講座・見学会・コラムTOP »

コラム

求められている 建築士による耐震リフォーム

耐震リフォーム_04

[リフォーム前]リビングから庭に出られない窓の造り

ここ数年、少子高齢化が進行、既存住宅数は世帯数を超え、空き家が問題になり、新築住宅着工件数は長期的には減少傾向にあります。
このような住宅事情の中で、国は既存住宅のリフォームに力を入れ、様々な助成制度も展開しています。
特に3年前の震災以降、耐震性を高めていくことが強く打ち出されました。
昨年秋には昭和56年5月末以前に着工された利用者多数の施設等や緊急輸送道路沿道の対象となる建物の耐震診断の義務化や耐震補強への助成が決められました。

 

耐震リフォーム_03

リビングに庭へ出られるテラス窓を設置。
奥にはご主人用の4.5帖の和室

すでに同時期の木造住宅の耐震診断・補強に対しては助成行われていますが、現在、課題になっているのは昭和56年5月末以降に建てられた在来工法木造住宅です。
構造に関して昭和56年に基準法の大きな改正がありましたが、その後、平成12年の改正で地震力に耐える壁の配置バランスや構造材の継ぎ手や仕口・金物が詳細に規定されたため、この間に竣工した建物には耐震強度不足が懸念されているからです。

 

まだ助成制度等は見られませんが、今後、この間の住宅の耐震補強の必要性も検討されていくことでしょう。

 

耐震リフォーム_01

(左写真)ダイニング横の茶の間を無くし、収納も確保した、広いリビングダイニングに/(右写真)階段室とダイニングの吹き抜けの壁を撤去して、風の通る吹き抜けに改造

昭和53年竣工の中古住宅を購入し、10年住んでから、子供達の成長に合わせて耐震リフォームしT邸。間取りも大きく変えました。

 

長年住んだ家では家族構成の変化や設備性能の向上などでリフォームを考える家庭も少なくないようです。
こうしたリフォームに合わせて耐震補強をすることをお勧めします。
表面の改修だけでなく、骨組みから丈夫にするには、現在の建物の状態を充分に調査して、適切な耐震設計をすることが基本になります。
それには新築以上に積み重ねた知識や経験が必要になります。
耐震リフォーム設計への建築士の関与は今後ますます求められて行くと思います。

 

[家づくりニュース2014年6月号掲載]

「家づくり学校」が日本建築学会教育賞受賞

家づくり学校
「家づくりの会」は、建築家による良質な住宅の普及を目指し、様々な活動を行ってきましたが、2009年より「家づくり学校」という住宅設計を目指す人たちのための学校も運営しています。

 

この「家づくり学校」がこの度、「2014年 日本建築学会教育賞」を受賞しました。

 

この学校の講師は家づくりの会の会員が主体となってやっています。
家づくりの会は発足し31年の歴史を刻んできましたが、この間、多くの会員が建築家として大きく成長し、住宅設計者の後進を育てる学校を運営するまでになりました。
今回の受賞は「家づくり学校」そのものに対しての受賞であると同時に、「家づくりの会」31年目の到達点とも言えます。

 

「家づくり学校」は10年ほど前に活動していました「建築道場」を前身とし、5年前に建築道場を発展解消し「家づくり学校」が誕生しました。
建築道場は家づくりの会の一部有志による学校でしたが、「家づくり学校」は現在、家づくりの会の重要な活動の一つになっています。

 

家づくり学校の今回の受賞は大変ありがたく、喜ばしいことではありますが、これで良し、とするのでなく更なる夢に向かって頑張りたいと思っています。

 

建築道場の発足を0合目、家づくり学校の発足を2合目とするなら、今回の受賞はまだまだ4合目、まだ半分にも到達していません。
次の6合目、8合目、10合目と夢は続きます。6、8、10合目の具体的な形はおいおい皆様の目にも触れることができるよう頑張りますが、いずれにしろ住宅設計における社会人教育の新たな地平を開きたいと思っています。

 

どうかこれからも皆様のご支援をよろしくお願い申し上げます。

 

家づくり学校校長  泉  幸 甫

 


 

「家づくり学校」の5年間

 

2009(平成21)年春、家づくりの会は、住宅設計を目指す人の為に「家づくり学校」を開講しました。
その後5年の月日が流れ、昨年度は初の卒業生を輩出する事が出来、これまでの受講生は延べ100余名を数えます。
中には自身の仕事(住宅)で受賞の栄誉を得た人もいますし、卒業生の中から当会への入会を希望する人も現れました。

 

私達、講師・運営側にとって、この学校がきっかけとなり受講生の皆さんが活躍しているのを見る事が何よりの喜びです。

 

今回の受賞を機に、これまでの家づくり学校の歴史を振り返ってみたいと思います。

 

———————————————————————————————————————————————————-

 

2009年、第一期開講。
2009年_第一期住宅設計を学ぶなら優れた建物の中でする方がよかろうとの考えで、建築家F. L. ライト設計の自由学園明日館(重要文化財)を会場とする「座学」を1年生コースとし家づくり学校がスタートしました。

 

