【 2人家族 】
■ 森のあとりえ

仲間が集い語らう大空間のLDK、赤いキッチンが心を高揚させます

窓の向こうには四季折々に表情を変える安曇野の景色が広がります
「いつもと違う暮らし」を楽しむため、オフホワイトと木を基調とした作りの中に玄関ドアをはじめとする赤・青・緑の「色」や「模様」などポップな要素を取り入れました。
「色・模様」を取り入れる事で建物は全く違った表情を持ち、それらを目にする事で視覚的な面から心の高揚感が溢れ出し、住まい手の個性が溢れた「いつもと違う暮らし」が生まれました。

お客様を明るく元気よく迎えてくれる赤い玄関ドア
もう一つの「いつもと違う暮らし」は、北アルプスに面した南・西面には大きな窓とテラスを設け、四季折々に移りゆく北アルプスや里山の風景、森を吹く風、沢を流れる水の音、しんしんと音を立てずに降る雪さえもがまるで自分だけのためにあるかのように感じます。
35畳という大空間のリビングでは、集まってくる仲間達も自由に料理を作ったりお喋りを楽しんだりして、「いつもと違う暮らし」に触れてもらおうとの思いから、赤い扉のオープンなアイランド型キッチンが設置されています。
建築DATA 1階床面積 : 21.97㎡ ( 6.64坪) 〈家族構成〉
2階床面積: 114.11㎡ (34.51坪) 夫婦など
延べ床面積: 136.08㎡ (41.16坪)
構 造 : 木造2階建て
[家づくりニュース2016年5月号掲載]
- 2016.05.17
- 建築家:山下 和希
- アトリエ・アースワーク
■ 二人の小さな家

[室内]東南コーナー窓

[外観]二階角が窓です
総二階、延床面積21・5坪の中に、将来用ホームエレベータースペースの押し入れがあり、階段含めて広さ10坪の居間食堂では、少し狭苦しい感じがします。
そこで広がりをつくり出すために、東と南に単独の窓を設けるのではなく、二階の南面の東西の両角を窓にしています。
耐力は中央の壁で担います。
コーナーを窓にすることで、両角が開放され、空間が拡大して感じられます。
その上で、空間ボリュウムも大きくするために室内は勾配天井とし、中央部を高くし、下り天井面をそのまま、1m跳ね出した軒裏天井に連続させ、部屋が外部まで延長されてあるように見せます。
小さくても開放感があり、春には窓外の並木道の桜が窓いっぱい目に飛び込んできます。
建築DATA 1階床面積 : 35.54㎡(10.75坪) 〈家族構成〉
2階床面積 : 35.54㎡(10.75坪) 夫婦
延べ床面積 : 71.07㎡(21.50坪)
構 造 : 木造2階建て
[家づくりニュース2016年4月号掲載]
■ 川間の家 〜 夫婦二人のペレットストーブのある家 〜

[居間]ペレットストーブのある居間。陽当たりも抜群
建て主さんの方からの主な要望は

[ダイニング]居間方向を見たところ。テーブル右側のガラスの框戸を開けると台所です
- 公園の桜が満喫できるような家。
- 暖房を兼ねた薪ストーブがほしい。
- 寝室はそれぞれ個室に。
- 気持のよい浴室がほしい。
- ネコがキッチンに入れないようにしたい。
でもキッチンの閉塞感はなくしたい。
それに対して、私がそれぞれに提案したのは
- 1階の居間・ダイニングから公園の桜が見えるように大きな開口部
を設ける。
予算的に木製建具はできないが、アルミサッシでもアルミ部分が目
立たないように工夫。
2階の畳の部屋が花見の特等席。 - 着火や消火が簡単で、煙突掃除も薪ストーブほど手の掛からない鋳
鉄製のペレットストーブを提案。
ストーブの廻りに耐熱を兼ねた大谷石を積んで雰囲気造り。
暖房器具はこれ一つで大丈夫。 - 寝室は別でも、調子の悪いときにお互いの気配がわかるような工夫
を提案。 - ハーフユニットバスを使いながら、壁天井は檜張り。
外から覗けない坪庭も造って温泉気分満喫。 - キッチンからダイニングを通して外が見えるように開放的にしなが
[浴室]朝風呂派のご夫婦に大好評の温泉気分の味わえる浴室
らもネコが入れないように鍵付きガラスの框戸を設置。
他にもいろいろなやりとりの結果、時間がゆったりと流れるような住宅が出来上がりました。
今度は桜の季節に点検に伺う予定です。
ちょっと楽しみ!

