【 50-60坪 】
■ 厚木の家 ~ 四世代をつなぐ平屋の家 ~

四世代が集まる25帖の居間、食堂、キッチン。

世代をつなぐ通り土間。子夫婦の趣味土間から玄関方向を見る。左がストーブ土間と中庭。
四世代、両親+夫婦+子夫婦+孫の七人家族と二匹の愛犬のための家です。
寄せ棟の屋根が変形コの字型に庭を囲み、各世代がお互いに適度な距離を保ちつつ仲良く暮らせるように部屋を配置しました。
玄関から薪ストーブのある居間、そして庭へと続く通り土間は、世代をつなぐ路地の役割を持ち、中庭を室内へと導き離れの和室へと続きます。
高齢者と愛犬のために玄関から庭の木製デッキまでは土間を介して段差のないバリアフリー空間とし、祖父母の部屋は水廻りと家族の集まる居間の近く、陽当たりの良いところに設けています。
通り土間には、栃木産の芦野石を敷き詰め、室内床は無垢のスギ板、壁は漆喰で仕上げたことで、やわらかい空間に仕上がりました。
中庭と北庭には施主さん自ら選んだ季節を感じられる樹々を植え、主要な窓には大きな木製建具を使うことで、周囲に配された植樹をより身近に感じることができます。
10年前、施主さん夫妻のために山梨に建つ週末住居を設計していて、この家は二件目の設計依頼となります。
そこで使った太陽熱を利用した床暖房システム「そよ風」と薪ストーブをこの家でも採用することにより、52坪の広い家全体をまんべんなく暖めることができるようになりました。
大家族が一つ屋根の下で暮らす日常。
世代が移る数十年後、そしてその後も同じようにこの家での暮らしが続いてくれればと思います。
建築DATA 1階床面積 : 171.90㎡( 52坪) 〈家族構成〉
敷地面積 : 595.04㎡(180坪) 夫婦+両親+子夫婦+孫
構 造 : 木造平屋建て
[家づくりニュース2015年12月号掲載]
■ 古家をリノベーションした「CafeHouse」

「カフェリビング」:かつてあった床柱と棚を残しながら、窓辺に腰掛けられるベンチやキッチンと対面するカウンターなどをつくり、人が集い、くつろげる空間をつくりました。

「二階の部屋」:壁と天井を緩やかな円弧状につなげることで、柔らかく包まれるような居心地を求めました。
この家も「街に開かれたスペース」のある京町家のリノベーションです。
「カフェハウス」と名前がついていますが、使い方はなんでもいいのです。自宅でお店を開きたい、アトリエで製作活動をしたい、仕事の打ち合わせもできるオフィスを自宅に持ちたいといった、家で仕事をするライフスタイルにふさわしい家です。
不意の来客でもプライベート空間を気にせず接客ができたり、友達と時間を気にせずゆったりお酒を飲んだり、そんな使い方のできる空間を「カフェリビング」と名づけました。
近代の産業化社会になって、職業の専門分化がすすみ、生業が家の外にどんどん出て行ってしまいました。と同時にかつては当たり前のように住まいのなかにものごとが失われ、失ってみて初めてその大切さに気づく、といったことを私たちは繰り返しているようにも感じます。
その大切なことの一つが人と人とが出会い、対話し、そこで人の心に変化が生じることだと思います。
建築DATA 敷地面積 : 54.79㎡(16.57坪)
建築面積 : 46.30㎡(14.00坪)
延べ床面積 : 63.27㎡(19.13坪)
構 造 : 木造2階建て
用 途 : 店舗併用住宅
[家づくりニュース2015年10月号掲載]
■ 宇須の家
旧市街地・和歌山市宇須にての建て替え
撮影:長岡 浩二

ファザードから玄関・中庭に続く庇。
『宇須の家』は和歌山城下中心部にあり、古い民家が数多く残る旧市街地に計画されました。
世代が進むことで町並みが変わり、そして新旧が混在しながらも移り替わる様子が伺えます。
また、依頼主であるご夫妻は築75年経過した町家を購入されその後、この家で15年間子育てをされた後に建替えを決意したと言われます。
自分たちがシニアになり、子供が成長したから「こんどは我々の楽しむ番」との事。
新築する建物が与える周辺環境への配慮を第一に考え、時間の経過と共に町並みと調和する住宅になる様願われました。
平面計画としては敷地の特徴より、間口が狭く奥行きが長い敷地ゆえに、(間口8m╳奥行30m)建物の中央に坪庭を設ける事で、リビング・ダイニング、2FMBR(主寝室)への通風と採光を取るようにしました。
ウナギの寝床スタイルではどうしても玄関までの距離が長く成る、その部分に幅1.6m╳長さ12mの庇を採用しました。
そうする事でファサードを印象付ける形となり、何より急な降雨時にも安心して玄関まで辿り着く結果を生みました。
ご夫妻から出された第二の希望は、子供たちが巣立った後でも戻ってこれる場所を残したい。
その為に和室が2室必要との事。そして子供たちが一緒に住まなくとも、子育て時に残した思い出の絵や写真を飾る事が出来る壁を作りたいとの事でした。
私が提案した場所は誰の目にも触れる玄関先でした。
また、造船会社を経営される傍ら、思い出の品である舵をその壁に飾り付けました。
この家の設計をさせて頂き学んだ事は、住まいは家族の思い出作りの場所であり、そしていつでも戻って来られる場所で有る事でした。