1年生コースでは家づくりの会設計会員が講師となり、自身が得意とする設計テーマを披露開陳し、受講生が住宅設計で生きる為の自己研鑚を促す事を目的としています。
我々講師・運営側も、如何に世間に流布している教科書やセミナーと一線を画すか、模索してきました。
年8回、「生活」・「環境」・「素材」・「設計監理」・「構造」あるいは「構法」・「木」・「歴史」・「外構」・「地域」等をテーマとした約2時間半の講義を行っています。
そのうち毎年1回は必ず「生き残るためには」と題し複数の建築家で座談的な講義を行い、建築家として自分がどのように学び生きてきたかを語ってもらいます。
自分達の現状分析や将来展望について大いに参考になるのでしょう、これは受講生に大変人気のある講義のひとつです。

 

 

2010年、第二期開講。
2010年_第二期2年生コースを新設。部屋から飛び出し、生産の現場を訪ねる「素材や技術の見学会」を始めました。

 

具体的には、大谷石・鉄平石などの石切場、山での木の伐採から製材されるまでの工程見学といった素材の源流を探ねる、建具や家具・左官・瓦・和紙・金属加工・鍍金・塗装等の各工場で製作・製造の技術に直に触れる、国宝級の古建築を訪ね伝統技術に触れる、古材を扱う商店や建築廃棄物の処分場やリサイクル工場を訪ねる、というバラエティに富んだ内容です。
私達現代の設計者は、ややもすれば既成のカタログ部品のアッセンブルだけが仕事になってしまいかねない状況下にあります。
受講生にはこの学年で建築素材の捉え方について開眼し、今自分がしている仕事を捉え直してもらえるよう期待して始めたものですが、やはり多くの受講生が「参加してよかった」と言ってくれています。
なおこの2年生コースは、毎年多くの建設関連業の方々に御協力いただく事で成立しており、この場を借りて厚く御礼申し上げる次第です。

 

 

2011年、第三期開講。
2011年_第三期1〜2年コースで得た知見を基に、4人の講師から住宅の特定の部分等について演習問題を提示し、それをまとめる3年生コース「課題」を新設しました。

 

これまでに掲げられたテーマは、「温熱環境(断熱設計)」・「工法(社会へ提案する新しい建築の作り方)」・「茶室」・「納まり(開口部の設計)」・「屋根」・「自然(自然エネルギーの利用)」・「リノベーション」・「形態」。
ひとつだけ例を挙げれば、「茶室」の講義では、実際の茶室にて本物の茶事を体験したり材木屋で銘木を見学した後、課題として小さな茶室を設計しました。
3年生コースでは、受講生に対して建築を構成する特定の部分の設計手法や形態的美学の鍛錬を期待しています。
課題提出時には講評会を行い、講師のみならず受講生も交えた活発な議論を行っています。
どの受講生も1~2年コースを経てきているので、下級学年時と比べて議論もより深く密度の高いものになっていると感じます。

 

 

2012年、第四期開講。
2012年_第四期1~3年生コースで学んだ事を、あらためて受講生自身の中で統合してもらうべく、リアルな課題に対して一軒の住宅設計をまとめつつ、建築家の設計術を習得する4年生コース「スタジオ」を新設しました。

 

3~4人の講師が自身の設計事務所を使ってスタジオ形式の指導を行います。
下級学年に比べてずっと講師との距離が近付く訳で、他の教育機関ではなかなか得られない貴重な機会です。
教える側も自分の設計手法を盗まれる事を厭わぬ覚悟が必要であり、講師と受講生との真剣勝負とも言えましょう。
これまで半田雅俊・川口通正・諸角敬・本間至・川崎君子・松原正明の各建築家がスタジオを担当しました。
課題をまとめた後、最終発表会と称し全スタジオの受講生が集まり各々が自分の作品をプレゼンテーションします。
彰国社「家づくり学校」その様子は下級生も聴講出来るようにしており、また優れた作品には優秀賞を贈り表彰しています。

 

2012年冬、これまでの講義内容をまとめた書籍「実践的家づくり学校 自分だけの武器をもて」(彰国社)を出版し、本書を次年度から1年生コースのテキストとして用い始めました。
学校の講師陣が約1年の時間をかけて、これまでの講義内容をより深く詳細に執筆しています。
その他、2年生コースでの見学記や、家づくりの会設計会員を対象としたアンケート、さらに第一期受講生のうち数名に集まってもらい座談会を催し、その様子も掲載されています。

 

 

2013年、第五期開講。
2013年_第五期前年度で4学年制の学校形式が完成し、今後それらを如何にブラッシュアップしていくかが、我々運営側の課題となりました。
運営サイドとしても毎年同じ事を繰り返していては自分達が面白くありません。そこで我ながら手間がかかるので止せばいいのにと思うのですが、学校のプログラムを可能な限り毎年刷新すべく配慮しています。
例えば1年生コースの講師に、当会所属建築家のみならず、外部からも若い世代に人気のある建築家・メディア関係者・第一線で活躍中の構造設計者等のゲストを招き、講義を御願いするようにしたり、自分の担当講義についてもその内容を毎年少しずつ異なるものにしたり、と工夫を凝らしています。

 

 

懇親会風景講義や見学後には必ず懇親会を行っています。
授業の日以外にも、納涼会と称した新入生歓迎会や全講義終了後の全学年合同修了式等のイベントがあります(修了式では学年ごとに修了証書が授与されます)。
講義時間内に出来なかった質疑応答や、講師と受講生の、受講生同士の交流の場として、設定したものです。
特にまだ修行中の若い設計者は、仕事を覚えそれをこなしていく事に日々忙殺され、自分が勤める会社以外の同世代の設計者仲間と交流する機会になかなか恵まれません。
そんな中、家づくり学校で同じ志を持つ仲間との知遇を得る事は、他に代え難いものだと感じています。
事実、受講生からは「横のつながりができて有益だった」と大変好評のようです。
この学校で知り合った受講生同士が集まってセミナーや見学会に参加する等、自主的な活動も行われているようです。

