[ まちなみ-009 ]
集いの場~ぎゃらりー浜つばき~

まちなみ部門

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建て主は私が小学生の時の担任の先生です。

同級会をきっかけに二十数年ぶりに再会したことから始まったこの計画は、建て主の夢と、この集いの場のある越前浜集落のコミュニティにも深く係るとても興味深い背景がありました。

越前浜は古い民家や土蔵が多く残る魅力的な集落です。

高齢化で空き家が増える中、近年、若い芸術家達が創作活動の場を求め集落の民家に移り住むようになり、住人もそれを受け入れています。

数年前より越前浜を含む周辺地区内の工房、古民家等を使い、芸術家たちの作品展を同時開催する「浜メグリ」が開催されるようになりました。

期間中は地図を見ながらのんびりと迷路のような集落内の展示会場を巡ることができます。

小学校の先生だったお二人は、退職後、子供達に囲まれていた日々が懐かしく、寂しさを感じていたそうで、浜メグリで母屋を展示会場として開放したのをきっかけに、色々な人が集える場を作りたいと夢見ていたそうです。

もとは母屋の脇に建つ昭和21年竣工の蔵で、日の目を見ない物置でした。
小屋組みは地松を使ったダイナミックな造りで、ご主人のお父様が戦後の物のない時代に、材料をかき集めて建てた大変貴重で思い出深い建物です。
外観内観共に魅力的で私も一目ぼれし、離れの趣味の空間として改装する話となりました。
母屋の庭が作り込まれていたことと、真壁造りの外観がいい雰囲気だった為、外からの見た目は出来る限りそのまま残しています。

1階は集いの場、2階はギャラリーです。
1階が薄暗かったこと、ご主人の希望により薪ストーブを設置したこと、1階からでも2階の小屋梁が見えるようにしたいと考え吹抜を設けました。この吹抜のお陰でこだわりの真空管アンプから流れる音楽が心地よく響き、ホールにいるような気分で音楽も楽しめます。
ごろっと休める場所が欲しいという要望から畳スペースを造り、小上がりとして天井高さを押えることで空間の変化を考えました。

2階の小屋組みは迫力があり、当時の職人さんの技術の高さを感じます。
もともと屋内で火を使っていなかった為、梁はチリを掃っただけでこの綺麗さです。
このまま残すことにこだわり削ることも磨くこともせず、66年かけてじんわりと飴色になったこの梁は、生まれ変わったように生き生きとして見えます。当時の棟梁も梁材も、まさか年月が経ってこれだけたくさんの人に見られることになるとは、思ってもみなかったと思います。

吹抜の手摺格子は、古い母屋で使われていた建具に組み込まれていたもので、この蔵の中に立掛けてあったものを活用しました。スリガラス越しに明かりの透ける様が本当に美しく、繊細な組子が際立ちます。

お二人のくつろぎの場ですが、この地区で創作活動をしている芸術家や、近隣住人、ギャラリーにお見えの方にとっても安らぎの場となり、古き良きものを楽しく使いながら残すことのよさを感じられる空間となりました。

(写真 畑 拓)

建設地
新潟県新潟市西蒲区越前浜 
敷地環境
古民家が多く残る海辺の集落
構造
木造
階数
2階
敷地面積
1378.68㎡(母屋も含む)
建築面積
53.69㎡
延べ床面積
87.26㎡
工事費
非公開
家族構成
夫婦
居住者の年齢
60代
設計者名(事務所名)
小疇 友子(小疇友子建築事務所)

図面

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