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住まいと緑

 先日、京町家「秦家(江戸時代末期におきた戦乱による大火で焼失後、明治2年に再建された商家)」を見学する機会に恵まれました。通り庭から玄関土間に入り、一間半四方の明るくも控えめな中庭を見つつ、座敷の奥は築山と堀蹲(つくばい)を用いた高低差による立体感が見事な奥庭があって、二つの庭に挟まれて座敷では心地よい風がすーっと通りぬけていきました。町家の周囲はいまや高層マンションが立ち並んでいるというのに、この静寂さ、気候風土ならではの独特の居心地良さはこの素晴らしい庭あってのものと、改めて日本の庭の素晴らしさを堪能してきました。
 5月末、東中野で昨年お引渡した住宅の撮影をさせて頂きました。お引渡しの頃は冬だったこともあり生垣のトキワマンサクもまだ新入り顔。植木畑で一目惚れしたホンシャラも新芽がまだで春心待ちの心境でした。敷地半分を将来のために残しての新築計画だったため、残した敷地半分の庭と玄関土間前に配した坪庭は、現場中に建て主さんが造園屋さんの仕事に惚れこまれたのをきっかけにお引越後徐々に手を入れられて、時折ご主人から頂くメールで伺ってはいたものの、5月にお住まいに伺った頃には、新緑と共に家の佇まいも生命感溢れる印象、見違える思いでワクワクしてしまいました。それも単に綺麗に庭をつくったという形ではなく、気張らない雑木の庭の中にあって、坪庭の白砂利には建て主さん自身が発掘したアンモナイトの化石が埋まっていたり、庭には小鳥の餌台、もともと敷地内にあった玉石を飛び石へ再利用、庭に茶室はまだ設計していませんが(!)留石まで配されています。加えて濡れ縁には番犬ならぬ番犀(さい)の置物などお目見えして、建て主さんの好みのものがさりげなく楽しげに取り込まれている様子、そのお話など伺うだけでも何時間も話が弾んでしまいそうな楽しい撮影の時間となりました。
photo:住まいと緑
番犀(さい)と共に庭を愉しむ濡れ縁からリビングダイニングをのぞむ。

 現代人にとって庭を愉しむなどいまや贅沢な時間(私も多分にもれずそのような豊かなひと時は中々得られないのが現状ではあるものの)と羨ましく思いつつも、自然と四季を感じつつ日々暮らす器のもたらす心地よい時間の豊かさを得んと日々図面に向き合っています。
photo:住まいと緑
玄関土間から見える坪庭と2階へ上がる階段。
自転車愛好家の息子さんのため、玄関に自転車スペースを兼ねた広めの土間。

1 階 : 16.71 坪
2 階 : 14.85 坪
延べ : 31.56 坪