 

 

第三期の終了後から毎春、受講生ならびに講師の有志で、「修学旅行」と称し1泊2日の建築見学ツアーを行っています。一人で見ている時にはウッカリ見過ごしてしまいがちですが、仲間と議論しながら見学すると必ず新たな発見があります。また、たった2日間であっても寝食を共にする事で、お互いの付き合いがより深くなるものです。
2012年は三重県伊勢方面へ、2013年は秋田・青森など東北地方へ、今春は能登・金沢へ旅しました。旅行の企画運営は受講生や卒業生がとりまとめ、毎回30人前後が参加しています。
修学旅行_01修学旅行_02

 

———————————————————————————————————————————————————-

 

こうした私達の活動が日本建築学会という権威ある団体から認めていただけたのは、実に嬉しく名誉な事です。
しかし、ここで安堵し慢心する事無く、今後も住宅設計を目指す市井の人達に役立つ教育活動を、決してマンネリ化に陥らぬよう継続していきたいと思います。

 

家づくり学校副校長 山本 成一郎

 

[家づくりニュース2014年5月号掲載]

「家づくり学校」が日本建築学会教育賞受賞 !!

家づくり学校
「家づくりの会」は、建築家による良質な住宅の普及を目指し、様々な活動を行ってきましたが、2009年より「家づくり学校」という住宅設計を目指す人たちのための学校も運営しています。

 

この「家づくり学校」がこの度、「2014年日本建築学会教育賞」を受賞しました。

 

この学校の講師は家づくりの会の会員が主体となってやっています。家づくりの会は発足し31年の歴史を刻んできましたが、この間、多くの会員が建築家として大きく成長し、住宅設計者の後進を育てる学校を運営するまでになりました。
今回の受賞は「家づくり学校」そのものに対しての受賞であると同時に、「家づくりの会」31年目の到達点とも言えます。

 

「家づくり学校」は10年ほど前に活動していました「建築道場」を前身とし、5年前に建築道場を発展解消し「家づくり学校」が誕生しました。
建築道場は家づくりの会の一部有志による学校でしたが、「家づくり学校」は現在、家づくりの会の重要な活動の一つになっています。

 

家づくり学校の今回の受賞は大変ありがたく、喜ばしいことではありますが、これで良し、とするのでなく更なる夢に向かって頑張りたいと思っています。

 

建築道場の発足を0合目、家づくり学校の発足を2合目とするなら、今回の受賞はまだまだ4合目、まだ半分にも到達していません。次の6合目、8合目、10合目へと夢は続きます。
6、8、10合目の具体的な形はおいおい皆様の目にも触れることができるよう頑張りますが、いずれにしろ住宅設計における社会人教育の新たな地平を開きたいと思っています。


「家づくり学校」における社会にコミットする設計者養成のための教育プログラム、
その実践と継続的取り組み

 

この5月から発足32年を迎えるNPO法人「家づくりの会」は、建築家による良質な家づくりの普及を目的とし、様々な活動を行ってきた。さらに2009年より「家づくり学校」という4年制の学校を運営している。

 

大学を卒業し憧れを抱いて設計の仕事に就いたにもかかわらず、何年かするとこの仕事を肯定的に捉えられない若者が増えている。
それは学生時代に描いた夢とはかけ離れ、何をしようにも社会のあまりにも利益追求という現実的な仕組みに絡め取られ、身動き出来ない内容が要求されてしまうからである。
そのような世界にいると設計者は、自分がなすべきテーマが何かさえも見えづらくなってしまう。
本来、建築家のあるべき姿としては、フリーランサーとして自由度が保てることである。
このような社会から一歩離れて客観的に見る態度は、建築だけでなく社会の未来にとって貴重なはずである。

 

そこで、大学を卒業して設計事務所にいる人や、工務店で設計の経験を積んでいる人たちを学生として受け入れ、住宅設計における現代のテーマを様々な形で提示していくことで、それに影響を受けて自己のテーマを持ち、自己の物差しを持てる設計者へと育てていくことを目的とした。
と同時に、住宅設計で生きることの喜びや勇気を持ちながら、住宅設計者として生きるタフな精神をも育てたいと考えた。

 

このような学校に相応しい講師として、NPO法人「家づくりの会」の中から、様々な分野に秀でた経験豊かな建築家達が務めている。

 

1. 教育の創意工夫

本校の特徴は、実践を前提にしたカリキュラムに特徴がある。各学生の仕事に差し支えない月1回の授業とし、
 1年で本校独自の教科書「実践的家づくり学校-自分だけの武器を持て」を使っての「座学」、
 2年で生産の現場を見てまわる「見学」、
 3年で個別の実践的テーマに取り組む「演習」、
 4年で建築家のスタジオに入って1軒の住宅をまとめあげる「設計」、
といった明快な授業構成になっている。昨年度のカリキュラムから例にとると

 

■1年生 座学コース 家づくり学校1年生コース
     座学による現代の住宅のテーマを知る(年8回)