[公園から勝手口方向を見たところ]春には公園の桜を満喫できます
建築DATA 1階床面積 : 58.87㎡(17.8坪) 〈家族構成〉
2階床面積 : 38.92㎡(11.7坪) 夫婦
延べ床面積 : 97.79㎡(29.5坪)
構 造 : 木造2階建て
[家づくりニュース2016年3月号掲載]
■ つづら折りの家

東南の木製建具を開放して中庭を取り込む

南側外観、両脇のモミジと外露地
今は誰も住んでいないこの家をゆっくり眺めては歩き、また立ち止まっては眺めたり、敷地内外を歩き回りました。
「家」と「庭」を丁寧に手入れされながら、自然を身近に感じてお住まいになっていたであろうこの平屋の、この場所の光と湿気を含んだこの空気感を体に覚えさせる事が、ここでの家づくりのスタートになると感じました。
モミジや紅白の梅などの庭木や瓦・敷石・大谷石など残せるものは出来るだけ残し再利用することにして古家は解体、敷地は南北に長く二等分されました。
新しい住まいは近隣の緑と敷地内の緑を注意深く繋げ、豊かな景観に育つよう配慮し敷地内外に奥行きのある住空間を提案しました。

広間から階段方向を見る
秩序の中のわずかなズレが親しみやすさを生み、家族を穏やかな気持ちにさせるのではないか、機能性や効率最優先からほんの少しだけ距離をとることで、そこには何か情緒が形になって現われるのではないかと考えたのです。
ささやかであっても日々の美しい生活を豊かに味わう、そんな住まいになればと建て主家族と一緒に夢を描きました。
photo:Masao Nishikawa
建築DATA 1階床面積 : 69.69㎡(21.08坪) 〈家族構成〉
2階床面積 : 35.60㎡(10.76坪) 夫婦
延べ床面積 : 105.29㎡(31.85坪)
構 造 : 木造2階建て
[家づくりニュース2016年2月号掲載]
■ 松が崎の住まい
撮影:小川 重雄

南道路から玄関までの造園アプローチ。
設計段階では息子さんから近代の名作住宅建築や好みの空間について写真や映画のシーンからお話し頂き、建築専門でない方からの感想など伺う事ができ、視野の広がる時間を共有させて頂きました。
一方で私が個人的に好んで用いているオニグルミの原木(床材に使用しています)やその製材風景を見に、遠路南会津の材木店までご家族とご一緒頂きました。

1階リビング。柔らかい光が障子越しに差し込む。
敷地は南道路、北側に小さな林の見える豊かな周辺環境を暮らしに享受したく、結果LDKは南北両方に開放したプランニングとなりました。
プライバシーを意識し高めの塀に囲まれた南庭、2階インナーテラスを介した吹抜からは朝陽がダイニングに差し込み、住まいを南北にぬける心地よい風が通ります。
回遊動線や立体的な連続感からは住まいの一体感を得て、実質以上の広がりを得られていると思います。
そのほか、障子や鍛鉄の薪ストーブ、空間に繊細さを加える格子戸、漆喰や土壁、四種の広葉樹の板、力強い赤松の梁・・・etcなど用いて『自然を享受し、楽に楽しく自然体で暮らす住まい』を試みています。
竣工間際には雑木林と少々茶庭なども連想させる玄関への造園アプローチができ、最後に建主さんこだわりの家具が入った際は、住宅が生き生きと感じられた瞬間でした。
お引越後も、何かと口実をつくってはお邪魔させて頂いておりますが(笑)、年月を経ると共に徐々に味わいを増し、より豊かな暮らしを育む住宅になってほしいと願っています。
建築DATA 1階床面積 : 63.28㎡(19.14坪) 〈家族構成〉
2階床面積 : 55.53㎡(16.80坪) 母+息子
延べ床面積 : 118.81㎡(35.94坪)
構 造 : 木造2階建て
[家づくりニュース2015年3月号掲載]
- 2015.03.01
- 建築家:松本 直子
- 松本直子建築設計事務所
■ 宇須の家
旧市街地・和歌山市宇須にての建て替え
撮影:長岡 浩二

