【 60-70坪 】

DROP ON LEAF ~快適さを追求したコート型住宅~

DROP ON LEAF-外観_杉浦

道路側外観


DROP ON LEAF-雨落とし_杉浦

大雨時の雨落としの様子

土地の区画面積に比較的ゆとりのある、東京都郊外の住宅地に計画した住まいです。
敷地は傾斜する前面道路から1.6m~2.5mの高さにあります。
旧住まいは接道面では最も低い西寄りの位置より敷地にアプローチするように造成され、2m以上の高低差を屋根の無い屋外階段で上っていました。
しかし本設計ではその負担を軽減するために、高低差の少ない東側寄りの位置から建物へアプローチする計画としました。そして天候の優れないときでも雨に曝されずに住まいに入れるように深い庇を設けています。

 

全体計画としては、プライバシーが確保しやすく、小さなお子様が思いっきり遊んでも近隣に音が伝わりにくいコートハウス形状としました。
室内各所から庭全体を見守ることが可能です。

DROP ON LEAF-室内01_杉浦

平屋の離れ内観

この中庭の南側にあたる離れの書斎兼音楽室は平屋建てとして高さを抑え、冬場の採光により有効な屋根形状を検討しました。
母屋からはその平屋棟の屋根を眺めることができます。折角見える屋根ですので、それならば雨の雫まで楽しんでしまおうと発想が繋がり、外部には樋ではなく雨落としを設け、内部天井には葉脈のような小屋組をもつ離れとしました。
離れまでは中庭の地面の高さにまで下がって移動します。
屋外の地面により近づくことで、内部でありながらも半屋外の渡り廊下を歩くような気分を演出しました。このような床のレベル差や天井高の変化に、異なる開口部の位置による陰影が相まって、様々な居場所が与えられる住まいとなりました。

 

この建物の環境設備的な特徴としては、トップランナー基準レベルの断熱性能に、全館空調による冷暖房システムを導入し、更には太陽光パネルによるエネルギーを利用しています。

DROP ON LEAF-室内02_杉浦

リビングから平屋の離れへの動線や中庭を臨む

DROP ON LEAF-室内03_杉浦

構造梁の間やダクトスペースには照明が組み込まれている

全館空調はどの場所にいても温度差の少ない快適な温熱環境を保つシステムですが、全ての部屋や洗面所やトイレにまでも巡る大きなダクトは、空間をデザインするうえで意匠的には問題となるものです。マンションの梁型のように単に配管を覆うことは容易ですが、あまり美しいものではありません。ここでは配管経路を意識しない意匠を目指しました。

 

建築DATA

敷地面積:253.92㎡(76.81坪)              〈家族構成〉
建築面積: 98.11㎡(29.67坪)               40才代夫婦+女の子
延べ面積:212.76㎡(64.35坪)
構  造:木造2階建て(木造軸組工法/制震構造付加)

[家づくりニュース2015年9月号掲載]

桜川の家

2階のLDK。東側の通りに向かって大きな開口を設けているのが特徴。


公園の近くに2世帯の住宅をつくりました。
依頼を受けたのは息子さんからで、大学で建築を専攻していたといいます。

 

その彼から最初に言われたことが
「完全別居の2世帯です。
 玄関を行き来するぐらいはいいのですが、互いのプライバシーを大事にした作り方にしてくださいね。」
建築家という人たちは、建て主さんが望んでいないことでも「こうしたらどうですか?」とサプライズ提案を出すことがあるのを知っているからなのでしょう。

 

設計工期の短い中で時間を無駄にしたくないという思いから、初対面の私に対して、念押しされたのだと思います。

工事の進行中、現場をしょっちゅう見に来ていたお父様。
「1階のうちのほう暗いんじゃないかなぁ。
 息子たちのほうって2階で明るいよね。
 孫の世話は上でやることにするよ。
 息子のところは24時間空調だし、息子たちの留守番でちょうどいいからさ。」

 

法規上の採光計算はやっているので、そう滅多な事はないのですが、周りの状況によっては思った以上に暗く感じることもあります。
仮囲いシートがはずれる前とはいえ、私も内心、どきどきでした。

 

1階のLDK。手前の掘炬燵のあるところが仏間兼居間。
奥にキッチンとダイニング。

工事の終盤に入って仮設シートがはずれたとき、1階にはしっかり光が入り込み、お父さんの心配は払しょくされました。
もちろん、2階はもっと明るい状態。

 

つい先日伺ったら、一家団欒の食事は、お母さんとお嫁さんが交互に作り、1階で食べたり2階で食べたりしているのだそうです。
互いが本当によく行き来しています。

 

それだけ仲が良いのだったら、お互いの領域をもう少し絡ませても良かったかも知れませんね。

 

建築DATA

1階床面積 : 97.25㎡(29.42坪)           〈家族構成〉
2階床面積 : 101.65㎡(30.75坪)           両親+夫婦+子供2人
延べ床面積 : 198.90㎡(60.17坪)     
構   造 : 木造2階建て

[家づくりニュース2014年5月号掲載]

