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馬込の家

 「馬込の家」は、16坪の敷地に建つ3人家族のための木造3階の住宅です。都心に土地を求め家を建てるということは本当に大変なことだと思います。先ず、条件のよい土地がなかなか見つからない。ネットや不動産屋さんにある情報は既に売約済のものが多く、見つかったとしても競争相手が多く価格も異常です。
 「馬込の家」の敷地は坂道の途中にあり、狭小地で高低差もあるので建売やハウスメーカーが手を付けられなかった土地です。いわゆる、建築条件が厳しい物件。しかし逆に考えてみると坂道で高低差ということは、隣家の視線を気にすることなく眺望が得られ、敷地を丹念に調査していくと、小さな場所にも可能性は限りなくあるのです。この住まいでは高低差を生かし、廻りの風景や緑を借景として取り入れ、小さくても広がりある心地よい居場所がテーマとなりました。窓越しに見える大きな梅の木、そこに集まる小鳥達の様子、刻々と変化する光や風、そんな何気ない自然が、日々の生活に入ってくると都心の暮らしもより豊かになってきます。
 また暖かい空気は上昇し上階に溜まるという性質を利用し、ダクトファンを設け空気を循環させ室内温度差を軽減する、屋根に落ちる雨水を利用した雨水タンクを計画したりと、環境にも配慮した住まいとしています。
 建築の業界では、住宅は「設計の基本」であると言われています。住まいは、私たちが生活していく上で無くてはならないものであり、そこで起きて食べて寝て思いを巡らせてと、日々の暮らしに直結してきます。また子供の頃育った家の記憶は、その後の人生に何かしら影響を与えるともいわれています。そして一つ一つの住まいは、町並みをつくることにも繋がってくるのです。
 世知辛い世の中、問題は山積み。しかし音楽やアートが世の中を切り開いてゆくパワーがあるように、住まいも大資本や経済論理に負けず、一つ一つを丁寧に考えつくってゆくことで、ハッピーで住みよい社会に貢献できるのだと信じつつ、設計の仕事をしています。

馬込の家
光や風の入り方を考えたシンプルな外観。

馬込の家
リビングからは手元が見えない、オリジナルキッチン。

馬込の家
窓辺からは小鳥の様子など楽しめる。

馬込の家