『住宅設計とは』     講師:本間至/生活する行為に対して、建築部位が
             どんな作用を及ぼすか等
『素材から考える』    講師:泉幸甫/自然素材との向き合い方 |
             川口通正/汚れない建築
『構法から考える』    講師:大野博史(オーノジャパン)/建築家とのやりとりから生まれる構造デザイン
『歴史から考える』    講師:山本成一郎/古建築の改修や、伝統工法を用いた現代の建築
『木から考える』     講師:古川泰司/森を守る国産材の活用 | 松本直子/産地からの直接購入
『外構から考える』    講師:村田淳/ゾーニングや設備との取合い | 泉幸甫/計画性を超えた自然との出会い
『環境から考える』    講師:半田雅俊/日射取得率も考慮に入れた実践的断熱設計
『手づくりをいかに残すか』講師:泉幸甫|山本成一郎|藤原昭夫/ロジステック、鋳鉄による架構他

 

■2年生 見学コース 家づくり学校2年生コース
     建築生産の現場を知る(年8回)

『石』       講師:植松時四郎(石屋)「深大」/
          稲田石の採石場、加工工場見学 (茨城県笠間市)
『植木』      講師:佐伯四郎(植木屋)「佐伯造園」|
          内田清市(植木材料屋)/曼珠苑の植木畑 (東京都調布市)
『建具』      講師:荒川義昭「荒川木工所」/
          秩父にある木工所群(埼玉県比企郡)、荒川木工所(東京都昭島市)
『古材・再生素材』 講師:安井正/古道具店「柳沢商店」(東京都葛飾区)、石膏ボード再生工場(埼玉県八潮市)
『古建築』     講師:山本成一郎/日光東照宮(栃木県日光市)
『左官』      講師:木村一幸「木村左官工業」/富沢建材(東京都中野区)
『木材』      講師:古川泰司+上林規男(きこり)/
          埼玉県秩父山中、金子製材(埼玉県秩父郡)、岡部材木店(埼玉県飯能市)
『和紙』      講師:久保孝正「久保昌太郎和紙工房」/
          東京松屋(東京都台東区)、久保昌太郎和紙工房(埼玉県比企郡)

 

■3年生 課題コース 家づくり学校3年生コース
     具体的なテーマについて講義と演習課題(年8回)

『茶室』  計2回 講師:川崎君子 
          講師の設計による茶室で茶事の体験、設計の講義後、
          実際に存在する茶室の改善案作成。
『屋根』  計2回 講師:徳井正樹 
          講師が開発した新作瓦を見学、屋根の役割について
          講義後、「雨と熱」の視点での屋根のデザイン提案。
『工法から考える』 計2回 講師:藤原昭夫 
          東日本大震災における仮設住宅をはじめ、講師が考案した新しい工法の紹介の後、国内の林業活性を
          念頭に、木質系素材を主原料とした工法の提案。
『自然』  計2回 講師:松原正明|講師:安田滋(安田滋アトリエ) 
          講師が設計した田園風景の中の週末住居を体験後、ローテク・ローエネルギーによる
          「自然に溶け込む夫婦二人の小さな家」を設計提案。

 

■4年生 スタジオコース  家づくり学校4年生コース
     実際の敷地が与えられ、4人の実績ある建築家から一人を
     選び、そのアトリエで設計をまとめる。(年8回)

川口通正 / 川口通正建築研究所 
       素材に精通し、狭小住宅をはじめ多数の住宅を手掛けた建築家の
       もとで設計をまとめる。
半田雅俊 / 半田雅俊設計事務所 
       パッシブソーラー等環境に配慮した住宅に精通する建築家のもとで設計をまとめる。
本間 至 / ブライシュティフト
       住宅の間取りや美しさを構築的に追求する建築家のもとで設計をまとめる。
諸角 敬 / スタジオA(アー)
       多様な手法を使い分けながら美しい空間を追求する建築家のもとで設計をまとめる。

 

(※印は、家づくりの会会員建築家)

年度ごとに講師、講義内容を少しずつ変えていくことにしている。
上の学年がリピーターとなって下の学年を受講し、学年相互のコミュニケーションも図れるためである。
また、産休・育休などからの復学や、年度途中からの受講など、学生個人の状況に対し、少人数だからこそできる柔軟な運営体制をとっている。

 

講義外の活動として、講義後の懇親会(毎回)、SNSによる意見交換、講師の住宅完成見学会、学生主催による修学旅行(全学年参加)など積極的に行い、学生同士だけでなく、講師との間も身近な距離でコミュニケーションを図っている。

 

学生との間に身近な関係をつくっていると、例えば、こんな声が学生から聞こえてくる。
「1年で既成概念を覆され、2年で生産現場を目の当たりにすると、そのまま上に進むのはもったいない。もっと自己修練を積んでから、3年の課題や4年の建築家スタジオに臨んだ方が自分のためになるのではないか」
「4年を1回きりで終わらせたくない。今度は○○先生のスタジオに入りたい」
我々としてはそういった学生の心の変化を歓迎し、前述のように、「休学-復学」の道筋を設けたり、4年を複数回受けることを認めたり、柔軟な運営をしているわけである。

 

2. 教育活動としての周知の状況

・「新建築・住宅特集」「新建ハウジングプラスワン」「建築ジャーナル」で、家づくり学校の活動を掲載。

・講義内容をまとめた「実践的家づくり学校―自分だけの武器をもて」(彰国社)の発刊。(全国の書店で販売)

・我々の授業のオリジナリティやクオリティを保つために、少人数制であること、意識の高い設計者に受講してもらいたいことから、広告による周知活動は行っていない。その代わり、運営母体であるNPO法人「家づくりの会」では、催事のあるたびに本校の活動を報告し、設計者のみならず、様々な建築関連企業に「家づくり学校」が認知されるよう心がけている。

