。孫のいる卒園生もいます。
時々立ち寄ってくれます。そんな卒業生の記憶も消さぬよう、既存園舎の床に使われていた材料は、新園舎の腰壁に再利用しました。
国産杉の大きな梁と柱は全国探し回ってやっと手に入れました。

 

小さな土地になんとか基準を満たす園舎。
あんず幼稚園が外に広がる空間に対して、こちらは中に広がる空間になっています。中央の広場のような遊戯室は、木漏れ日の落ちる森の中の原っぱです。

 

森のようにゆっくりと時を刻んでいく新しい園舎です。

 

建築DATA

1階床面積 : 362.22㎡(109.57坪)     構  造:木造2階建て
2階床面積 : 164.10㎡( 49.64坪)     用  途:幼稚園
延べ床面積 : 526.32㎡(159.21坪)

[家づくりニュース2016年6月号掲載]

巣立ちの家 ー重度障碍者のためのケアホームー

設計:ハル建築研究所+伊澤計画  撮影:テックフォト

巣立ちの家-外観_伊澤

外観:リビング、デッキは地域に開くように。

 

巣立ちの家-デッキ_伊澤

外でも過ごせるまとまった大きさのデッキ。

はじめまして、この5月に入会しました伊澤淳子ともうします。
先輩方の中で、まだまだ未熟ですが、柔軟にお施主さんと家づくりに取り組んで行きたいとおもっております。
墨田区で設計事務所を始めて6年目になります。
この3月に2軒長屋の半分をリフォームさせて頂き、自宅兼事務所としました。

 

今回の紹介させて頂く建物は、住宅ではなく、障碍者のケアホームです。
男女上下階に重度の障碍をもった方5名ずつが入居しています。

巣立ちの家-廊下_伊澤

2階の廊下、ハイサイドライトで明るく、風通しよく。

親御さんが高齢になり、将来のご子息の生活に不安を抱かれていたところからこの計画が生まれました。
敷地として、緑のある少し離れた広い場所も検討されましたが、住宅街の中で、なるべく小さな規模で近所の人々に見守られながら生活していくことを選ばれました。私が設計に入ったのは丁度その頃からでした。
ご父兄も職員や私たちと一緒に、他の施設の見学や、施設職員の話を聞き、各ご家庭でのそれぞれの生活スタイルも伺いました。
建物裏に避難用滑り台を設置しました。法律では設置義務はありませんでしたが、2階に暮らす車いすを使用する入居者には重要な避難経路です。
リビングは日当りもよく、デッキを介して地域に開くように、配置しました。
(道路側には塀をつくらないことにしました。)
外でも過ごせるよう、デッキはまとまった大きさを取りました。施設ではなく、住まいであることを強く意識し設計しました。
彼らの体は敏感で体調不良を起こしやすく、内装は自然素材を使用しました。
壁は漆喰、床はコルクタイル、居室は無垢のカラマツのフローリングに自然塗装材を使っています。

 

初めて、親元から巣立ち、新しい生活が始まっています。
そのときの不安やドキドキ感はみんな同じことでしょう。
最近は親御さんが訪れても、お客様扱されてしまい、入居者の自立を喜ぶ反面、複雑、とのお話も伺いました。

 

建築DATA

1階床面積 : 169.02㎡(51.12坪)           〈入居者〉
2階床面積 : 180.15㎡(54.49坪)            男女5名ずつ、計10名
延べ床面積 : 349.17㎡(105.62坪)    
構   造 : 木造2階建て

[家づくりニュース2014年11月号掲載]