【 ブライシュティフト 】の家づくり

ヒューマンスケールで居心地のよさをつくる

 家づくりの仕事をしていると、ヒューマンスケールという言葉を使うことがよくある。実体がない言葉だけにその本質は捉えにくい。ヒューマンスケールとは、どのようなことを指すのだろうか。
 身体寸法で考えた寸法を、単純にヒューマンスケールといっても、大人から子供までその身体寸法には違いがあるし、誰にでも適したスケールで空間をつくることは実際には難しい。ヒューマンスケールのスケールとは、個人個人に合わせた寸法ではなく、人が暮すうえで、落ち着きをもつことができるスケールのことのようだ。そしてこの落ち着きをつくり出すためには、プロポーションという概念が必要になってくる。
 ところが、これもまた感覚的な捉え方しかできない言葉であり、住宅に限っていえば、空間のプロポーションがよければ居心地がよいとも言えない。プロポーションのよさとは寸法的な釣り合いのよさを示すだけで、そこに暮らしのなかの所作に対する寸法的な検討がなされていないと、しっくりと納まったプロポーションにはならない。
 そんなことを思い、暮らしのなかの所作がスムーズに流れる寸法を各所に与えていくことが、この東久留米の家の家づくりだった。
 床面積は28坪の2階建て。家族3人(将来4人を想定)が暮らす家の広さとしては、とてもしっくりとした心地よさがあり、1階は階段を中心に回遊動線がつくられている。どの場所にいても進む方向に2つの選択肢があるので、実際より広く感じて暮すことができる。また、高さ寸法に関しても、食堂の天井高さは2m15cm、居間は2m30cm、そして居間の掃き出し窓の高さは1m92cm、どの寸法も、決して高いわけではないが、空間のプロポーションとしては、居心地のよさをつくり出したと思っている。
 4人家族であれば、20坪台の住宅で、十分に心地よい家が実現できると考えている。

ヒューマンスケールで居心地のよさをつくる_01キッチンから食堂と居間、そしてその先のテラスを見ている。
食堂のテーブルは、この家のサイズに合わせ特注で設計している。

ヒューマンスケールで居心地のよさをつくる_02居間からウッドテラスを見ている。
窓は木製のサッシで壁に仕舞えるので、居間とテラスは一体になる。
ソファーの後ろは引戸を開けると、大きな収納になっている。

1 階 : 14.00 坪      〈家族構成〉
2 階 : 14.00 坪       大人 2人
延べ : 28.00 坪       子供 1人

小さく暮らす、快適な家

 敷地面積22坪。整形地であればけして狭い敷地とは言えませんが、建て主さんの購入された土地は、三方道路に囲まれた矢尻のような不整形な土地でした。さらに、井の頭という静かで緑が多い地域だったために容積率が80%しかなく、容積いっぱいに建てても17坪しか建たないことになります。このように、敷地だけの状況を見ればネガティブな気持ちになってしまいますが、建て主さんは、敷地の持っているデメリットな要因を前向きに捉え、この敷地の持っている特徴を生かしながら家族4人が快適に住める家を希望されました。
 小さな敷地であるがゆえに、できる家もこじんまりとしてくるので、家族の距離感が程よく保てるアットホームな雰囲気を感じる家であってほしいといったニュアンスが伝わってきました。また、お子さんがピアノを弾かれるので、ピアノを気兼ねなく弾ける場を作りたいとの要望もありました。
 容積率いっぱいに建てても17坪。さすがに家族4人が暮らすのには狭く、そこで容積緩和が受けられる地下室を作ることになりました。そうすることで延べ床面積26坪まで可能となったわけです。このように、地下をつくることで各スペースの構成が縦に伸びることになるので、階段室の吹抜け空間を利用して家族の距離感を縮めることができるようにプランニングをしています。階段はその機能だけをみれば上下階を移動する装置ですが、単なる機能性だけではなく、日々の暮らしを豊かにする場所として考えてもよいのではないだろうか、と考えています。階段は家のなかで視線が上下動する唯一の場所であり、それによってまわりの見え方も違ってきます。また、吹き抜け空間として上下階の関係をつくり出す場所にもなります。このように階段室の特性をいかし、地下の子供部屋、1階の寝室、2階の家事コーナーが階段室と開口部でつながるようにしており、さらにそこに建て込んだ建具により、暮らしの状況のなかで開け閉めができるようにしています。
 階段室の下を利用した地下のピアノコーナー、居間の一角に建具で仕切ることができる家事スペース、それにLDKと3つの個室(寝室)が、階段室の吹き抜けを囲みながら家族の気配を伝えあうように配置されており、小さな家でも家族4人が快適に生活できる家になったと思っています。

小さく暮らす、快適な家
玄関から階段室を見ており、この階段室の吹き抜けは、地下から2階に渡って各居室とつながっている。

小さく暮らす、快適な家階段室吹き抜けに面した引き違い戸はあえて上下に分けており、そのときの状況で開放する量を調整できる。