ファザードから玄関・中庭に続く庇。
『宇須の家』は和歌山城下中心部にあり、古い民家が数多く残る旧市街地に計画されました。
世代が進むことで町並みが変わり、そして新旧が混在しながらも移り替わる様子が伺えます。
また、依頼主であるご夫妻は築75年経過した町家を購入されその後、この家で15年間子育てをされた後に建替えを決意したと言われます。
自分たちがシニアになり、子供が成長したから「こんどは我々の楽しむ番」との事。
新築する建物が与える周辺環境への配慮を第一に考え、時間の経過と共に町並みと調和する住宅になる様願われました。
平面計画としては敷地の特徴より、間口が狭く奥行きが長い敷地ゆえに、(間口8m╳奥行30m)建物の中央に坪庭を設ける事で、リビング・ダイニング、2FMBR(主寝室)への通風と採光を取るようにしました。
ウナギの寝床スタイルではどうしても玄関までの距離が長く成る、その部分に幅1.6m╳長さ12mの庇を採用しました。
そうする事でファサードを印象付ける形となり、何より急な降雨時にも安心して玄関まで辿り着く結果を生みました。
ご夫妻から出された第二の希望は、子供たちが巣立った後でも戻ってこれる場所を残したい。
その為に和室が2室必要との事。そして子供たちが一緒に住まなくとも、子育て時に残した思い出の絵や写真を飾る事が出来る壁を作りたいとの事でした。
私が提案した場所は誰の目にも触れる玄関先でした。
また、造船会社を経営される傍ら、思い出の品である舵をその壁に飾り付けました。
この家の設計をさせて頂き学んだ事は、住まいは家族の思い出作りの場所であり、そしていつでも戻って来られる場所で有る事でした。

左)リビングより玄関先を見る。 右)玄関先の階段室。思い出の絵を飾る。
建築DATA 1階床面積 : 85.69㎡ (25.92坪) 〈家族構成〉
2階床面積 : 85.69㎡ (25.92坪) 夫婦
延べ床面積 : 171.38㎡ (51.84坪)
構 造 : 木造在来工法2階建て
[家づくりニュース2015年3月号掲載]
- 2015.03.01
- 建築家:山下 和希
- アトリエ・アースワーク
■ 千鳥の家 − 家と暮らしのリノベーション −
撮影 : 吉田 香代子

内部は全室引き戸でつながるバリアフリーな空間に、生活スタイルも低めのテーブルを中心とした椅子座に見直しました。
築50年の古い木造家屋に住む娘さんと高齢のお母さまのためのリノベーションです。
耐震改修は区の助成を受けて基礎や木造躯体を補強し、使える屋根や外壁、開口部は部分的な改修とメンテナンスでコストを抑えつつ、内部は大幅に造り直しました。
お母さまが暮らす1階はLDKと寝室、水廻りが引き戸で繋がるバリアフリーな空間に、2階の和室4部屋は娘さんの仕事場と寝室に全て改修しています。
壁や床、特に天井裏には十分な換気口と断熱材を入れ、既存窓にはインナーサッシを取付けて温熱性能を確保し、直接手や足が触れる床やカウンターはいつものように木の無垢材を使い、壁や天井は土佐和紙などの自然素材で仕上げています。

丁寧に手を加えて直した家は、住まい手はもちろんのこと街並みにも優しく馴染みます。
物をあまり増やさず広々と暮らせるように、食事だけでなく休息や家事作業もこなせる通常よりも奥行きがあり低めのテーブルを製作し、椅子も座面が低く広めで多用性のあるものを吟味しました。
大勢集まった時には箱脚を倒して座卓にも早変わり、横になりたい時には隣の寝室と引込み戸で繋がりベッドで寛ぐこともできます。
先日伺うと、吟味した椅子も揃いテーブルと椅子座の生活にお二人ともすっかり馴染んでいるご様子でした。
建築DATA 1階床面積 : 14.8坪 〈家族構成〉
2階床面積 : 15.8坪 母+娘
延べ床面積 : 30.6坪
構 造 : 木造2階建て
[家づくりニュース2014年12月号掲載]
■ 戸部の家/5M×5M House

LDKです。ロフトは開放的にしてLDKと繋がります。
道路に面した2方向は開口部を大きくし視線が抜けるよう検討しました。
横浜駅から1駅という都心に建つ小さな住宅です。