 

これらの周知活動のほか、在学生が友人に薦めることも多く、東京で行っている月1回の学校であるにもかかわらず、青森、宮城、福島、静岡、三重、富山、兵庫、福岡といった遠方からも通ってきている。
これまでの5年間で100名を超える設計者たちが、本校を受講している。

 

3. 教育の効果

ものづくりにおいて利益追求型の既成の仕組みにとらわれない、自分の置かれている立場から得た狭い知識に固執しない、といった設計者としての意識改革がまずは大事であると考える。

 

1年間の講義終了後に提出してもらっているレポートを読むと、間取りの考え方、照明の選びかたといった具体的な知識の習得のほか「建築家として深く追求する姿勢」「高い目標を見つけて設計者として生きることへの覚悟」など挙げていることを特筆したい。
また、学校側で用意しているSNSでの学生の活動を見ると、入学当時と比べはるかに、活発に議論に参加し、学生自身の仕事内容や活動に反映されつつあるのが判る。
学生一人ひとりが、実に個性的で、在学中より素材の生産地との関係を作ったり、独自に温熱環境に取り組むようになったりと、それは多岐にわたり、各自が独自のテーマを発見しつつあるようである。
人的ネットワークについても、学生同士で情報交換をしながら明快な目的を持って独立する例や、既に事務所を持っている者が職人とのつながりを意識して仕事している例などが確認できる。

 

4. 教育活動を通した社会への貢献の程度

大学を卒業後に社会を経験した後、もう一度学びたいと思っている者は多い。
非住宅系の設計事務所から独立し住宅設計のノウハウを得たいと思っている者、住宅設計を主とする事務所に所属するものの主宰者の考え以外を実践する機会がなく、もっといろんなことを知りたいと思っている者、実に様々である。
いずれの場合も、社会で活躍する建築家の生の声を聞きたがっている。
「家づくり学校」は、そういった若手設計者に門戸を開いたが、当初想定した独立前後の設計者のほかに、工務店設計部に所属する設計者も多くなり、当校で得た知識を組織に持ちかえって設計の質を上げようとするケースも増えてきた。

 

個人事務所を開いている学生の具体例では、名古屋で設計している学生が、2011年入学以降「すまいる愛知住宅賞」「愛知県住宅供給公社理事長賞」「愛知県森林協会長賞」「愛知まちなみ建築賞」などを受賞しており、その手法は当校で体得したものづくりをまさに実践したものである。
また、柏市で設計している2009年入学の学生は、「かしわっ子主義お店デザインコンテスト」という地元密着型コンペでグランプリを受賞した。

 

以上のように、我々の行っている教育活動は、個人による設計、組織による設計によらず、自立した設計者への道を支援していることになる。
ひいては、日本の住宅産業界の「設計の底上げ」、また社会資本としての「住宅の質」を高めることに、微力ながらも着実に貢献しているのではないかと考える。


どうかこれからも皆様のご支援をよろしくお願い申し上げます。

家づくり学校校長 泉 幸 甫
NPO法人家づくりの会 代表理事 根來 宏典

「第2回 家づくり大賞展」開催いたしました。

第2回家づくり大賞展_01
3月16日、日曜日に一日だけではありましたが、TOTO新宿ショールーム7階イベントスペースに於いて「第2回家づくり大賞受賞作品展」と表彰式、ゲスト審査員による講演会が行われました。

 

第2回家づくり大賞展_発表風景

授賞者表彰式・作品発表の様子

 第2回目を迎えるにあたり、新しい企画として審査を公開としたこと、ゲスト審査員を招いたこと、部門賞にロングライフ賞を新設したことなど更に魅力のある大賞になるよう心がけてきたつもりです。
 今回の目玉ともいえるゲスト審査員にはデザイン評論家の柏木博さん、NHKのプロデューサーで「ブラタモリ」など手がけた尾関憲一さんをお招きし、応募作品の中から各一点を特別賞として選んでいただいたことです。
家づくりの会選考の作品、一般選考の作品とも違った作品を選んでいただいたことは興味深いことでした。
第2回家づくり大賞_トークショー風景

ゲスト審査員2名によるトークショーの様子

また会場では講演とトークショーを行いましたが、その中で新しい家が住む人を変えるパワーを持っていること、住宅の中の小物が住人の人生を物語っていることや街歩きを楽しむポイントの話など、建築家ではなく建築周辺に関わっている人ならではの話を聞くことができ楽しく、また貴重な時間を過ごすことができました。

 

 紙面の都合上、各部門別の受賞に至る経緯や、作品の簡単な解説は「第2回家づくり大賞」サイトに記載しておりますので応募作品と併せてご覧下さい。
一般選考での受賞作品と会選考の作品の違いや、一次投票で高得票でありながら受賞を逃してしまった作品など、比較いただけます。
第2回家づくり大賞展_展示風景01第2回家づくり大賞展_展示風景02

 

[家づくりニュース2014年4月号掲載]

ビニールハウスだって設計しちゃいます。

ビニールハウス模型_諸角

模型。左下にあるのが1ユニットの形状


ビニールハウス工程_諸角

工場で仮組した様子

ビニールハウス。
そう、あの細いパイプでできているビニールハウスの設計をしました。
実は昔からビニールハウスって以外と綺麗だなって思っていたんですが、ひょんなことから以前設計した施主に頼まれ私なりに挑戦してみました。
奥様が家庭菜園に凝っているとかで、ビニールハウスとキウィを絡ませることのできるパーゴラがほしいとのこと。
既存のビニールハウスが敷地の中に建つのはちょっと違和感があるとのことです。
最初は鉄筋のメッシュを組み合わせてできないかと考え見積もりにも出したのですが、何せ構造体は10mmの鉄筋だけ。
ビニールハウス工程_諸角