記憶を受継ぐ家

記憶を受継ぐ家-外観_吉原

昔の面影を残しつつ、生まれ変わった外観。


以前、ここにも書いた住まいが完成しました。
この住まいは、築40年近くとなる木造2階建てのリノベーションです。
昭和56年以前の建物なので、現在の耐震基準を満たしておらず耐震性に不安があることと、親世帯だけで住んでいた住まいを、子世帯と共に住む2世帯住宅につくり直せないかと計画が始まりました。

 

愛着ある住み慣れた住まい。
親の代から住み続けられ、数々の思いでが刻まれた家族の居場所。
新築かリノベーションかと随分迷われましたが、後世代に家の記憶を残し、2世帯それぞれが程よい距離感が保てるよう全体的にプランを考え直し、構造や断熱、設備なども、もとの性能以上にし建物を再生させることとなりました。

 

古いモノを今の生活に取り込むリノベーションは、新築とは違った様々な発見があります。
古いモノの中に見つける新しい価値、キズのついた柱や梁、年季の入った障子や欄間は、家族の歴史を表し、空間に奥行を与えてくれます。
何十年も使い込まれたモノだからこそ味と深みが生まれ、住まいにくつろぎや落ち着きをもたらします。
古いものと新しい技術が程よく織り交ざった住まい。
以前の家の記憶を残しつつ、次の世代に受継がれる住まいとなりました。

 

記憶を受継ぐ家-室内①_吉原

井が落とされ開放的になった室内。
子供部屋のロフトに繋がる小窓。

記憶を受継ぐ家-室内②_吉原

書院格子や障子、古材などを再利用、無垢板や漆喰など古い材料と馴染む室内。

建築DATA

1階床面積 : 33.03㎡ ( 40.24坪)           〈家族構成〉
2階床面積 : 72.71㎡ ( 21.99坪)            両親+夫婦+子供2人
延べ床面積 : 205.74㎡ ( 62.23坪)     
構   造 : 木造2階建て+ロフト

[家づくりニュース2014年3月号掲載]

木の家、木の空間

木の家、木の空間_室内①

仲間を招くのが大好きな家族の為に用意された全長4.3m強の食卓を南方向に見る。右側、筋かいをアレンジした木立状架構は各階からランドマークのように視界に入る。

撮影:安川 千秋

 

40代前半のご夫妻と設計当時小学生だった3人のお子さん達家族の住まいです。
このご家族に出会い、夫妻が日々体当たりで子供達に対している情熱を強く印象付けられました。
この家族にどう「建築」で応えられるか!
そんな思いがこの住宅設計の根底にあったように思います。

 

①南面傾斜地からの夏の卓越風が住宅の隅々を吹き抜けていくこと。
居間・食堂を2階東寄りに、南北縦長に配置し、全長4.3mの食卓や総延長9.1mの調理台+デスクカウンターも、風の流れに沿ってスーッと一方向にレイアウトする構想が、まず浮かび上がりました。

 

②傾斜地正面やや左の横浜方向、西寄り大山・丹沢方向を含む奥深い眺望を取り込むこと。
ふり注ぐ冬の日照をしっかり捉えること。
浴室を2階南西角に位置させ、3つの子供室を1階にずらりと並べ南面させることを続いて確定。
180度のパノラマ状展望が開け、半球状の天空と接するルーフデッキも提案させて頂きました!

 

木の家、木の空間_室内②

2階浴室等の水まわり前の廊下から「小さな吹抜けを持つ階段」を通して居間・食堂方向を見る。

③そして、この住宅北寄り中央の「小さな吹抜けを持つ階段」!
個室群のある1階、居間・食堂や浴室・洗面、北側道路から続く玄関ホールのある2階、そして屋上ルーフデッキ間を、日々家族が上下し移動するこの階段周辺のそこかしこに、一寸ドラマチックな空間的仕掛けを組み込みました。

 

④飾らない、無垢でストレートな素材使いに徹し、環境負荷最少の素材である「木」の架構を力強く表現することにも努めました。

 

⑤等々。

 

書ききれないその他の試みについては、当工房HP「作品」欄を併せて参照頂ければと思います。

 

建築DATA

1階床面積 : 33.57坪           〈家族構成〉
2階床面積 : 33.82坪            夫婦+子供3人
屋 上 屋 : 1.75坪
延べ床面積 : 68.14坪     
構   造 : 木造2階建て

[家づくりニュース2014年2月号掲載]

KAPPAはうす

岩手県遠野は、日本の原風景を残しているだけでなく、カッパや座敷わらし、キツネや馬との恋など、言い伝えや物語に溢れた不思議なところです。
「KAPPAはうす」は、そんな遠野の、長閑な田園風景の中に建ちました。
ご主人は、大阪のご出身。奥様は与論島。
お二人が四人のお子さんをもうけ、この地に骨を埋める覚悟を決めるまでにも、遠野の伝説に負けない物語があったに違いありませんが、今回は、秘密のままにしておきます。