外観です。1階部分はサイディング、2階以上はガルバリウム鋼板です。建物の平面は5M×5Mで、高さは10M弱です。
商業地域で準防火地域ですので、規制は緩く木造3階建てには有利な条件と判断しました。
建て主さんは木を現したデザインを好み、構造材を見せる設計を希望されましたが、コストと木造3階建ての条件では難しく、規制の範囲内でどれだけ木の柔らかいの雰囲気を出せるかをテーマのひとつとしました。
また小さな敷地でローコストですから、なるべく無駄なく合理的に設計することも重要なポイントでした。
完成してみれば床は杉の無垢材、壁は左官材料と木や自然素材が持つ暖かみは表現できたと感じています。
LDKを3階に設け、オープンなロフトとリンクさせることで、縦方向にも視線が繋がり、また道路に向けて大きな開口を設けたことで、開放的で視線の通る住宅になったように感じています。
ベランダがなくて洗濯物を干す事に工夫が必要だったり、3階のLDKまで、階段を上らないといけなかったり、通常の住宅よりは変則的な事が多いですが、大事なところを残し、省けることは省くという決断でかえってスッキリした暮らし方が出来るのではないかと感じました。
工務店さんの努力もあり、コストもほぼ希望通りに納めることができました。
建築DATA 1階床面積 : 13.29㎡ (4.02坪) 〈家族構成〉
2階床面積 : 25.00㎡ (7.56坪) 夫婦
3階床面積 : 25.00㎡ (7.56坪)
延べ床面積 : 73.76㎡ (22.31坪)
構 造 : 木造3階建て
[家づくりニュース2014年8月号掲載]
- 2014.08.01
- 建築家:石黒 隆康
- BUILTLOGIC(ビルトロジック)
■ かぐや姫の家

ダイニングスペースとつながった一段上がった四畳半のスペース。六寸角の大黒柱もあります。

竹林をバックに建つ家。タケノコ掘りも楽しそう。
おじいさん、おばあさん、そしてかぐや姫の三人の家では勿論なく、まだお若い40代ご夫婦お二人の住宅です。
ご主人はとっても愛妻家の方なので、奥様がかぐや姫的存在なのかもしれません。
(とてもきれいな方です)
新しい家が出来て、ますます仲良く、楽しい生活を送っていただいているようです。

キッチン方向を見たところ。キッチン右側の引き戸を開けると奥さんご所望の糠味噌や梅酒や根菜類を置く土間スペースがあります。

① 2階には多趣味なご主人の趣味スペースがあります。
② ダイニング脇の奥さんの書斎スペース。
③ 洗い出しの床と植栽。植栽は家を優しく包んでくれます。
建築DATA 1階床面積 : 45.26㎡ 〈家族構成〉
2階床面積 : 35.32㎡ 夫婦
延べ床面積 : 80.58㎡(24.37坪)
構 造 : 木造2階建て
[家づくりニュース2013年12月号掲載]
■ 北杜の家

富士山側(南)から見た外観写真です。そよ風と太陽光発電が共存しています。小屋裏利用の2階はゲストルームです。
ここ数年、そんな方が増えていて、那須へ、安中へ、また那須へ、そして今回の北杜へと建て主さんを送り出しています。
まあ、それほど大袈裟な話ではなく、好きなところで好きな事をして、のんびりと過ごしたいだけの引っ越しです。
でも、最初に気になるのが普段の生活です。
余計なお世話かもしれませんが、買い物はどこで? 病院はどこに? 毎日何をするのか?
いろいろ気になりましたが、皆さんしっかりとそのあたりは押えていて、どこも心配の要らない環境が整っていました。

家を東西に貫く吹抜け廊下の木組み
見学会にも何度か参加され、事務所にもみえましたが、最終的には東京ビッグサイトでの朝日住まいづくりフェアに参加している時にお声が掛かりました。
このイベントは毎年5月に開催されていて、今年で3回目の参加になります。
一昨年のイベントから2年後の今年4月にやっと完成しました。
長期優良住宅、そよ風、エコキュート、太陽光発電、薪ストーブと盛りだくさんの上、セルローズファイバーと外断熱併用で高断熱化された木と漆喰の家です。
でも、つくりは木組みを見せてはいますがシンプルな住宅です。
この家の「一番」はまわりの山々と田園風景です。
富士山、八ヶ岳、南アルプスに囲まれた大自然の中での暮らしは快適です。
建築DATA 1階床面積 : 37.18坪 〈家族構成〉
2階床面積 : 11.00坪 夫婦
延べ床面積 : 48.18坪
構 造 : 木造2階建て
[家づくりニュース2013年7月号_今月の家_掲載]
■ 浜松の家
今回紹介する家は少々変則的な形での紹介になります。
できたばかりで、まだちゃんとした写真がないんです。
模型写真と実際の建物の写真がありましたのでそのお話をしたいと思います。