工場で仮組し

それを鳥かごのように組む構造はやったこともなければ見たこともない代物ですから、まず引き受けてくれないしやっと一社から出てきた見積もりもとんでもない金額でしかも四隅に柱まで勝手に追加してくる始末。
これをあっさりとあきらめてもう少し幾何学的にきちんと解いた上で、施工の方法もこちらで考えた上「難しそうに見えるけども実は簡単だ!」と言えるような理論武装まで用意して造ったのが写真の構造です。

 

ビニールハウス工程_諸角

骨組みにビニルを張って完成

30mmのアングル4本と27.2φのガス管一本で約13kgの一つのユニットを造り、そのユニット20個を現場にてボルトで緊結して組み立てています。
20のユニットは重ねあわせてスタッキングできる形状ですからトラック一台で運んで、一日で組上げることができました。
ビニールハウス-接合部_諸角

接合部の見上げ

 

 

[家づくりニュース2014年3月号_掲載]

自然エネルギーに感謝 2

半地下に置いてある薪ストーブと太陽熱を床下へ送りこむ白いダクト。
暖気はゆっくりと上昇し家中を暖めてくれる。


太陽と薪で暖まる家の断面図

よく晴れた冬の朝9時過ぎになると屋根が軋んでミシミシと音を立て始めます。
板金が熱で膨張して鳴る音なのですが、この音が聞こえてくると嬉しくなります。
太陽熱が屋根に降り注ぎ、家の暖房が働き始める合図なのです。
しばらくすると取り入れのファンが回り、暖かい空気が屋根裏から地下へと送られ、夕方4時頃まで家全体を暖めてくれます。
そして陽が沈み冷え込んでくると薪ストーブの出番です。
まだ太陽の恵みで暖かい部屋に赤々と燃える火が点くとその炎は心に安らぎを与え、太陽と薪の暖かさが体の芯までしみ込んでいきます。

 

半地下から真直ぐ延びる煙突

東京板橋区のはずれにある私の家は、薪ストーブと太陽熱により地下からロフトまで四層になった29坪の家全体を暖房しています。
30坪ほどの住宅ならば、薪ストーブだけで家全体を暖房することが可能ですが、ご近所への煙の影響や薪の確保などに不安があり、太陽熱を利用した暖房方式も取り入れました。
屋根面に太陽熱を効率よく集める仕組みを作り、そこで暖められた空気を小さなファンで地下室の床下まで運びます。
送り込まれた空気の温度はせいぜい25度から30度程度と体温よりも低い温度ですが、冬の室温として考えれば暖房として充分に働きます。基礎的な室温は太陽熱で暖め、曇りや雨の日と夜は薪ストーブで暖めるという考えです。

 

薪ストーブを燃やせばCO2を排出するのでは?と思われそうですが、薪は元をたどれば太陽の恵みから生まれたエネルギー、カーボンニュートラルと言われるCO2排出量を増やさない持続可能なエネルギーです。
また、東日本大震災の時に薪ストーブが活躍したことで、非常時に強い薪ストーブと注目もされました。最近では東京でも雑木林の萌芽更新のために伐採した木を薪ストーブ利用者に無料で配布する自治体があらわれてきています。
薪ストーブユーザにとって燃料となる薪を集める環境が少しずつ整いつつあり、都市部でも薪ストーブは徐々に身近なものなってきたようです。

 

薪ストーブや太陽エネルギーを利用した暖房システムは、それによって快適な生活をおくれることはもちろんですが、日々自然の恵みを感じながら過ごす喜びを与えてくれます。
薪を使うことで自分の周りにある里山や自然環境に触れ、太陽熱を使うことでひなたぼっこの暖かさを毎日感じることができます。
自然のエネルギーに感謝しつつ薪ストーブの暖かさを享受できるありがたさを感じる6年目の冬です。

 

[家づくりニュース2014年2月号掲載]

あけましておめでとうございます

いよいよ今年4月より消費税が8%になりますね。
さらに2015年10月には10%に引き上げられる予定だそうです。
昨年秋頃から建設業界は、駆け込み需要の影響で混乱が生じました。
増税後は、どのような経済状況になるのかの不安はありますが、
家づくりは後悔しないよう、焦らず自分のペースで、と願っております。

さてそんな中、家づくりの会には今年も明るい話題があります。
事務局を移転します。
場所は千代田区三番町、最寄り駅は市ヶ谷駅になります。
三番町というのは、皇居、高級住宅街、大学、大使館のあるイメージ良い場所です。
すでに物件契約も済ませ、リフォーム後には正式移転となります。
横長間口のフロント全面ガラスの路面店ですので、事務局というよりは、
家づくりギャラリーとしての趣が強くなると思います。
新耐震基準の建物でもあるので安心できます。
新たなる出会いの場、情報発信の場として生まれ変わります。
我々家づくりの会のメンバーとしても新たなる拠点となる訳ですから、
とてもワクワクしております。
早春のオープンを目指しているのですが、
問題はリフォームするに当たっての職人の手配です。
関係者一同、力を合わせ、早くお披露目できるよう進めて参りたいと思います。
焦らず、自分たちのペースで。