左)リビングより玄関先を見る。 右)玄関先の階段室。思い出の絵を飾る。
建築DATA 1階床面積 : 85.69㎡ (25.92坪) 〈家族構成〉
2階床面積 : 85.69㎡ (25.92坪) 夫婦
延べ床面積 : 171.38㎡ (51.84坪)
構 造 : 木造在来工法2階建て
[家づくりニュース2015年3月号掲載]
- 2015.03.01
- 建築家:山下 和希
- アトリエ・アースワーク
■ 参道の家14

開放的なバルコニーを2、3階にL字で、屋上にはもっと素敵な場所が!
風致地区に指定された緑豊かな環境ですが、準防火地域でもあり、法的な規制のクリアが大きな課題となりました。
建ペイ率が40%のため、2世帯の家族の必要な部屋を確保するためには3階建てにしなければならず、今回は準耐火構造(一部燃え代設計)とする事で、木造3階建てで、出来るだけ木を露出させた家を実現する事が出来ました。
外部は周辺に合わせたモルタル塗りの上、塗装仕上げです。
バルコニーは出来る限り参道の木々の緑を楽しめるように開放的にして、特にロフトにつながる屋上のバルコニーからの景色は最高です。
参道から出入りが出来るギャラリーは、家族や友人たちと音楽を楽しんだり、庭でバーベキューを楽しんだりできて、先々は近所の方との交流の場となればと考えています。
玄関は参道と反対の東の通りにつながっていて、大きな木戸を開くとギャラリーのテラスともつながります。
アプローチから玄関はいつもの安田瓦の敷瓦を敷きこんであり、重厚な500年生の杉板の玄関戸に導きます。
内部は漆喰と木の仕上げになっていて、無垢の床板(桧・胡桃)+床暖房部分と、無垢の杉板部分が大半を占めています。お母さんのためのエレベーターが設けられ、生活空間の中心は2階となります。
夫婦と子供の個室は3階に、個性豊かな空間として設けられています。
1階のギャラリーの水廻り、2階のキッチン、3階洗面部分には建て主さんがじっくり選んだモザイクタイルが貼られ、いつもの木の家とはちょっと違っています。
ただし、栗の末口(細いところ)450ミリの1~2階の通し柱がやっぱりと思わせます。

障子を開けると参道の緑が飛び込んで来ます。
建築DATA 1階床面積 : 57.01㎡(17.25坪) 〈家族構成〉
2階床面積 : 58.67㎡(17.75坪) お母さん+夫婦+子供3人
3階床面積 : 58.67㎡(17.75坪)
R階床面積 : 9.50㎡(PH、ロフトのため延べ床に含まず)
延べ床面積 : 174.35㎡(52.75坪)
構 造 : 木造3階建て(準耐火構造)
[家づくりニュース2014年9月号掲載]
■ 杣(そま)
写真:スパイラル/小林 浩志

外観は、杉板型枠コンクリート打放し仕上げに、一部栗の板材を貼って表情に柔らかさを出しています。

2階和室。開口部にはガラスのほか、障子とよしずの引き戸が仕込まれています。
建物の形態は、これらの法規制限と、必要空間ボリュームから検討して、敷地形状をそのまま住宅の形にしました。
敷地のコーナーには、樹形の美しいモミジを植え、各階から公園内の桜の大木や木々と重ね合わせ、眺めることができるように考えました。
外観は、建築の表情に柔らかさを出すため、内外壁に杉板型枠コンクリート打放しを用いています。
一部外壁には栗の板材を貼って、コンクリート打放しになじむことを考えました。
構造は鉄筋コンクリート壁式造とし、内部空間から柱型をなくしました。
また、風通しが重要な課題でしたので2階の居間食堂では、1階から3階までの2つの階段をあえて見せることで、空間を縦につなぎ、高さ方向の通風を発生させるようにしました。
そして、出来るだけ深い庇のある外部空間を各階に設けて、雨除けと夏の日除けに役立たせるようにしました。
それらは建築の陰翳を醸し出すことにも寄与しています。
建物の外周には、塀を巡らせ、防犯とプライバシーを確保しましたが、道路境界線から20センチ程度後退させ、その部分にも下草を植え、塀に屋根を掛け、左官仕上げを用いることで、威圧感をできるだけ感じさせないよう配慮し、道行く人々にも楽しんでもらえるようにと考えました。

