イタリア北部のヴィチエンツァに建つヴィラ・ロトンダは、アンドレア・パラディオ(1518年―1580年)の代表作です。


パラディオ著、「建築四書」に従って、正方形の平面に円形のホールを中央に配置し四方のファサードが古代神殿〈パンテオン〉を模し幾何学図形に基づいたシンメトリーで数値的調和が強く表現されています。
後に言われるパラディオ様式は、その後ヨーロッパ中の建築に多大な影響を与え、さらに、200年後の建国まもない米国の第3代大統領・建築家でもあったトーマス・ジェファーソン設計の、故郷バージニアに建設した自邸モンティチェロ(アメリカの住宅で唯一の世界遺産)を、またジェームズ・ホーバンによるホワイトハウス等、数々の建物がパラディオ様式で建てられました。
ゲーテはイタリア紀行の中で書いています。「今日、私は町から30分かかる気持ちの良い丘の上のロトンダを訪れた。上から光線を採った丸い広場を中に囲む方形の建物である。四方いずれからでも、大階段を昇れば、常に6本のコリント式円柱によって作られた玄関に達する。恐らく建築術上これ以上贅をつくした例はほかにあるまい。」と書き、さらにテアトロ・オリンピコ、パラディオの自邸にも足を延ばしています。
さて、モーツアルト晩年の傑作オペラ「ドンジョヴァンニ」を歌劇場ではなく、このロトンダでオールロケによる映像で作られたオペラ映画です。

監 督 ジョセフ・ロージ 指 揮 ロリン・マゼール
製 作 ロルフ・リーバ―マン 演 奏 パリ・オペラ座管弦楽団・合唱団
配 役
ドンジョヴァンニ:ルツジェイロ・ライモンデイ レポレロ:ホセ・ファンダム
ドンナ・アンナ:エッダ・モーザー ドンナ・エルヴィラ:キリテ・カナワ
ツエルリーナ;テレサ・ベルがンサ
序曲が始まり映像は、運河をゴンドラに乗って、ドンジョヴァンニがガラス工房へと、豪胆不適でどこかの大統領領のような勝手気ままなふるまい。焼きたぎる災を見つめ、断末魔を予感させるような不気味でデモーニュシュな実に一歩一歩たたみみかけてくる音楽。
生(性)と死の3時間のオペラ映画の幕開けです。
(十文字 豊/アルコーブ・U)
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