テーマ:【 飾る・しつらえ・ディスプレイ 】

夏と冬で変わるお気に入りの場所

夏と冬で変わるお気に入りの場所-冬_akanuma

写真①:冬の様子

まだ陽射しも低い十二月、久しぶりに以前設計したお宅に伺いました。
その家は木造3階建てで敷地周辺に隣家が迫っていたため2階のリビングとダイニングを階段廊下でコの字型につなぎ、南面した9畳程の中庭から採光や通風、視界の抜けを確保しています。

 

写真①は冬、中庭に面した廊下の造り付ベンチです。
背当付のソファーと毛布が置かれ低い陽射しがよく入り暖かくて昼寝や読書をするお気に入りの場所になっていました。

 

夏と冬で変わるお気に入りの場所-夏_akanuma 

写真②:夏の様子

 

写真②は夏の様子。
高くなった陽射しは3階のバルコニー軒やコの字型のプラン、ゴーヤカーテンである程度制御されますがやはり暑い、少し地下に入った涼しい1階アトリエがお気に入りの場所になっていました。

 

設計では、陽射しや風の流れ、季節や時間の変化などを考え、住み手の暮らしを想像しながら全体を構成していきますが、実際の暮らしぶりを拝見する度に様々な発見があり、住まいは日々の暮らしの中で住み手によって作り上げられていくものだと実感しています。

 

[家づくりニュース2015年7月号掲載]

自分の設えを楽しもう

設え01_川口家づくりの楽しみの中に「設え」(しつらえ)というものがある。
日本では季節ごとの慣わしとそのための飾りを、長い間、守り通してきた。
それは、三方(さんぼう)に盛られた、お正月の鏡餅に良く表れている。
シンプルで美しく緊張感のある、すばらしい設えである。
自分や家族の大好きなモノを、上手に設えることが出来ると、家の中が楽しく、美しくなる。
住まいには、毎日使う家具や衣類のように、日々の暮らしに欠かせないモノたちが必要であるが、設えは、そのような様々なモノたちの向こう側にあり、心の中の美意識や強い好みが家という空間を、その人の色に染めていく世界である。
世界に、一軒しかない家族の臭いがする家になるための、いちばん早い方法でもある。
そもそも日本では、設えは、床の間が主なる飾りつけの空間であり、床脇の違い棚などに香炉や硯箱(すずりばこ)や銘品の器などを美しく飾った。床の間は掛け軸と生け花を飾りつけた。
また茶室では銘椀のような様々な茶道具を飾り、他人に見せて、さりげなく道具の自慢をした。
現代では、もっと気軽に、様々なモノを飾ると楽しく、美が手に入る。
自分の気に入ったモノが飾ってある住まいは、素敵であり、自分の眼力を鍛えるのに持って来いである。
設え02_川口今日からでも、何か設えたら家の中を気持ちよく、美しく出来る。子供の絵や工作でも、額やケースに入れると、途端にそれらの作品は輝き出す。
庭に咲いている花や木々の枝を切って、花瓶に入れるだけでも輝き出す。
僕もそんなことを日々行って、設えを楽しんでいる。

 

[家づくりニュース2014年11月号掲載]

飾るという場所

絵画、写真、雛人形や花といった飾るものは、その住宅の住み手の個性そのもので、
だから大事に取り扱いたいと思っている。
しかしながら、ただ棚をつくると無差別に並び始めて、季節ごとの出し入れもなくなることが多い。
美術品は厳選してひとつ置いてあると美しいが、節操無く並んだモノほど醜いものは無い。
想像してみてください。
カレンダーの隣にコンテンポラリーなリトグラフ。
その隣に五月人形とスワロフスキーのクリスタルや、お土産物たちがずらずらと並ぶ様を。
しかも埃をかぶって…。
ね。
よくある風景です。
飾り棚だから意思を持って飾る場所を特定する。
特に父上や母上から頂いた雛人形や五月人形のような晴れやかな季節の設えは、特別な場所性を用意したい。
もらった以上気持ちを敬意として表現したいものです。
でもでも、日本の住宅事情はそんなに甘くはない。
その時にだけ使えるような和室が確保できるわけでなく、何となくテレビの横かなんかにゴチャゴチャと並べるしかなくないわけで。

 

そこで、この住宅では階段を上って行く吹き抜け部分に、宙に浮いたように飾り窓(棚)を設置しました。
全方向から見えるようにして、遊びに訪れた父上や母上が、上ってくる目の先に人形が飾られる。
どうです?
喜ぶ様が見えるようでしょ。
そうすると、つまり…この住宅の住み手も良い事が一杯あるはずです。
設計で仕組む、全方向型飾り窓の、全方向型喜び連鎖であります。

 

[家づくりニュース2014年7月号掲載]