KAPPAはうす_外観

遠野の長閑な風景の中にぽつんと溶け込んでいます。
右斜め手前の方向に、車で10分も走らないところに河童淵があります。


東西にまっすぐ伸びる農道に合わせて、低い軒を長く見せるようにしました。
高さを抑え、普通に、目立たず、完成した時に、ずっと前からここに建っていたような…。
小さな盆地に外から入ってきたご家族が、自然に、人にも風景にも馴染んでしまう。
そんなことを、イメージしました。
列柱縁側に面した開口部、風をぬきながら北に広がる風景を眺める小さな開口部。
いつでも遠野を感じられる工夫です。

KAPPAはうす_室内

リビング、和室の見通しです。左側には縁側デッキと広い庭が広がり右からは小窓から北の風景がのぞけます。
床は岩手の栗。床柱はエンジュ(岩手県に多く自生しています)。杉も地元です。見えない構造には、岩手県推奨の唐松集成材を使っています。
五月五日の新築祝いには、床の間に立派な甲冑が飾られました。

材料にも拘ってみました。
[岩手県のもの]
 栗のフローリング、杉、
 県推奨の唐松集成材、
 エンジュ床柱
[大阪のもの]
 池田炭  
[赴任していた山形のもの]
 紅花漉き込みのふすま紙
[与論島(沖縄)のもの]
(注・与論島は鹿児島県です)
 ウコン和紙、月桃紙
故郷を思いながら遠野の生活に溶け込みます。

KAPPAはうす

北面の小窓は、北に広がる(上部写真参照)遠野の風景を眺めるためと通風のためのものです。
北風が強いので、小さく風景を切り取るようにしました。リビングや階段の上り下り、浴室、書斎から眺めることが出来ます。

厳しい遠野の冬を快適に乗り越える事が、第一のご要望でした。
断熱性能は北海道を目指しました。気密性能もC=0.88と、基準の半分以下。自然素材の暖かみと合わせて、快適な冬が過ごせます。
夏は田んぼをかける青い風が気持ちよく抜けていきます。

五月五日の新築祝いの一週間後には、家族で畑を耕し、家庭菜園の準備にかかっていたそうです。
新しい生活が始まります。

[追記]
新築にあたり、ご主人はファイナンシャルプランナー、奥様はインテリアコーディネーターの資格をそれぞれ取得。夫婦力を合わせての家づくりでした。

建築DATA

1階床面積 : 36.36坪               〈家族構成〉
2階床面積 : 25.20坪               夫婦 + 子ども4人
延べ床面積 : 61.56坪     
構   造 : 木造軸組工法 地上2階建て

[家づくりニュース2013年7月号_今月の家_掲載]

リノベーションという選択

骨組み状態のみになった建物


ただ今、築三十数年となる木造2階建て住宅のリノベーション工事中です。
キッチンや浴室の一部やり替え、壁紙の張替えなど比較的小規模な工事をおこなう「リフォーム」と違い「リノベーション」とは、建物を柱と梁だけの骨組み状態にして、新たに間取りを考え直し、耐震補強をおこない、老朽化した設備配管などを取替え、もとの建物性能以上に再生させる工事のことです。

現場にあった鶴と松の書院格子

もともとはご両親が住まわれていたこの住まい、子世帯に孫が生まれたことをきっかけに、2世帯住宅として一緒に暮らすことができないかと計画が始まりました。

現場は、都心の道路より奥まった緑に囲まれた静かな環境。
室内に入ると床はたわみ多少ガタがきているものの、手の込んだ欄間や格子戸、立派な床柱、庭の眺めなどが目に入りました。

建替えか、リフォームか? 
と悩まれた末、後世代に家の記憶を残し、2世帯が程よい距離感が保てるようプランを考え直す、リノベーションという選択となりました。
リノベーションとする理由は、住み慣れた家に愛着がある、継いだ家を守りたい、建替えると面積が減ってしまう、少しでもコストを抑えたいなど様々です。
木造住宅は柱と梁が構造体となっているので改築しやすく、大きく間取りや水回りを変更しても適切に設計してゆけば何世代にも渡って住み続けることが可能です。

完成予定模型

完成予定模型

先ずは、骨組みの見直しです。
建物の構造基準は、昭和56年に「耐震」に対する考え方が根本的に改正されました。
このことから、改正以前の基準の建物を「旧耐震の建物」、以降の建物を「新耐震の建物」といいます。
旧耐震の建物は、現状の耐震診断をおこない、今の構造基準を満たすように補強計画を考えなければなりません。

表面的な化粧直しだけでなく、構造補強や断熱性能を高めるリノベーションは、新築に近いコストが掛かります。
東京都では、耐震補強工事やバリアフリー改修などに掛かる費用の一部を助成する制度もあるので要チェックです。

解体工事を終え、骨組みだけになった建物は壮観です。
親の代から住み続けられた住まい。数々の家の思い出。
次の次の世代と同じく、新たに生まれかわるための準備です。

建築DATA

延べ床面積 : 62.23坪           〈家族構成〉
構   造 : 木造2階建て         両親 + 夫婦 + 子供2人

[家づくりニュース2013年6月号_掲載]