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地元さんぽ-神保町/工藤 夕佳

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事務所がある九段下の隣町、神保町は言わずと知れた本の街です。


神保町が本の街になったのは、幕末に神田界隈に東大の前身となる開成所が置かれたことで他にも学校が多く集まり、書店も多く軒を連ねることになったためです。

関東大震災、戦争を経て、少しずつ姿を変えながらも、今も日本を代表する古書店街として残り続けていることは移り変わりの多い東京という街の中では驚くべきことのように思います。

 

関東大震災の時、神保町は甚大な被害を受けました。一誠堂書店は鉄筋コンクリート造で当時としてできうる限りの強度を備えた店舗を昭和6(1931)年に竣工し、今も同じ姿で建っています。外観もモダンで素敵ですが、内装も凝っていて見所満載です。また、同じ通りの並びには復興住宅として関東大震災後に建てられた11軒長屋がありました。時代の流れの中で建替え・改修され、11軒のうち現在も当時の姿をとどめているのは「大久保書店」1軒のみとなっています。銅葺き屋根に円形のドーマー窓。1階2階の開口部はアルミ製に替わっていますが、外観形状はほぼそのままです。11軒長屋として建っていた姿は神保町を特徴づける風景だったのではと思いを馳せます。

神保町界隈の変遷を調べると面白いことがたくさんあるのですが、調べるきっかけは歴史的建造物の保全活用にかかわる専門家(ヘリテージマネージャー)を養成する講座を受講したことでした。日常の仕事で既存住宅調査を行う機会が少なくない中で、壊すには忍びない建物たちに出会う場面もあり、活かす術はないものかと講座を受講しました。

文化的価値が見出せる建物であれば、登録有形文化財に登録することで税制優遇や、活用のための設計・監理の補助を受けることができます。思い入れのある建物を壊してしまうその前に、保存活用の道があるかもしれないことも思い出してもらえると嬉しいです。


工藤 夕佳/mokki設計室一級建築士事務所)


 
 
 

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