1/50の模型。色を決めるため色紙を貼ってどのようになるか
シミュレーションする。

実際にできた空間。模型と比べて大きな違いのないことが分かる。
これは設計者にとっても建て主にとっても大事なこと。
大きな空間の中にいくつかの小さな箱(部屋)が位置される構成なのですが、各部屋をみな同じ白っぽい色にした方が良いのか? 色を変えて小箱を強調した方が良いのか?
頭の中で考えていても分かりにくいので1/50の模型を作り、各小箱に色紙を貼って色々と確かめてみました。その確かめている時の様子が、右側上の模型写真になります。
実際にできたのが右側下の写真です。
大体模型のイメージ通りにできているのが分かると思います。
模型だけではなく3D-CADを使うこともありますが、studio Aではこちらは空間の構成を確かめる用途ではなく、日照のシミュレーションでもっぱら使っています。
夏や冬にどのくらい室内に日照が入るのか? また入ってこないようにするためどのようにすれば良いのか、など検討するときに使います。
模型写真の左側に見える白い壁は外部にある袖壁になりますが、これは西日を避けるために設けたもので、下の方に空いている正方形の穴はサンルームに日が入るように開けたものです。CADを使って壁の出や穴の大きさを決めました。
模型やCADを使うことで、今まで勘や経験に頼っていたものをより正確に設計できるようになり、快適な住宅づくりに役立てています。
建築DATA 1階床面積 : 25.4坪 〈家族構成〉
2階床面積 : 17.0坪 夫婦
延べ床面積 : 42.4坪
構 造 : 木造在来工法2階建て
[家づくりニュース2013年5月号_掲載]
- 2013.05.08
- 建築家:諸角 敬
- studio A(アー)
■ 矢来の家(減築)

2階板間:階段両側の壁を抜いて一体の空間(LDK)とした。
外周壁に作られた棚板には多くの書籍が収納された。
都心に建つ古い家を、過去の記憶を残しながら「減築」した、庭のある夫婦二人のための住宅です。
東京都新宿区の古くからの住宅地。親の代からの持ち家である築50年程の住宅にくっついて築40年程のアパートが増築された木造2階建ての建築に、若いご夫婦が住んでいました。
「古い住宅と増築されたアパートをリフォームして、家族二人と猫二匹が住みやすい家にしたい。」との希望をかなえるため、現地を拝見し案を練りました。
考えた末、DKとして使われていた味はあるが大分痛んできてもいた古い部分を思い切って「減築」し、そこに緑を沢山植えて庭とし、築40年程の主にアパートだった部分をリフォームすることにしました。
1階を土間、2階を板間として、階段と吹抜けでつなぎ家全体を一体の空間としました。構造上のバランスを考えて一部の窓を塞ぎ壁にしましたが、残した窓を取り換える事はせず、古い健全な柱や梁は極力残し表に見せました。
古い柱に沢山残る「貫穴」を埋めて白く塗り、もともとの建物の壁や開口部の位置の「記憶」を保ちました。
書籍を沢山持たれているご夫婦のために、壁にはぐるりと固定の厚い棚板を開口部の位置とは無頓着に回しました(写真のごとく、一番上の棚は二匹の猫の活動のために何も置かれていません)。
古い部分を作った昔の職人達に敬意を持ち、彼等との共作のようにして作り上げた住宅の内部空間には過去の温もりが伝えられることとなりました。

1階土間:簡素に作られた新しい内装は、以前からの障子とも馴染んでいる。
建築DATA 1階床面積 : 11.07坪 〈家族構成〉
2階床面積 : 10.57坪 夫婦 + 猫二匹
延べ床面積 : 21.64坪
構 造 : 木造2階建て
[家づくりニュース2013年3月号_今月の家_掲載]