2階リビング。ガラスの入った格子スクリーンの奥は、階段室を隔ててキッチンがあります。
建築DATA 1階床面積 : 11.72坪 (38.77㎡) 〈家族構成〉
2階床面積 : 19.84坪 (65.59㎡) 夫婦+子供2人
3階床面積 : 19.99坪 (66.09㎡)
延べ床面積 : 51.56坪(170.45㎡)
構 造 : 壁式RC造3階建て
[家づくりニュース2014年7月号掲載]
■ 蔵町のいえ

居間東側に街を見下ろす出窓がある。
出窓の外観と部屋内の建具は、街並みにあわせて伝統的な意匠を取り入れている。
この住まいは、いにしえの蔵の街並みが今も残る城下町に建っています。
地の利を活かして、伝統が魅せる街のイメージを現代にも継承できるよう蔵の街並みに馴染むデザインを心がけました。
外壁を漆喰仕上とし、道路に面した正面外観の出窓には木組みの伝統的な意匠を取り入れて、街並みに自然と溶け込むような外観にしました。
建物を前面道路から少し後退した配置とすることで正面ポーチをつくり、街並みに開かれた共有スペースとしても使えるようにしています。
玄関へのアプローチは車庫脇のくぐり戸から入り、植栽のあるポーチを通って玄関へアクセスする雁行した動線をつくり、限られたスペースの中にも奥ゆかしさを感じられるようにしています。
1階には来客を兼ねた多目的なスペースと水廻りを配置し、2階に家族団らんのスペースを設けています。
1階からゆったりとした階段通路スペースを上がると、住まいで一番広い2階の居間・食堂スペースがあらわれます。
この空間は、傾斜天井に構造梁をあらわし、登り梁の両脇に照明ボックスを設けて、天井板の優しい木目と一体にしたシンプルで力強い空間になるように工夫しています。
居間の東側に位置する出窓は、その外観と同様部屋内の建具にも伝統的な意匠を取り入れています。

建物正面左手に玄関への前庭通路がある。
建物は道路から後退して、突当りの1階に車庫を設けている。
正面ポーチは街並みに面した共有スペースとしている。

構造梁をあらわした登り梁の両脇に照明ボックスを設けている。
建築DATA 1階床面積 : 29.82坪 〈家族構成〉
2階床面積 : 26.95坪 夫婦+子供
延べ床面積 : 56.77坪
構 造 : 木造2階建て
[家づくりニュース2014年2月号掲載]
- 2014.01.31
- 建築家:濱田 昭夫
- TAC濱田建築設計事務所
■ 箍(たが)の家
─ 架け橋になった吹抜階段 ─
四世代が一つ屋根に暮らす、貴重な計画を預かった家の話です。
1歳から80代までの5人暮らし。しかし敷地は3mの高低差を持つ傾斜地。それでも世帯を分けず、玄関とお風呂は一つに絞りたいというご家族の結束観。計画に先立って預かった要望は、設計者を最初から「ど真ん中真剣勝負」に追い込むものでした。
頭を悩ませたのは四世代を繋ぐ動線と高低差。家づくりの中心は居間や茶の間ではなく、幼児から高齢者まで、家族を無理なく楽しく結ぶ連絡空間が最優先に求められます。
そこで仕掛けたのは光の井戸。家の中心に燦々と日光が注ぎ込まれる階段室です。スキップフロアの上は若世帯。階下は皆が集まる居間、食堂、茶の間。そして中2階に玄関、水廻り、祖父室を設けました。
つまり、祖父らは玄関ホールから緩い緩い階段を下りれば皆の集まる食卓に付けるし、階段室を共有することで若世帯やお孫さんとの対話も生まれる、という仕掛けです。
そこに、もう一つ思いが加わりました。吹抜階段に掛けられた竹のガラリです。光を和らげる効果もさる事ながら、この竹は、若くして他界したご家族が大切に手を掛けた竹林から伐り出されました。今、天高き棲まいから「家の箍」となって、優しく力強く家族を見守ってくれています。
若世帯の2階ホールから、吹抜階段を通して玄関ホールを見下ろしています。
1 階 : 39.00 坪 〈家族構成〉
2 階 : 15.00 坪 大人 4人(祖父+夫人+次男夫婦)
延べ : 54.00 坪 子供 1人(孫)
(屋根裏: 6.00 坪)