[ エコロジー-005 ]
谷間の家

エコロジー部門

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敷地は自然休養林に覆われ、四季折々の表情を見せる山の谷間にある。頂上付近から澄んだ空気が緩やかに降りてきて、暑い夏の日でも夕方からは涼しさを感じる。岩国城下の古い町並みが残り道も狭く、親密さと懐かしさを感じる環境である。谷間の豊かな自然と、特徴ある周辺環境や地形を空間に織り込むことで、日々の生活体験を高め、精神的な解放感を得られる家にしたいと思った。

不定形の敷地や風致地区指定などの条件下で、空間と機能と融通性を最大限にしたデザインを達成することが求められた。これらの与件に対し、方形屋根のボリュームを敷地なりに断片化することにより最大限の空間を確保し、周辺の長屋などの町並みと溶け込みつつ不思議な佇まいが生まれた。

1階から3階を貫く階段を風と気流の通り道、多様なシークエンスの中心、構造要素とし、周囲に居室を配置した。夏は谷間の新鮮な空気を取り入れ、重力換気を促す窓により家が呼吸するように空気が動く。冬は土壌蓄熱暖房や薪ストーブの暖気を、中間ダクトファンにより無駄なく回す計画とした。室内の緩やかな温熱環境とこの土地の自然環境により、季節の移り変わりや時間の経過を気持ちよく感じさせてくれる、本質的な快適さをもった家である。

 

 

 

 

 

周辺環境や歴史ある町並みとの接続、建物の長寿命化及び省エネルギーを図ることを目的に内外の材料を選んだ。屋根は鉛色の遮熱ガルバリウム鋼板、外壁は日本の伝統工法のひとつである左官技術を再評価し、躯体換気の機能を持つ最新のモルタルノンクラック工法の上に、白い骨材入り左官仕上げを施した。これらの材料や色の組み合わせにより、風致地区条例をクリアしている。

リビング、ダイニング、キッチンを見る。
室内では湿度が比較的高い敷地環境から、木質系仕上げや珪藻土など調湿性の高い材料とし、これらをより生かすために、断熱材は高性能で結露対策を併せ持つセルロースファイバー、開口部はLow-E複層ガラスとヘーベシーベ木製サッシを採用した。
周辺の環境から切り取った豊かな景色と、多様な光と風を取り込む様々な窓は、室内換気をも最適化する。
家族や来客が集うこの空間にエアコンはなく、本質的な快適さを味わえる。

1~2階の階段は中央に力桁を配し、2~3階は段板の両側の面格子により、建物中央部における耐力を補うと同時に建物全体の耐震性能を高めている。また風と気流の通り道にもなっていて、階段だけの機能にとどまらず、この住宅の要となっている。

長期優良住宅では困難な在来工法による浴室。設備更新と点検を容易にしつつ、快適性を高めたデザインとした。
大きな窓は、廻りの視線を気にすることなく借景を楽しめる位置にあり、全開にして風を取り込み、露天風呂のような楽しみ方が可能である。また土壌蓄熱暖房により、在来工法の浴室にある冬の足元の冷たさを感じさせない。

建設地
山口県 岩国市 
敷地環境
市街地
構造
木造
階数
3階建て
敷地面積
205.72㎡
建築面積
82.12㎡
延べ床面積
166.00㎡
工事費
非公開
家族構成
夫婦二人+子供二人
居住者の年齢
40代
設計者名(事務所名)
長野 英彦(株式会社 長野総合建築事務所)

図面

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