家づくりの会の新たな拠点整備の成功とさらなる躍進を祈って、
新年の挨拶に代えさせて頂きます。

2014年1月吉日

NPO法人 家づくりの会

代表理事 根來 宏典 

49年前と7年後

国立近現代建築資料館_展示室

真新しい資料室は、中央の展示台を取り囲むようにガラスケースが設けられている。

少し前ですが、湯島にある「国立近現代建築資料館」へ行ってきました。
こちらは今年開館した文化庁の施設で、旧岩崎邸庭園の隣にあるといえばお分かりの方も多いのではないでしょうか。
この施設は、世界の文化芸術の重要な一翼を担う存在となっている日本の近現代建築について、その学術的、歴史的、芸術的価値を次世代に継承するためにつくられたそうです。
貴重な図面や模型について、劣化、散逸、海外への流出等を防ぐことを目的として、各機関との連携のもと、国が責任を持って収集、保管を行うということです。

さて、その開館記念特別展示として、「建築資料にみる東京オリンピック」が行われ、早速見学に行ってきました。

国立代々木競技場_模型

初期につくられた国立代々木競技場の模型。
周辺施設や吊り屋根構造について、計画が明確にわかる貴重な資料である。

1964年に開催された東京オリンピックは、1970年の大阪万博と共に戦後日本の復興を象徴する大イベントでした。
高度経済成長という未来への確かな希望のもとに、国全体が大きなうねりの中にいた時代です。
この時つくられた丹下健三設計の国立代々木競技場は、当時の技術の粋を尽くして建設され、吊り屋根構造を用いた伝統と近代が融合した新たな建築を示しました。
新国立競技場_計画案模型

女性建築家のザハ・ハディドによる新国立競技場の計画案模型。
ボリュームも大きく、独特なフォルムは、周辺環境との関係や膨大な建設費などと共に話題をよんでいる。

また現在、二度目のオリンピック招致の目玉として、新国立競技場建設の国際コンペが行われ、女性建築家のザハ・ハディドによる近未来的な流線型フォルムの案が採用されました。
これら新旧二つの国家的プロジェクトが当時の詳細な図面や模型と共に紹介されていて、建築の持つ大きな力と希望が感じられる、とても見ごたえある展示となっていました。
折しも先日、2020年の東京オリンピック開催が決定しました。
開催については当然のように賛否両論があります。
しかし、超高齢化社会への備え、経済状況の動向、原発の問題や被災地復興などたくさんの問題を抱えながらも、社会全体が7年後を一つのメルクマールとして進んでいくのは確かのように思います。
当時とは違う、量より質という成熟した社会の中で、私たちはこれまでにない新たな変革を経験していくことになるのでしょうか。

[家づくりニュース2013年12月号_掲載]

無垢のテーブルを作る

テーブル①_本間

棒脚のテーブル。天板はナラ材のブックマッチ。


テーブル②_本間

板脚のテーブル。誕生日席には座らない想定で脚の位置を決定する。

私のアトリエの打ち合わせ室に置いてあるテーブルから始まり、今までに40卓程の無垢のテーブルを作ってきた。
実際に制作するのは、山梨県勝沼にアトリエを構える家具職人の古市氏。
私が図面を描き、その図面をたたき台とし、細かい納まりについて意見交換しながら最終的な形を決めていくことになる。
無垢の木はある意味で生きており、反ったり、縮んだり、経年変化で木の色合いも変化する。
テーブル⑤_本間

直径1m50cmの丸テーブル。
脚は中央に1本だけ。

工業製品として作られている家具とは違い、それらの変化を許容しつつ楽しむことができれば、その家具は暮らしの中で一つのシーンを刻み、家族の歴史と共に生きることになる。

テーブル③、④_本間

箱脚のテーブル。
座卓としても使うことができる。

テーブルに使う材料はナラ材が多いが、その他に、栗、タモ、ウォールナットなどで作ることもある。
天板の大きさにもよるが、食堂のテ—ブルは、80cm以上の奥行きが必要になるので、一枚板で作るとなると、コストに大きく関わって来るので、通常は何枚かをはぎ合わせて作ることになる。
また、テーブルを作るのに際して、材料の選択以外に大切なことは、テーブルの高さと脚の形状がある。
一つ一つがオーダー品なので、高さ寸法も自由に設定できるため、使う家族の好みによってその高さは微妙に変わって来る。
そこで使う椅子の形状によっても違ってくるが、67cmから70cmの間で提案することが多い。
脚の形状は、テーブルを囲んでどの位置に座るかで大きく違って来るが、棒脚、板脚、箱脚、そして丸テーブルの場合は中央に1本脚と、様々な選択肢を提案の引き出しとして持つことにしている。

どちらにしても、その家族だけのテーブルが置かれた空間は、その家の重心となり、家族皆が集う場所になる。

[家づくりニュース2013年11月号_掲載]

20年後のリニューアルで外観が一新したアトリエ棟

30数年前イラストレーター夫妻のために設計した、RC造3階建て住宅兼アトリエの建つ東側隣接地が売りに出たとのことで、夫妻は迷うことなく手に入れました。
以前から手狭になっていたアトリエを此の期に、新たに別棟としてアトリエ棟を建て、既存建物の3階テラスと新しいアトリエ棟を繋げることを前提とした設計を私に依頼してきました。
それは今から数えて20年前のことです。

20年後のリニューアルで外観が一新したアトリエ棟-写真01

(写真―1)内外打ち放しコンクリートの外壁で、グレーのスティールサッシュの竣工時のアトリエ棟。

設計は新しく買い足した南北長方形敷地に合わせる形で配置し、地下1階地上3階建てで、3階の北西部を既存建物のテラスと繋げるようにするためレベル調整をし、地震時の揺れの違いに対応できるように新築建物のキャンティ・スラブをテラスと連続する部分に若干の隙間を取り、双方の建物に支障なく安全に行き来できるようにするために、ディティールを慎重に詰めたことを覚えています。
デザインに大変こだわりのある夫妻のために、アトリエ棟は既存建物同様シンプルな立方体のボックスで、二人の好きな指定色の真赤なエントランス扉がポイントで、それ以外は内外ともに打ち放しコンクリート仕上げです。
開口部全てはオーダーしたスティールサッシュで面内に納めることで、外観に陰影が生まれることを意図し、色はグレーの焼付塗装です。(写真―1)

それから20年、竣工当初の写真のようにシャープで美しかった打ち放しコンクリートも時の流れで輝きを失い、リニューアルにあたり夫妻の発案で、外壁は既存住宅棟と同じ真白に吹き替え、スティールサッシュは玄関扉の真赤にすることになりました。
若干の不安があったものの、足場が外れてリニューアルした純白のアトリエ棟の前に立って微笑んでいる夫妻を見て、私もほっとした次第です。(写真―2)

20年後のリニューアルで外観が一新したアトリエ棟-写真02

(写真―2)リニューアルをして純白の外壁に真赤に縁どられた開口部、後方に3階の既存建物との連絡部分が見えます。

[家づくりニュース2013年10月号掲載]

原木を見に行く ~南会津~

原木を見に行く ~南会津~_01

乾燥中の様々な木材

12〜13年来お付き合い頂いている南会津の材木店、オグラさんに今年も建て主さんご家族と出かけてきました。
目的は様々な樹を見つつ、新居に使うオニグルミの床材を丸太(原木)の状態からご覧頂き、製材し床材になっていく一過程を見学して頂くことです。

原木を見に行く〜南会津〜-02

オニグルミの原木、30坪の床材をつくるのに40〜50本使う

設計の打合せを進める中で、建て主さんは数ある選択肢の中から
 ① 国産材であること
 ② 木目や色味が優しい印象、
   柔らかい触感であること
 ③ 幅広、適度に長尺であること
  (広葉樹が広葉樹らしく見える)
をキーワードにこのオニグルミを選ばれました。
原木を見に行く〜南会津〜-03

製材開始(左上)⇒徐々に木目が見えてくる(左下)
床材は赤味の部分だけが使われる(右)

この材は安定的な大量供給が難しい樹種であることから、流通品カタログではあまり見かけず、あっても巾狭でオニグルミらしさが表出されていないことが多い材です。
ただ私的には、その色艶(経年変化と共に飴色を増し独特の艶が出ます)や素朴な木目が色気ともとれるような(先日某家具屋さん店長は母性の塊のような木だと話されていました)材であることに長年魅力を感じ続けています。

原木を見に行く〜南会津〜-04

厚み18mmで仕上げるために乾燥前は24mmで製材する

このオニグルミの床材、最近は原木の多くが岩手から仕入れられ、巾150mmと105mmの2種類、厚み18mm、900~1800mm乱尺がオグラさんでつくる松本事務所ver.です。
多くの人の手を介して「つくる」家づくりのほんの一部分、とはいえ愛着湧く住まいづくりのある一家族の一場面です。

[家づくりニュース2013年9月号掲載]

感覚的住宅考

感覚的住宅考_01

階段で各室が繋がるスキップフロアの家

私が若い頃、住宅はボケてるくらいがいいんだよと大先生に言われたことがあるのですが、なかなか示唆に富んだ言葉です。はっきりしない、ボヤけている、と考えていましたが、真意は曖昧です。

和洋折衷の住宅のツクリは日本独特のスタイルですが、デザイン的にはボケてるボヤけていると言ってよいのでしょう。
また、微妙にずれてしまった納まり、木目、色等も、同様に感じるかもしれません。重厚な素材を使ったものは重苦しく感じ、テカテカツルツルした塗装は落ち着かず、アルミやガラスは軽く感じ、ボヤけた感じとは対極にあるように思います。

新宿区神楽坂にある熱海湯
富士山のペンキ絵
[ネット画像を転載]

オフィスビルには上記の対極にある素材が多く使われています。
仕事をする場には緊張感がある空間がよいのでしょう。
とはいうものの、オフィスの中にもリラックスできるための部屋をつくり、新しい発想をしましょうという会社もあるようです。
銭湯やら、テーマパークやらのコーナーを作ってリラックスしましょうというのはトボケている?ような気がしますが、そういうことも受け入れられる時代になったのでしょう。

バリアフリーに配慮することとなると床は平らな方が良いのでしょうが、段差のある床や階段という不安定な部分が視覚的に入ることにより、只々広い部屋や狭い空間をも豊かにする気がします。
均質な中にどこかズレた部分があったり、透けたり、抜けたり、重ねたり、という空間構成と共に、手作り感の持つ温かさがあることは住宅建築に必要な条件でしょう。

居間~食堂に段差がある家     玄関兼階段室         小住宅の玄関階段

「なーんかいいんだよねーこのうち」と言われる家をつくりたいと思いますが、なかなか難しいことです。

[家づくりニュース2013年8月号_掲載]